帝人㈱と富士通株は7月12日より、リサイクル素材の環境価値化プラットフォームの実現を目指した共同プロジェクトを開始した。

同共同プロジェクトは、帝人のライフサイクルアセスメント(LCA)の算定方法や富士通のブロックチェーン技術を活用した、リサイクル素材の利活用や環境配慮設計(※1)の実現に向けたプラットフォームの構築とその市場適用に取り組むもの。両社は同プラットフォームの構築により、世界共通の目標であるカーボンニュートラルの実現に貢献することを目指す。

近年、製造業では製品のライフサイクルを通じたLCAの導入や評価結果の開示、環境ラベル(※2)取得に向けた積極的な対応が求められているほか、欧州における環境規制の導入により、企業は従来以上に厳格な対応が求められている。さらに、回収された資源由来のリサイクル素材を実際に利用しているかどうかを示す来歴情報の提示や証明を制度化する動向もあることから、リサイクル素材に対する来歴情報の信頼性にも期待が寄せられている。

加えて、航空機や電気自動車(EV)等交通輸送分野を筆頭に産業利用が拡大している繊維強化プラスチック(FRP)等の材料については、今後はより高度な環境配慮設計が求められるため、政府・民間の双方において、廃棄処理に対する規制や、リサイクルの技術開発に向けた動きが活性化している。

●「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム実現プロジェクト」の概要
帝人は炭素繊維、アラミド繊維等の製造工程における温室効果ガス(GHG)排出量の算出方法を確立し、FRPの再生に関する取り組みも推進している。富士通は高い透明性とトレーサビリティを担保し、事実上情報の改ざんを不可能とするブロックチェーン技術を活用したシステム構築について多くの実績を持つ。同共同プロジェクトは両社がこれまで培ってきた技術やノウハウを融合し、業界に先駆けてリサイクル素材の利活用による環境価値化プラットフォームを立ち上げ、市場適用を図っていくもの。

●プラットフォームの仕組み
バリューチェーン全体でのGHG排出量を含む環境負荷に関する1次データの収集・トレースにおいて、富士通のブロックチェーン技術を活用することで、リサイクル素材の環境価値の信頼性向上を実現。リサイクル素材を用いて製品を設計するメーカーに対して、リサイクル素材の出自の証明や、高い信頼性を持つGHG排出量を含む環境負荷情報を提供することによって、メーカーによるリサイクル素材の利活用や環境配慮設計を促進。

リサイクル素材の環境価値化プラットフォームのイメージ

まずは2022年度内でのFRP領域におけるビジネスの具体化を目標として本格的に実証を開始し、その成果をもとに他素材への展開も検討していく。今後も両社は、素材産業起点でのサーキュラ―エコノミーの実現および、信頼できるリサイクル素材の普及による社会の環境配慮設計の促進を目指すほか、今回の取り組みに賛同したパートナー企業や団体との議論や実証事業等も進め、国・企業におけるカーボンニュートラルの実現に貢献していく。

※1:製品の全ライフサイクルを考慮し、環境負荷低減を目的とした設計。
※2:製品やサービスがどのように環境負荷低減に資するかを購入者に伝えるマーク。