富士通(株)とCarnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)は2月8日、スマートシティーの実現に向けて行動経済学や行動科学といった人文社会科学と計算機科学を融合したコンバージングテクノロジーにより、人々の動きを高精度に予測してデジタルに再現するほか、人々の行動特性に基づく未来の行動や起こり得るリスクを可視化し、多様な施策の立案を支援するソーシャルデジタルツインの共同研究を2022年2月より開始すると発表した。

両者がスマートシティーの重要テーマとして掲げる都市交通や環境、経済等の分野における様々な施策実施にあたり、人々の行動をソーシャルデジタルツインで事前検証し、施策の効果や潜在的なリスクを事前に把握することで、各施策の効果を最大化できる。加えて、実世界の人々の動きや移動手段の変化などのリアルタイムデータをソーシャルデジタルツインへ取り込むことで、施策の改善や人々の行動変容を促すことが可能になる。

共同研究技術の社会実装に向けては、交通規制や車両移動状況などの実データを用いて動的に人流の発着地を推定して交通量の管理や調整を行うことで、CO2排出等の環境問題や経済効率等の都市問題を解決するための施策の有効性を検証していく。これにより、都市における人々の動きに関するソーシャルデジタルツインの基盤技術の構築および確立を目指す。

本共同研究では、ソーシャルデジタルツインの基盤となる技術の研究開発に取り組み、人や物、経済、社会の相互作用をデジタルに再現し、それらの実態を把握することで、多様で複雑化する様々な課題の解決に向けた施策立案等を支援する。

例えば、2次元情報から3次元情報を推定するニューラルレンダリング技術を用いて、カメラ映像から設置角度や障害物との重なりにより部分的に見えない人の動きを仮想的に生成し、的確に捉える高度なセンシング技術や、好みや状況により変化する人々の行動特性に関する行動科学や行動経済学の知見とAIを融合した行動予測技術を開発するほか、人々の行動と物や経済、社会との関係性を実世界の変化に追従してデジタルに再現するためのヒューマンモデルとソーシャルモデルを構築し、ソーシャルデジタルツイン上で各種施策の事前検証を進める。これにより、多様で複雑な社会課題を解決する有効な施策を効率良く導き、将来的には、施策目標達成に向けた人々の行動変容を促す働きかけを可能にするなど、ソーシャルデジタルツインと実社会がより良い社会の実現に向けてともに進化する世界を創り出す。