慶應義塾大学SFC研究所と日本無線㈱(JRC)、ユーピーアール㈱(upr)の3者は9月9日、uprがJRCと共同開発し、展開している無線通信を用いたパレット管理システム「スマートパレット」(※2)で用いる無線タグ(DXタグ)の機能を拡充した新型無線タグ「DXhタグ(仮称)」を試作したと発表した。

「スマートパレット」は10年近い稼働実績があり、多くの顧客に利用されている製品。今後、3者は今回の試作をもとに新型タグの研究開発をさらに推進し、将来的な物流現場のさらなる効率化と利便性向上への貢献を目指す。

●DXhタグの特長
従来のDXタグは一次電池のみで駆動するアクティブRFID端末として、長距離通信と長寿命を特長としてきたが、これに対してDXhタグは、DXタグに電池不要で無線通信が可能なパッシブRFIDチップを組み合わせることで、電池を使用せずに迅速な読み取り・書き込みが可能な受動無線通信機能を備えている。センサ対応RFIDとしてはすでに2026年2月に国際標準規格「ISO/IEC 18000-65」(※3)として承認されており、920MHz帯のアクティブとパッシブのハイブリッドタグは世界初(※1)となる。

●スマートパレットへのDXhタグ組み込みの効果
DXhタグをスマートパレットに組み込むことで、柔軟かつ高度な運用が容易になる。主なメリットは以下の通り。

・送信無線周波数等をはじめとする各種システムパラメータの変更
・休止状態からの超低消費電力起動
・UHF帯の標準的な受動無線タグが貼付されたパレットとの共同出庫・共同回収
・無線タグが貼り付けられた積み荷とパレットの高速なひもづけによる積み荷の追跡管理

●背景:パレット運用の現状
パレットは物流において必要不可欠であり、日本国内だけでも5億から6億枚が使用されている。パレットは国内のみならず国際的にも流通しているが、保管・回収・洗浄・所在管理等に手間がかかり、紛失も少なくない。そうした管理の手間の削減や物流2024年問題への対応も相まって、レンタルパレットの利用が年々拡大している。

パレット・物流機器のレンタルおよび管理サービスを展開するuprでは、パレット情報管理システム「スマートパレット」を2015年に開発した。「スマートパレット」は、JRCが開発した無線タグ(DXタグ)をパレットに取り付けた物流容器。物流容器の所在を把握し、回収、洗浄、再利用等のパレット管理のオペレーションの自働化や効率化を実現している。DXタグは一次電池駆動で自ら電波を発信するアクティブRFIDだが、動作を間欠的な送信モードと管理モードに限定することで、最大300mの通信距離を確保しながらも、電池交換なしで10年程度の長寿命化を可能としていた。一方、他社ではUHF帯の標準的なパッシブRFIDを活用し、通信距離は数m程度に限定されるものの、迅速なデータの読み書きと電池交換不要を両立する取り組みも進められている。

スマートパレットの中央部に収納されるDXタグ

●DXタグの課題
DXタグは、約10年間の長期利用を実現するため、間欠送信による省電力設計を採用している。一方、設定変更時の反映時間や電池状態に応じた所在把握等、運用面でさらなる利便性向上の余地があったとしている。

DXタグとUHF帯の標準的なパッシブ RFIDを組み合わせることで、異なるパレット管理環境との連携を可能とし、共同出庫・共同回収や、積み荷とパレットをひもづけた一括検品等、物流現場のさらなる効率化を支援する。

さらに、それぞれのRFIDの特性を生かすことで、広域での所在把握から数m単位の詳細な位置把握まで、用途に応じた柔軟なパレット管理を実現する。

●RFID一体化による解決
そこで3者は、慶應大等が研究開発を進めているセンサ対応RFIDの新規格であるISO/IEC 18000-65プロトコルに対応した受動無線チップをDXタグに組み込み、能動通信と受動通信によるデータ連携を可能とするDXhタグを試作開発した。同システムは、ISO/IEC 18000-65に準拠したパレット情報管理システムの実用・実証事例としても世界初の取り組みとしている。

DXhタグは、従来のDXタグが備える長距離・長寿命のアクティブRFID機能に加えて、電池不要で迅速な読み書きが可能な受動通信機能を一体化している。これにより、現場での設定変更や電池切れ後のタグ確認、共同回収オペレーション等、これまで対応が難しかった場面においても、柔軟で実用的な運用が可能となる。

具体的には、送信無線周波数等の設定変更、休止状態からの超低消費電力起動、パレットの共同回収、無線タグが貼り付けられた積み荷とパレットの高速なひもづけによる積み荷の追跡管理等が可能となる。

3者は千葉県市原市のuprのデポにおいて、DXhタグを用いたデモシステムを構築し、2026年7月に評価試験を実施した。

なお、今回の発表は、総務省の「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」によって実施した成果を含む。

ゲートを通過するDXhタグ版スマートパレットと情報がひもづけられた積み荷
ゲートを通過時に読み取られたID

※1:ISO/IEC 18000シリーズ準拠の920MHz帯タグとして(2026年7月29日 3者調べ)
※2:パレットに取り付けた通信機器(IoTデバイス)を通じて、位置情報や稼働状況等をリアルタイムに把握できるパレット管理システム。クラウド上でパレットの所在・数量・稼働履歴を一元管理することで、紛失・滞留の削減や回収・再配置業務の効率化、物流コストの最適化を支援する。
※3:センサ対応RFIDのインターフェースおよび通信方式を定めた国際標準規格。920MHz帯を用いたアクティブ/パッシブRFIDシステムにおけるデータ交換方式等を規定している。