独シーメンスは6月23日、AUTOMATICA(自動化とロボティクスの主要展示会)にて、無人搬送システムおよび移動ロボットへOperations Copilotを統合する計画を発表した。

Operations Copilotは、機械の操作と保守のための産業用コパイロット。移動搬送ロボットが人工知能(AI)を活用した自律的な物理エージェントとしてますます活躍する中、Operations Copilotは人とロボットをつなぐユーザーインターフェースとしての役割を果たす。

このエージェントベースのインターフェースを通じて、ユーザーは自律走行搬送ロボット(AMR)や無人搬送車(AGV)の設定を行い、工場内での資材や物品の搬送等のタスクを割り当てることが可能になる。

これは、生成AIの支援により工場の自動化をさらに自動化するための新たな構成要素としている。

自律搬送システム向けAIエージェントによるOperations Copilotの機能拡張(出典:シーメンス)

●Operations Copilotは、AMRおよびAGV向けのエージェントにより機能を拡張
シーメンスは、次のステップとしてAMRとAGV専用に開発されたAIエージェントを導入することにより、Operations Copilotの機能を拡張する計画。これらのエージェントは、個々の車両および車両群全体の立ち上げと運用の両方をサポートする。特に立ち上げは複雑で時間のかかるプロセス。AGVは工場の既存のITおよびOTインフラストラクチャーに統合され、走行ルートや受け渡しステーション等の特定の条件に合わせて設定する必要がある。このタスクを効率化するため、エンジニアはOperations Copilotを活用可能。AGVのセンサとカメラを利用して、周囲環境の詳細な把握が可能となる。Operations Copilotは、エージェントインターフェースを通じて、設置されたコンポーネントの関連技術文書すべてにアクセスし、システムのリアルタイムデータを取得することが可能。これにより、立ち上げエンジニアやオペレーターはより効率的に作業を行い、問題をより迅速に解決し、迅速な展開を確実に実現できるとしている。

「物理的および仮想的なAIエージェントの両方をOperations Copilotに統合することで、人間とロボティクス、そしてAIの間の新次元のインタラクションを実現。これにより、顧客は自律搬送システムをより迅速に導入し、効率的に運用し、安全性を向上させることが可能となり、完全自律型工場の実現へ、私たちはまた一歩近づくことができます」とシーメンスのファクトリーオートメーションCEOのライナー・ブレーム氏は述べている。

●新しいSafe Velocityソフトウェアが製造現場の安全性を向上
AGVはナビゲーションおよびセンサ技術を搭載しており、人による直接的な介入なしに、生産現場および物流環境内を安全かつ確実に移動することが可能。AGVは、進路上に人や物が現れた場合、自動的に減速、停止、または障害物を迂回する。シーメンスの新しいソフトウェアソリューションSafe Velocityは、車両速度のフェールセーフ監視を可能にし、安全レーザスキャナの保護領域をリアルタイムで動的に調整することができる。このTUV認証済みソフトウェアは、様々なAGVメーカーのハードウェアおよびソフトウェアと互換性があり、厳格な産業安全規格に適合するよう既存の安全システムを強化する。Safe Velocityは追加の安全機器の必要性を低減する。これにより、機能安全性を維持しながら、システム構成の簡素化と車両の貴重なスペースの節約を実現し、エンジニアリング作業の複雑さを軽減するほか、配線要件を最小限に抑えることが可能となる。

Safe Velocity ソフトウェアが自律走行車両のフェールセーフ速度監視を実現(出典:シーメンス)

将来的に、Operations Copilotは Safe Velocity等の AIエージェントと連携し、安全レーザスキャナからの特定データを分析し、AGVの速度を監視する。仮想Safe Velocityエージェントは自律走行車両を監督し、AGVやAMRアプリケーション向けに設計された他のエージェントと連携することができる。このように、シーメンスは物理的および仮想的なAIエージェントの両方をOperations Copilotが統括するマルチエージェントシステムを構築しており、現実世界とデジタル世界の間でシームレスな相互作用とより深い統合を実現する。