㈱アイオイ・システム(AIOI)と東芝インフラシステムズ㈱は8月8日、業界で初めて(※1)マイクロ波給電(※2)技術を適用したデジタルピッキングシステム(DPS※3)の開発に成功したと発表した。
両社は共同開発したシステムを「国際物流総合展2024」におけるTOPPANグループのブースでデモンストレーション展示する。
両社は、2022年11月に技術提携を開始し、DPSの表示器向けのマイクロ波給電システムの共同開発を進めてきた。今回、システム開発および実証実験に成功し、そのデモシステムを公開することになった。
AIOIが事業展開するDPSは、デジタル表示器を利用した作業支援システムで、工場や物流センター等で利用されている。作業者は表示器のランプが光った場所に足を運び、表示された数だけ商品を取り出すことで誰でも簡単に、すばやく正確なピッキング作業が行える。しかし、中核機材として多数設置される表示器の電池切れによるダウンタイムと電池交換にかかる工数は、24時間稼働する物流倉庫において課題となっていた。
そこで両社は、東芝インフラシステムズのマイクロ波給電技術を適用した新たなシステムを開発した。マイクロ波給電技術は数m離れた多数のデバイスに無線で給電ができる技術で、表示器の充電切れによるダウンタイムをなくすほか、電池交換を不要とし、表示器のメンテナンス時間を大幅に削減する。
●開発概要
人手不足問題の解消に向け、デジタル技術を活用した自動化・省人化システムの普及が進む中、産業機器用のセンサやIoTデバイスの導入数は増加し続けており、これらのデバイスの駆動用電池の電源断によるダウンタイムや電池の充電・交換のメンテナンスコストが課題となっている。通常24時間稼働している物流倉庫においては特に、こうしたダウンタイムと電池交換にかかる工数の増加は、効率化を阻む大きな課題となっている。「マイクロ波給電」は、単一の送信機から数m離れた多数のデバイスに給電できる空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術。国内では、2022年5月から3つの周波数帯でマイクロ波給電の利用が認められている。東芝インフラシステムズとアイオイシステムは、このうち最も大電力の給電が可能な周波数帯である5.7GHz帯を活用したマイクロ波給電をデジタルピッキングシステムに適用し、表示器の充電切れによるダウンタイムをなくすほか、電池交換を不要として表示器のメンテナンス時間を大幅に削減することに成功した。
今回、多数の表示器を使用するAIOIのDPSにおいて、AIOIはマイクロ波給電の受電機能を搭載した表示器を製作し、東芝インフラシステムズは高利得アンテナをメカニカルに制御する給電装置を用い、両社で安価なシステムの構築に成功した。同システムは、東芝インフラシステムズの独自技術により電池残量が分かるほか、最適給電アルゴリズムの適用により複数の表示器を効率よく給電することが可能。両社は、2023年8月に送電機と表示器（受電器）35台を用いた給電実証を実施し、送電機から全表示器に無線電力伝送ができたことを確認し、同技術の有効性を実証した。
●今後の展望
両社は、同システムの導入により、ダウンタイムの削減と、表示器のメンテナンス（電池交換）レスを進めるほか、DPSのレイアウトフリー化や表示器の増設・移設の自由度の向上に取り組み、物流現場のさらなる効率化を目指すとしている。
さらに、今後両社は協業先を広げて、東芝インフラシステムズの「送電機」、AIOIの「受電器」に加え、産業機器や電子部材を取り扱う技術商社の㈱光アルファクス(※4)とTOPPANデジタル㈱の「RF技術」および「送受電管理システム」を組み合わせ、工場やプラント、ビルや商業施設、病院等で使用されている様々なデバイスにマイクロ波給電技術を適用し、「電力＝無線」となる未知の可能性に挑戦し続けるほか、新しい未来の暮らしに貢献していくとしている。
●共同開発システムに使用する送電機（東芝インフラシステムズ）および受電器（AIOI）
●「国際物流総合展2024」への出展について
TOPPANエッジ㈱/TOPPANデジタル㈱/㈱アイオイ・システムの3社合同で出展する「国際物流総合展2024」では、物流に関する各社のソリューションとTOPPANグループ横断の取組みを紹介する。
名称：国際物流総合展2024
会期：2024年9月10日(火)～13日(金)
会場：東京ビッグサイト（東京国際展示場）東1～8ホール
（TOPPANグループブース：東7ホール 7-301）
※1：東芝インフラシステムズ・AIOI調べ。
※2：マイクロ波給電：マイクロ波という電波を用いて長距離に電気を送るワイヤレス電力伝送を行う技術。マイクロ波給電システムは、電流を電磁波に変換して電力伝送を行い受電側の整流回路で直流電流に変換する。920MHz、2.4GHz、5.7GHzなど非常に高い周波数を用いるのが一般的。
※3：デジタルピッキングシステム(DPS)とは、表示器を利用したピッキング支援システム。工場や物流センターの作業者は、表示器のランプが光った場所に足を運び、表示された数だけ商品を取り出す。このように表示器の指示に従って行うピッキング作業は、正確かつスピーディーなピッキング作業を実現する。
※4：㈱光アルファクス：東芝インフラシステムズのビジネスパートナーであり、東芝インフラシステムズのマイクロ波給電技術の産業分野への適用を検討している技術商社として、AIOIとの技術提携締結に貢献。
