㈱オカムラは11月27日、自律・遠隔操作ハイブリッド型ロボットによる物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE(プログレスワン)」の事業化に向けた取り組みの一環として物流ピッキングロボットの遠隔操作時の力覚フィードバック効果の調査研究を実施したと発表した。本研究は「サイズや出力が異なるロボットの遠隔操作時の力覚フィードバック効果の先導調査研究」としてモーションリブ㈱と共同で実施したもの。

遠隔操作ロボットシステムにおいて、オペレーターが遠隔地から物流現場にあるロボットでピッキング作業を行う際、操作画面による視覚的な判断だけでは遠隔での把持(しっかりものをつかむ)操作が困難であることが課題となっていた。同社は「プログレスワン」の事業化を進めるにあたり、視覚に加え力覚フィードバックで操作性を高める開発・研究が必要だったとしている。

本研究はピッキング等の物流施設内作業を想定した遠隔操作ロボットシステムにおいて、オペレーターが遠隔地からディスプレイを見ながら作業を行う際、複雑な動作になるほどロボットが物体と接触した時の引っ張られる・押される等の力覚情報を人に知覚させる力覚フィードバックの重要性を実証すると共に課題を検討。実験結果から力覚フィードバックが遠隔での把持操作や緩衝材の押し込みを効率的に行うために必要不可欠な機能であること、オペレーションの熟練者と初心者ではそれぞれ必要とする補助機能が異なること等が明らかになった。

遠隔操作ロボット実験装置

本研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が昨年22年度に公募したプロジェクト「ロボットによる社会変革推進に向けたロボット・AI部事業の周辺技術・関連課題に係る先導調査研究」として採択された。また、「第41回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2023)」のオープンフォーラム(2023年9月11日開催)にて講演を行った。

●国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「第41回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2023)」オープンフォーラムの開催
※「㈱オカムラ サイズや出力が異なるロボットの遠隔操作時の力覚フィードバック効果の先導調査研究」PDF掲載あり
https://www.nedo.go.jp/events/CD_100184.html

●研究の概要
本研究では、オペレーターが遠隔地からディスプレイを見ながら作業を行う際の力覚フィードバックに関する課題の特定と課題解決の検討のため、2段階で実験を行った。まず同じ型式のロボット2台を接続してオペレーター(プライマリー側)と作業用ロボット(セカンダリー側)で出力差がある遠隔操作環境を簡易的に構築し、物流現場で想定される遠隔操作作業(デモ作業)を通して、力覚フィードバックの有無が遠隔操作に与える影響を定量的・定性的に確認した。力覚フィードバックには、リアルハプティクス(※)を搭載したシステムを使用した。物流現場のピッキングや緩衝材を詰める作業において適切な変位や力の増幅率が、遠隔操作に与える効果を確認した。また、オペレーターが操作を行う際、リアルな操作感を再現するための変位や力について課題を特定した。

次に、プライマリー側とセカンダリー側で大きさの違うロボットを用いて、同じ型式での実験で効果がみられた倍率の組み合わせを検証した。変位や力についての課題解決として、オペレーターの補助機能となるディスプレイに表示するユーザーインターフェース(UI)の有効性を確認した。

※アクチュエータの力加減を自在に制御することができる技術。本研究では、同技術を簡便に実装できるモーションリブ㈱の汎用力触覚ICチップ「AbcCore」を搭載したシステムを使用。

●実験の様子動画(YouTube)
https://youtu.be/DGOa-4RVsns

●主な研究結果
・ロボットの遠隔操作において、力覚フィードバックは、ピッキング作業や緩衝材の押し込みを効率的に行うために必要不可欠な機能であることを確認した。力覚フィードバックがない場合、対象物を倒したり、つかみ損ねて破損させたりして、把持に失敗することがある。

・ロボットの遠隔操作において、オペレーターが熟練者である場合と初心者である場合では、必要とする補助機能が異なることが確認できた。熟練者は、視覚補助や空間認識補助、力覚認識の補強に影響するUIは必要としないが、移動量と力の倍率を自身で変更できるスケールセレクタ機能は有効だった。初心者は視覚補助や空間認識補助、力覚認識の補強に影響するUIにより、作業効率の向上や心理的負担の軽減を図ることができる。