㈱メディパルホールディングスと富士通㈱は9月1日、メディパルグループの連結子会社である㈱メディセオが、同日竣工の「阪神ALC(※1)(兵庫県西宮市)」に、富士通のAIを活用したピッキングシステムを新たに構築・導入したと発表した。

メディパルは、「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」において「持続可能な流通の構築」を掲げ、新しい流通体制を構築している。

その一環として、メディパルと富士通はDX(デジタルトランスフォーメーション)パートナーとして、医療用医薬品等のメーカーから物流センターへの入荷、および各医療機関や調剤薬局までの一連の配送工程における生産性向上を目的に、物流最適化の取り組みを共同で進めている。

2023年3月には、「神奈川ALC(横浜市戸塚区)」に、富士通が開発したクラウドサービス「Picking Optimizer(ピッキングオプティマイザー)」を導入し、同ALCにおけるピッキング生産性が16%向上した。今回「Picking Optimizer」で培った技術を応用した富士通のAI(数理最適化技術)を「阪神ALC」へ適用し、さらなる生産性の向上を目指すとしている。

●今回のピッキングシステムの特長
「阪神ALC」に導入したピッキングシステムは、物流センター内に保管されている3万SKU(※2)を超える商品からオーダーに基づき、得意先別の納品箱に収納するまでのピッキング工程全体の効率化を目的としている。

ピッキング作業者は複数の得意先向け納品箱に商品を収納するが、その際に同じ商品を一度にピッキングできれば作業の集約が可能となり、商品の搬送回数も最小となる。今回はこれを2つのAI(数理最適化技術)を組み合わせることにより実現したとしている。

1つは、複数の納品箱を作成する際に同時作業できる最適な組み合わせを探索・発見することを可能とするAIで、作業の集約を実現する。もう1つのAIにより各種商品を格納している自動倉庫から、商品を納品箱に収納するピッキングステーションへ、商品格納オリコンを流す際の順序を最適化し、搬送時間を最小化する。その際には自動倉庫の配置やマテハン、および各種ロボットの処理性能を含めて計算処理している。

従来のALCではオーダーが入った順番に納品箱を作成し、出荷までに時間を要していた。一方、今回のシステムでは一定のオーダー単位でAIによる最適化計算をすることにより、出荷時間の短縮、ピッキング作業と搬送を効率化し、生産性を向上させる。AIのほか、各種ロボットや自動化設備も含めて、ピッキング生産性は「神奈川ALC」の約5倍となることを見込んでいる。

「阪神ALC」のAIを活用したピッキングシステムの概要

●今後の展開
◎メディパル
今回のシステムの「阪神ALC」への導入を皮切りに、ピッキングシステムを採用している他のALCへも「Picking Optimizer」と合わせて順次展開を進めていくほか、富士通と連携し、ICTやAIを活用することにより、さらなる効率化の早期実現を目指すとしている。

◎富士通
今回のピッキングシステム導入に加え、メディパル向けにAIを活用した他のサービスによる支援の検討も開始しているほか、ロジスティクス領域へのAI活用を促進し、医療・ヘルスケア領域の物流最適化や社会課題解決、環境負荷軽減に貢献していくとしている。

※1:ALC (Area Logistics Center):医療用医薬品や医療材料、臨床検査試薬等を扱う高機能物流センター。主に調剤薬局、病院、診療所等に商品を供給。

※2:SKU (Stock Keeping Unit):商品の受発注・在庫管理を行う際の最小管理単位。