(公社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は8月4日、2026年度「ロジスティクス大賞」受賞5事例を決定したと発表した。JILSはロジスティクスにおいて優れた実績をあげた企業・団体を表彰する「ロジスティクス大賞」を毎年実施しており、本年で第43回目を迎えた。ロジスティクス大賞ノミネート委員会および選考委員会による厳正なる審査の結果、以下の「ロジスティクス大賞」の各賞が決定した。

●受賞事例の概要
①ロジスティクス大賞 技術革新特別賞
受賞企業:㈱Mujin Japan、㈱三五
受賞事例:事業構造変革を支える工場内物流改革
受賞事由:自動車産業における電動化の進展や多品種変量生産への移行に伴い、生産と物流を一体で最適化することの重要性が高まっている。本論文は、フィジカルAIを活用した統合制御により、従来自動化の空白地帯とされてきた工場内物流の抜本的改革を実現した取り組みである。ロボット、AGV、搬送設備などを統合制御基盤上で連携させることで、個別工程の効率化に留まらない工場全体の物流最適化を実現するとともに、作業負荷軽減や物流コスト削減、環境負荷低減にも貢献している。さらに、生産状況の変化に応じた柔軟な運用を可能とし、変化の激しい事業環境下における持続的な競争力強化を支えている。従来の部分最適型の自動化から全体最適型の物流運営への転換を実現した点は特に高く評価できる。工場内物流の知能化と自動化の新たな方向性を示す先駆的事例であり、その技術的独創性、先進性および製造業全体への波及可能性が極めて高く評価された。

②ロジスティクス大賞 現場革新特別賞
受賞企業:GROUND㈱
受賞事例:自律型協働ロボット(AMR)とデジタルピッキング(DPS)のリアルタイム連携による、増員なき出荷生産性2倍増への挑戦
受賞事由:物流現場における人手不足の深刻化と将来的な物量増加への対応は、多くの企業に共通する重要課題である。本論文は、自律型協働ロボット(AMR)とデジタルピッキングシステム(DPS)をリアルタイムに連携させることで、増員を行うことなく出荷生産性を約2倍に向上させた取り組みである。物流現場の特性を精緻に分析した上で、ピッキングと搬送の役割を最適化し、システム連携による独自の運用モデルを構築した点に大きな特徴がある。その結果、生産性向上のみならず、品質維持や属人化の解消にも寄与するとともに、将来的な物量増加にも柔軟に対応可能な拡張性を確保している。増員に依存することなく大幅な生産性向上を実現した点は、多くの物流現場が抱える課題に対する有効な解決策を提示するものである。物流DXの実践モデルとして優れた再現性を有しており、現場課題に対する実効性と変革効果の大きさが高く評価された。

③ロジスティクス大賞 業界革新奨励賞
受賞企業:北海道ロジサービス㈱
受賞事例:日本初「エルゴローディングシステム」による物流革新に向けた荷役負担軽減と効率化の実現
受賞事由:物流業界では人手不足や高齢化の進展に伴い、作業負荷軽減と生産性向上を両立する物流現場の構築が重要な課題となっている。本論文は、日本初となるエルゴローディングシステムを導入し、荷役作業の身体的負担軽減と物流効率化を同時に実現した取り組みである。コープさっぽろの物流を支える基幹拠点において、130店舗への供給を継続しながら40本のソーター更新を完遂した点は特筆に値する。特に、人間工学の視点を物流DXの中心に据え、作業者の安全性向上や労働寿命の延伸を目指した点は先進的であり、単なる効率化を超えた新たな物流改革の方向性を示している。また、メーカーとの共創活動や現場検証を通じて実用化を実現し、作業品質と生産性の両立を図っている。女性や高齢者を含む多様な人材が活躍できる物流現場づくりに貢献している点も特筆される。持続可能な物流現場の実現に向けたモデルケースとして、業界全体への波及効果と将来性が評価された。

④ロジスティクス大賞 現場革新奨励賞
受賞企業:安田倉庫㈱、㈱イデアロジー
受賞事例:デジタルツイン×最適化シミュレーションによるメディカル物流変革
受賞事由:物流現場における労働力不足への対応として、自動化設備への大規模投資が進む一方、限られた経営資源の中で持続的な改善を実現することも重要な経営課題となっている。本論文は、デジタルツインと最適化シミュレーションを活用して物流現場を可視化・分析し、最適な業務プロセスを導出することで、生産性向上と作業効率化を実現した取り組みである。従来の経験や勘に依存した改善ではなく、現場データに基づく科学的分析を通じて課題の本質を特定し、人時生産性向上やドライバー待機時間削減など具体的成果を創出している点に大きな特徴がある。また、創出した余力を高付加価値業務へ再配分し、物流品質向上と現場負荷軽減を両立している。大規模設備投資に依存することなく高い改善効果を実現した点は、多くの物流現場に実践的な示唆を与えている。物流の知能化を実務レベルで具現化した好事例であり、データ活用による物流改革の新たな可能性を示した先進的事例として評価された。

⑤ロジスティクス大賞 社会性奨励賞
受賞企業:(一社)全国軽貨物協会
受賞事例:軽貨物運送業界における安全管理および適正取引の可視化・標準化を実現する共通デジタルプラットフォーム「K-LINK」の構築と社会実装
受賞事由:軽貨物運送業界では、個人事業主を中心とした事業構造の下で、安全管理や運行実態の把握、適正取引の確保が長年の課題となってきた。本論文は、こうした制度的・構造的課題に対し、共通デジタルプラットフォーム「K-LINK」を構築・社会実装することで解決を図った取り組みである。従来の管理・監督型アプローチではなく、個人事業主による自己管理と運行データの共有を基盤とした新たな運行管理モデルを提示し、安全管理の可視化と業界全体の透明性向上を実現している。また、適正取引の推進や業界の信頼性向上にも貢献するとともに、構造的課題に対する現実的な解決策を示している。安全管理と適正取引の両立を支える業界基盤としての役割は大きく、物流業界の健全な発展と社会的信頼性向上に貢献している。軽貨物業界のみならず、個人事業主を基盤とする他のプラットフォーム型産業への展開可能性を有する取り組みとして評価された。

●表彰式・記念講演会の開催予定
2026年度ロジスティクス大賞の表彰式、受賞記念講演会を2026月10月19日に協会年次大会「ロジスティクス全国大会2026(2日目)」で開催される予定。

会場はKFC Hall & Rooms(墨田区)。表彰式のプレゼンターはJILS会長の大橋徹二氏(コマツ 特別顧問)が務める予定としている。