ヤマトホールディングス㈱(ヤマトHD)は10月30日、2027年3月期を最終年度とするヤマトグループ中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」をアップデートすることを決定した。

ヤマトグループは、気候変動や労働力人口の減少、過疎化の進展、輸送力不足の深刻化など不確実性が高まるこれから先も、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めた。2027年3月期を最終年度として策定した現中計を「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオを変革する3年間」と位置づけ、取り組みを推進している。

初年度(2025年3月期)は、物価上昇や2024年問題の影響があった中、事業環境の変化に対応した戦略施策の一部が想定通りの効果創出に至らなかったこと等から、計画と実績に差異が生じた。それらへの対応を進め、同年度下期より増収・増益に転換。同日公表の2026年3月期 第2四半期(中間期)決算において、営業利益が前年同期に比べて112億円改善する等、宅急便ビジネスの収益性改善や法人向けビジネスの利益成長に向けた取り組みの成果が着実に表れ始めているとしている。

そこで現中計の長期ビジョンおよび事業方針は維持しつつ、現時点で見通せる施策の積み上げに基づき、最終年度(2027年3月期)の数値計画を見直した。

引き続き、今中間期に進捗している利益成長ドライバーの強化を図るほか、バランスシート・マネジメントの強化とキャピタル・アロケーションの最適化を通じて企業価値向上に取り組んでいく。さらに、中長期視点で成長戦略と構造改革を両輪で回し、持続的な成長を目指していくとしている。

●主要経営指標

●重点戦略
(1)利益成長ドライバーの強化
①プライシングの適正化:法人顧客との交渉進展および相対的に単価の高い宅急便部門の取扱数量増加により、宅急便の平均単価は今期第2四半期に前年同期比1.8%増と上昇基調。今後も付加価値に応じたプライシング適正化を継続し、収益性を改善する。

②法人向けビジネスの成長:コントラクト・ロジスティクス事業、グローバル事業共に、案件パイプラインが順調に拡大中。サプライチェーン全体のパートナーとして、EC・BtoB向けソリューション提供を加速。加えて、M&Aや戦略的業務提携を推進することでさらなる成長を目指す。

③オペレーティングコストの適正化:輸送オペレーションの見直しにより、輸送コストは改善傾向。今後は幹線輸送の効率化や配車プロセスの最適化等を本格化させ、さらなるコスト適正化を推進する。

④間接コストの削減:バックオフィス領域や管理部?の業務効率化、人材の適正配置を推進し、構造的なコスト削減を図る。

(2)さらなる成長に向けた取り組み
①データ・ドリブン経営の本格推進:生成AIをはじめとした進化するテクノロジーを、自動配車による輸送オペレーションの効率化やバックオフィス業務改革、プライシングの最適化など全社的に活用。人材の適正配置および育成施策を同時に推進することで、構造的なコスト削減と付加価値の創出による利益成長を目指す。

②グリーン・モビリティの事業化:自社で培った「ヒト・クルマ・エネルギー」に関するノウハウを結集し、新たなソリューション事業を構築。EVライフサイクルサービス、エネルギーマネジメント(ヤマトエナジーマネジメント㈱)、オンライン医療サービス(㈱MY MEDICA)等を物流事業者や荷主企業にワンストップで提供。法人顧客の安全・環境課題の解決に貢献し、新たな収益源を創出する。

●資本効率の最大化に向けた財務戦略
(1)バランスシート・マネジメントの強化
①保有資産の最適化:保有する不動産などの有効活用または売却・オフバランス化を検討するほか、政策保有株式を継続的に縮減を図る。

②最適な資本構成の追求:財務規律を維持しつつ、有利子負債を戦略的に活用することでWACC(加重平均資本コスト)の低減を図り、最適な資本構成の確立と持続的な企業価値向上を実現する。
※自己資本比率:45%程度(目安)

(2)キャピタル・アロケーションの最適化
①事業ポートフォリオの変革を加速する「成長投資」:宅急便ネットワークの強靭化やDXなど基盤事業の収益性向上に資する投資、および成長領域において明確なシナジーが見込める案件に対するM&A等を、規律に基づき実行
※規律:ROICなどを基準に資本効率の最大化を徹底

②株主価値を最大化する「株主還元」
・配当方針:引き続き、安定性と継続性を重視し、配当性向40%以上を目標とする。

・自己株式取得:2024年11月に公表した500億円の自己株式取得は完了。成長投資の進捗、キャッシュ・フローの動向、株価水準等を総合的に勘案し、追加の自己株式取得を検討する。