㈱矢野経済研究所は10月29日、荷主企業において設置が義務付けられる物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)について、欧米諸国との違いや先行事例を調査し、物流業界の現状や業界を取り巻く市場環境、物流効率化を支える物流テックについてとりまとめたと発表した。
●調査結果概要
社会インフラである物流の持続的成長に向けて、2024年5月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号)が公布された。同時に、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」という名称は「物資の流通の効率化に関する法律」に変更された。
「物資の流通の効率化に関する法律」では、一定規模以上の事業者(荷主企業や物流事業者)を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付けるほか、特定事業者のうち荷主企業にはCLOの選任を義務付けることが定められた。これにより、特定事業者に該当する荷主企業では、これまで以上に自社製品の物流を主体的に考え、コントロールすることが求められている。
CLOが設置されることで、物流事業者単体では取り組むことができなかった様々な施策が実施され、物流の効率化が進むことが期待される。CLOにおいては、自社(荷主企業)の持続可能な物流を構築するため、物流事業者と対話をしながら、自社と物流事業者の双方にメリットがある取り組みを進めることが重要と同社は指摘している。
●日本と米国におけるCLOの違い
日本と米国でCLOを設置する背景には違いがある。米国では、自社の商品やサービスの価値向上あるいは企業の競争力強化のための方策として、サプライチェーンの強化を掲げている企業が多々みられる。具体的には、多様で安定したサプライヤーの確保、CO2排出量の削減、中国をはじめとした対外政策等であるが、これらを確実に実行するため、CLOやCSCO(Chief Supply Chain Officer)が重要な役割を担っている。
一方、日本では、社会インフラである物流の持続的な成長を目的として、物流の効率化と商慣行の見直しが求められている。具体的には、荷待ち・荷役等時間の削減や積載率の向上等が挙げられており、それらを確実に実行するため、特定事業者の荷主企業においてCLOの設置が義務付けられることとなった。
日米企業が置かれている状況は異なり、また国土の広さや商習慣等の違いから物流ニーズも異なる。仮に、米国企業におけるCLOやCSCOの役割を参考にするならば、CLOは自社製品の価値を高めるためのサプライチェーン戦略の一環として設置することが望ましく、物流の効率化やサプライチェーンの見直しを進めるにあたり、自社の事業戦略とサプライチェーンを合致させることが不可欠であり、それは日本企業のCLOの重要な職務の1つになると指摘している。
●調査要綱
調査期間:2024年7月~9月
調査対象:国内の物流に関わる有力事業者
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
発刊日:2024年9月30日