川崎市(神奈川県)と川崎未来エナジー㈱、ヤマト運輸㈱は10月16日、川崎市の脱炭素先行地域において、官民連携による再生可能エネルギー由来電力(再エネ電力)の地産地消を実現すると発表した。

同日からヤマト運輸の「高津千年(ちとせ)営業所」が川崎未来エナジーからの電力受給を開始し、再エネ電力を100%使用する営業所として稼働する。なお、川崎未来エナジーが民間企業に再エネ電力を供給するのは初としている。

国は2050年の脱炭素社会の実現に向けて、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する「地域脱炭素」(※1)の実現を目指しています。地域の雇用や資本を活用し地域資源である再エネ電力を地産地消することは、地域の経済収支の改善につながることが期待されている。

川崎市は、2050年の脱炭素社会の実現に向けて脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」を策定し、2022年には環境省が定める「脱炭素先行地域」(※2)に選定された。高津区において集中的に脱炭素に取り組むため、ヤマト運輸をはじめとした民間企業と共に「脱炭素アクションみぞのくち」(※3)を推進している。特に、市内における再エネ電力の普及と地産地消を促進するため、民間事業所等への太陽光発電設備の導入等に取り組んでいる。

川崎未来エナジーは、2023年10月に市内における再エネ電力の地産地消を推進することを目的に川崎市のほか7事業者が出資・設立した会社で、2024年4月に川崎市内の再エネ電力の利用拡大に向けた事業を開始した。主に市内の廃棄物処理施設において、家庭から排出される普通ごみ等の焼却により生み出される電力を調達し、学校をはじめとした市内の公共施設に供給する等、再エネ電力の地産地消を進めている。

ヤマトグループは、2050年温室効果ガス自社排出実質ゼロの実現に向けて、EVや太陽光発電設備の導入など各取り組みを進めている。複数台のEVを運用する物流施設では、夜間の一斉充電により電力コストが増加することや、太陽光発電だけではEVや営業所の電力を賄えないこと、発電量が天候に左右されること等の課題があった。今回、官民が連携することでこれらの課題をすべて解決し、再エネ電力を100%使用するヤマト運輸の高津千年営業所の稼働を開始する。

●今回の取り組みの特長
①川崎市内で発電した再エネ電力を100%使用
川崎未来エナジーが供給する再エネ電力は、川崎市民の家庭から排出される普通ごみ等の焼却により生み出される電力で、非FIT非化石証書(再エネ指定あり)の調達等で環境価値を確保している。高津千年営業所では、屋根に設置した太陽光発電設備と蓄電池(※4)に加え、川崎未来エナジーから供給される再エネ電力を活用することで、営業所の電気や集配業務に使用するEV全25台の電力を川崎市内で発電した再エネ電力で賄う。

②物流拠点に最適化したヤマト運輸独自のエネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入
ヤマト運輸が独自に構築したEMSは、営業所内の電力使用量、太陽光発電設備での発電量、蓄電池の充放電量をリアルタイムで可視化・自動で調整し、効率的なエネルギーマネジメントを行う。さらに、最大使用電力を制御することで電力コストを低減する(※5)。

運用イメージ

EMSによる電力制御の比較(イメージ)

●営業所概要
営業所名:ヤマト運輸㈱ 高津千年営業所
所在地:〒213-0029 神奈川県川崎市高津区東野川1-2-54
営業時間:8:00~19:00
川崎未来エナジーからの電力受給開始日:2024年10月16日(水)

※1:環境省/脱炭素地域づくり支援サイト「地域脱炭素とは」
https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/chiiki-datsutanso/

※2:環境省 脱炭素地域づくり支援サイト「脱炭素先行地域とは」
2050年カーボンニュートラルに向けて、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを実現し、国の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現する地域
https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/#about

※3:川崎市「脱炭素アクションみぞのくち」
高津区溝口周辺地域で脱炭素化に資する身近な取り組みや先進的な取り組みを集中的に実施し、取り組みの効果や利便性を実感してもらうことで、市民一人ひとりの環境配慮型のライフスタイルへの行動変容を促進し、脱炭素社会の実現を目指すもの
https://carbon0-mizonokuchi.jp/about/

※4:太陽光発電設備と蓄電池の導入は、脱炭素先行地域の交付金を活用

※5:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」プロジェクトの助成事業として、ヤマト運輸が開発したシステムをもとに構築