(一社)日本物流団体連合会(物流連)は10月10日、令和6年度第1回国際業務委員会(委員長:日本郵船㈱ 常務執行役員 伴野拓司氏)を千代田区の全日通霞が関ビルで開催した。

委員会の様子

同委員会は、物流事業の海外進出に関する課題について官民連携して検討する会合で、会員企業や国土交通省から32名が参加した(うち8名がWEB参加)。

委員会は2部構成で開催され、第1部は国士舘大学 政経学部 教授の助川成也氏から、「揺れる世界の中でのASEANの現状と課題 ~物流を中心に~」と題して講演が行われた。講演会にはWEB聴講者含め91名が参加した。

講演した国士舘大学の助川成也氏

講演では、2025年に経済規模が「日本超え」をする見通しのASEANについて、最近の動きと物流の話題を交えながら解説をされた。まず9月に開催された経済相会議報告をベースに、①ASEAN経済共同体(AEC)2025での貿易関連措置の進捗がアップデートされた。続いて、②供給網の強靱性強化の動きとFTA、③タイを震源地にASEANに広がるリスク、④ASEAN変質リスクと事業環境改善、について説明した。特にASEANはデジタル技術を用いて税関手続きや貿易円滑化を進めているが、2025年以降、次の20年(2045年)を目指して「デジタル共同体」を構築することについても言及した。

また、アップルやBYD等、チャイナ・プラスワンの動きが顕在化しているが、進出日本企業についても見直しの動きが出ているとした。50%の進出日系企業がサプライチェーンの見直しを検討する等、供給網の強靱性強化に取り組んでいることが紹介され、講演会は終了した。

続く第2部の冒頭では、伴野委員長が、国際物流の状況をロシア・ウクライナ戦争、アラブ・イスラエル戦争、また、国内では最近あまり話題となっていないスエズ運河の状況に触れながら、海外出張の際に現地スタッフとの会話で宗教に対する日本人との考えの差など海外事情を交えた挨拶があった。

委員会で挨拶する伴野委員長

はじめに、国土交通省 物流・自動車局 物流政策課 国際物流室 室長の牧野武人氏から「最近の国土交通省における国際物流政策の取組みについて」説明があった。世界地図で各国の情勢を示し、現代ではサプライチェーンの最適化・効率化が図られた結果、災害や疫病、紛争等々のリスクが発生すると一気にその影響が世界中に広がることが懸念されるとし、それらのリスクに対して平常時の輸送モードやルートに対して国交省としてBCPとなり得るルートを事前調査したものを、「国際物流の多元化・強靭化に向けた調査事業」の成果として発表された。具体的には欧州向け北米ミニランドブリッジやトランスアフガニスタンルート等の現状と課題、南シナ海封鎖想定時の迂回ルートの可能性に対する調査結果を発表され、今後、調査結果をもとに、日本発着の貨物を対象に迂回ルートを利用した輸送に対する実証調査を行うため、協力要請と述べた。

最近の取り組みを発表する国土交通省の牧野武人氏

次に、事務局から令和6年度上期の活動報告及び令和6年度下期の活動計画案を説明した。下期の活動計画案については審議の結果承認され、委員会は終了した。