ゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーションは6月19日、運輸・物流業界および小売業界における今後の世界のトレンドを発表した。

これらの業界はサプライチェーンの混乱、労働力不足、消費者ニーズの変化など共通の課題を抱えており、革新的なテクノロジーを導入してサプライチェーンの可視化を改善することがますます重要になっている。

●運輸・物流業界の動向と今後の予測
2023年、運輸・物流業界は労働力不足や手配可能な車両の制限といった課題に直面することが予想されている。これらの課題に対処するため、業界はリアルタイムで取得したデータを活用し、あらゆる意思決定や業務を促すほか、人工知能(AI)や機械学習(ML)、RFID等の最新テクノロジー導入によってエンドツーエンドのサプライチェーン可視化を実現すると予想されている。

(1)長期的な視野で新たな戦略を打ち出す
製造業者、流通業者、小売業者が記録的なスピードで商品を顧客に提供することを目指すなか、運輸・物流業界はB2B2C(Business to Business to Consumer:企業と一般消費者の間に仲介企業が入る取引形態)または直接的なB2Cに移行しつつある。問題は、荷主が過剰な在庫を抱え、輸送業者は今まさにキャパシティが限界に達し、人手不足のため、顧客のニーズに対応できずにいる点が挙げられる。

2023年には保有車両の増加が図られる可能性もあるが、現在の長距離輸送の問題に対する解決策は以下のような多面的なものになるとみられている。

・貨物スペースの有効活用
・些細な非効率性も逃さず対処
・より高度な予測計画ソリューションの採用
・積極的なインセンティブとトレーニングプログラムの提供による人材確保
・代替となる港、航空貨物ハブ、追跡ルートの開拓
・労働力とサプライチェーン全体の作業スケジュールの再調整

(2)積荷場から顧客の玄関先まで、リアルタイムのデータがすべての意思決定と業務を後押し
サプライチェーンの混乱が話題となるなか、グローバルサプライチェーンのトップ企業はソリューションプロバイダーがソリューションの導入サポートを提供するのと同等のスピードで、インテリジェントテクノロジーを稼働させる必要に迫られている。今後、顧客やパートナー企業からは道路や空路、港、すべての中継地で起きていることを把握することが求められると予想されている。

何が起きているのか、なぜ起きているのか、どうすればいいのかを一緒に理解するため、取り組むことになるが、それは適切なAI/ML、RFID、電子データロガー、その他の高度な視覚・追跡テクノロジーを活用することで容易に実現できるとしている。

多くの運輸・物流企業はすでに、トレーラーやコンテナの稼働率を向上させる具体的な方法を提示するテクノロジーを積み下ろし現場で試験導入している。物流可視化プラットフォーム「FourKites」のように、サプライチェーンの動きを“航空管制的”に把握できるプラットフォームは、契約内容を履行し、納期を守るための事実上の業界標準となり、必要不可欠なものになるとみられる。

2023年は運輸・物流の調整とサプライチェーン管理がシンプル、かつ分かりやすく、ある程度自動化される年になる見通しとしている。

(3)ニーズに応じてラストマイルの新たな配送モデルが登場
顧客に商品を届ける物流の最終区間であるラストマイルにおいては、配送に複数の雇用モデルを採用する企業が増えることが予想される。最も伸びているのは、フレキシブルに稼働できる時給制の配送業者へのアウトソーシングだが、一部の小売業者や飲食店は外部委託料の支払いを負担に感じ、また配送の外注は顧客体験を損ねるリスクとなる恐れがあるため、従業員や業務委託スタッフを増員し、ギグエコノミーのサービスを自社に戻そうとする動きが表面化する可能性がある。実店舗からの配送、メーカーや卸売業者からの配送(ドロップシッピング)、さらに顧客の自宅までの配達を担う新しい輸送手段(カーゴバイク、電気自動車、自律型ポッド等)は、従来のワゴン車によるラストマイル配送を補強するものになるとみられる。

●小売業界の動向と今後の予測
新型コロナウイルスによる前例のない世界的なシャットダウンから、混乱を極めた再スタート、さらにインフレやサプライチェーン等の先行き不安に直面する昨今の“ネクストノーマル”まで、ここ3年は小売業界にとって苦難の連続だったと指摘。ゼブラが発表した第15回「小売業界のテクノロジー改革に関するグローバル調査」では効率性、柔軟性、レジリエンスを重視することが次年度、さらには長期的に生き残るための鍵だと解説した。

(1)損失防止を含む、在庫の最適化に関するあらゆる要素が重要に
顧客が望む商品を揃えることは当然非常に重要であり、在庫供給に関しては引き続き供給と価格設定が課題となる見通しとしている。

また、金利上昇により在庫維持コストが高騰しているため、小売業者はコスト削減を目指すとみられる。在庫需要の面では、顧客がスマートフォンを使いて瞬時に商品を比較可能で、また、インフレの影響もあることから、将来の消費行動の予測は容易ではないと指摘。

目標となるのは、手作業からテクノロジーを駆使したプロセスへ、最終的にはガイド付きの自動化システムへとステップアップすることとしている。注目すべき具体的な在庫動向は次の通り。

◎あらゆるところにRFIDを
・サイズ、コスト、印刷のしやすさなど RFID タグの進化が付加価値の高い新たな活用事例を生み出し、その普及を促進
・活用事例の相乗効果により、来年は特に食品および物流の分野でRFIDの大量導入が進む見通し

◎デジタルツイン(特にスマートシェルフ)
・スマートシェルフは、小売業者が店内の商品を正確に把握するための有効な手段の1つ。アドバンスト・コンピュータビジョン(ACV)、重量センサ、電子棚ラベルに接続されたIoT対応シェルフは物理センサとMLテクノロジ―を組み合わせ、商品検出、ダイナミックプライシング、カスタマー感知を実行する。

◎AI/ML ベースのデータが意思決定を後押し
・小売業者は長年、自社の POS システムと在庫管理システムに目を向け、問題点やビジネスチャンスを見出してきた。今後はこうした例外ベースのレポート(EBR)をより確実な施策に変えていくことが重要としている。

(2)チャネルを超えたシームレスなユニファイドコマース体験
現在、以前では考えられなかった概念が広く普及している。消費者は商品を見て回ること、情報の入手、購入、使用といったこれまで分断されていた体験を、シームレスかつ互換性のあるものにしたいと考えている。その地殻変動は、小売業者にオペレーションの再考を迫っている。変革は間違いなく進行中であり、多くの小売業者が少なからず移行を始めている。今年はこのような体験がさらに改善され、小売業者がより収益性の高い形で実行できるようになる見通し。実店舗の収益性を高めるには、重要な基礎的要素がいくつかある。

・実店舗でのフルフィルメントを近代化:リアルタイムの在庫表示により、注文処理業務を効率化
・流通ネットワークの視野拡大:eコマースの物流機能と店舗のフルフィルメント機能が融合した店舗、倉庫、配送センターをより多角的に把握
・リバースロジスティクスの最適化:効率化とビジネスの業績向上を推進し、より高い収益を実現

(3)現場スタッフの能力強化―少人数であってもテクノロジー活用で優れた仕事を
小売業界において現場のスタッフ問題は最大の負担であり、人手不足に直面しているケースが多くみられる。その解決策は人を主体とした自動化が大半で、反復的で退屈な店員の業務を削減するこによって、顧客対応等より価値の高い仕事に従事できるようサポートしている。例えば、ワークフォースマネジメント(WFM)を最適化することで、小売業者は労働力のニーズを正確に予測し、適切なスキルと在職期間をマッチングさせて従業員のスケジュールを最適化できるだけでなく、簡単な仕組みを適用することで休暇やシフト交換、その他の従業員のニーズに対応することが可能。また、コミュニケーション上のタスク管理を効率化することで、タスクの実行を最適化・簡略化し、業務全体の効率改善を実現する。