ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン㈱は5月23日、親会社のゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーションが実施した「自動車産業のエコシステムに関する展望調査」の結果を発表した。

同調査は自動車業界の展望、優先して取り組むべき施策や今後の予測、急速なデジタルトランスフォーメーション(DX)に起因する課題およびビジネスチャンスの把握を目的としている。

同調査結果から、消費者の電気自動車(EV)志向が高まっており、業界として早急な対応を迫られていることが明らかになった。

●自動車産業のエコシステムに関する展望調査概要
調査企画:ゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーション
調査期間:2022年8~9月
調査実施:Azure Knowledge Corporation(米調査会社)
調査対象:自動車業界の企業幹部(OEM、部品メーカー含む)、車両管理責任者、消費者を含む1,336人(うち350人はインド、中国、日本、韓国から参加)
調査方法:オンライン調査
調査地域:北米、欧州、中南米、アジア太平洋(APAC)

自動車メーカーは原材料から最終組立まで、要件が大きく異なるEVへのスムーズな移行を計画する必要がある。したがって、テクノロジー主導の優先課題としては、自動化の推進、自社テクノロジーの構築、生産工程とサプライチェーンそれぞれにおける可視化の向上に対する注力が挙げられる。

景気変動にもかかわらず、自動車メーカーの74%(APAC:69%)が2023年にテクノロジーへの支出を増額し、67%(APAC:63%)が製造インフラへの支出を増やす計画であることから、テクノロジー革新への投資準備は着々と進んでいる。

調査では、消費者の半数以上(世界:53%、APAC:60%)が将来的にハイブリッド電気自動車(HEV)を選ぶと回答し、人々の志向に変化が生じつつあることが明らかになった。しかし、世界の自動車業界幹部の68%(APAC:60%)がEVなど次世代自動車の生産に多大なプレッシャーを感じているほか、75%(APAC:71%)が「より環境に優しく、サステナブルな製品を供給することへの強いプレッシャーにさらされている」と回答しているように、拡大するEV需要への対応が課題となっている。

自動車の購入やリースを検討する際に重視する項目として、消費者の81%(APAC:85%)がサステナビリティと環境配慮を挙げており、世代を超えて自動車メーカーの技術革新の加速を促している。自動車のサステナビリティを優先するとの回答の割合はミレニアル世代の87%を筆頭に、X世代の78%、ベビーブーマー世代の76%と続く。APACにおいても消費者の85%が上記の優先事項に同調しており、ミレニアル世代の92%、X世代の83%、ベビーブーマー世代の72%がサステナビリティを最も優先して考えていることが明らかとなった。

また、消費者の関心は、自分の好みに合わせて車両をカスタムする「パーソナライズ化」に集まっている。車両購入の判断材料として、消費者の78%がパーソナライズ化のオプションを挙げ、車両管理責任者も83%がサステナビリティとパーソナライズ化を挙げている。APACの消費者は世界の消費者と比べ最もパーソナライズ化への関心が高く、購買時の意思決定においてこのオプションを優先するとの回答は消費者の86%、車両管理責任者では92%を占めた。

世界の自動車業界幹部の約80%(APAC:77%)が、よりサステナブル、かつパーソナライズ化された車両が消費者に期待されていることを認識しているが、75%はカスタマイズへのニーズ拡大に対応することが困難であることを認めている。その結果、世界の自動車メーカーの75%が次世代型の生産体制の実現に向けテクノロジー企業との戦略的パートナーシップ構築が最重要課題であると回答している。APAC全体ではこの割合が低く、それぞれ72%、64%だった。

消費者と車両管理責任者はデータと情報の透明性を重要視しており、自動車産業におけるエコシステムのさらなる可視化を求めている。自動車の購入やリースを検討する際、世界の消費者の81%(APAC:85%)、車両管理責任者の86%(APAC:92%)が自動車の素材や部品の供給元を知りたいと回答している。特にミレニアル世代は自動車製造の透明性向上を求めており、世界およびAPACでは80%以上がメーカーに関する情報が入手可能であること、原材料や部品がサステナブルであるかどうか、自動車がどのように製造されているかを理解することが重要であると考えている。

自動車製造工程のさらなる可視化にとどまらず、消費者の88%(APAC:82%)、車両管理者責任者の86%(APAC:88%)は、車両から取得されたデータが自動車のエコシステムにどのように利用されるのかを理解したいと考えている。また、自動車購入後、消費者の83%(APAC:86%)および車両管理責任者の84%(APAC:88%)が自動車によって生成されたデータを自分で所有し、管理することを希望している。

多くの消費者(世界:79%、APAC:83%)と車両管理責任者(世界:81%、APAC:84%)は、製造プロセスが最初から最後まで可視化されることを望んでいる。しかし、今後5年間で業務の全体像を公開し、生産現場やサプライチェーン全体の可視性向上を図るために、リアルタイムでのデータシステムの接続を優先すると回答した自動車業界幹部は約30%(世界およびAPAC)にとどまっている。

世界、およびAPACのOEM企業の3分の1以上が自律走行搬送ロボット(AMR)、RFID、高堅牢ハンドヘルドコンピュータやスキャナ、産業用マシンビジョンによってサプライチェーン管理が改善すると考えている。サプライヤーについても同様の傾向があり、回答者の3分の1がバーコードラベルやサーマル印刷用モバイルプリンタ、ウェアラブルコンピュータ、位置情報テクノロジーが上記の改善に有効であるとの見解を示している。

DXが組織の戦略的優先課題であると認識している自動車業界幹部は76%(APAC:67%)にのぼった。テクノロジーの活用は今後5年間で加速することが予想されており、業界幹部の47%(世界およびAPAC)が積層造形および3Dプリントに、世界の45%(APAC:46%)がサプライチェーン計画ソリューションに注目している。

●「自動車産業のエコシステムに関する展望調査」日本語版レポート
https://connect.zebra.com/mfvs27-vs-jp