(一社)日本物流団体連合会(物流連)は5月15日、令和8年度第1回「海外物流戦略ワーキングチーム会合」を千代田区の全日通霞が関ビルで開催した。同会合は物流事業の海外展開に関する課題を官民連携で検討するもので、物流業界のグローバルサプライチェーンで大変注目され昨今経済成長が著しい「インド」の物流事情について令和6年度から7年度にかけて2年に跨り調査を行った。

第1部の講演会では、インドのAssociation of Supply Chain Professionals (ASCP)事務局長のアンシュマン・ニール・バス氏を招き、「The Future of India’s Supply Chain」と題して講演した。講演会にはワーキングチームメンバー以外も多数聴講し、Web参加を含めて合計58名が参加した。

講演されたASCP アンシュマン氏

講演では、急速な経済成長を続けるインドにおける物流・サプライチェーン改革の最新動向が紹介された。インド政府が推進する国際物流政策「Gati Shakti」や、専用貨物鉄道(Dedicated Freight Corridors : DFC)、 国家産業回廊構想などの大規模インフラ整備について解説し、物流コスト削減やモーダルシフト推進に向けた取り組みについて説明があった。

また、インドの物流コスト比率がGDP比約8%まで改善しつつあることや、物流分野におけるデジタル化、AI・IoT活用、グリーン物流への転換等、今後10年間の成長見通しについても言及があった。特に、コールドチェーン物流、医療品物流、EVバッテリー・半導体関連物流、スマート倉庫等の分野において日本企業にとって大きな事業機会が存在すると説明された。

さらに、日印両国が推進する「日印共同ビジョン2025-2035」や「日印産業競争力パートナーシップ(IJICP)」に基づき、今後10年間で10兆円規模の日本企業による投資目標や、サプライチェーン強靱化、人材交流、先端技術分野での協力が進展する見通しも紹介された。インドと日本は「長期的信頼関係」「精密技術」「持続可能性」という共通価値を有する戦略的パートナーであると強調し、「日本の精緻な品質・運営力と、インドの成長力・市場規模を組み合わせることで、強靱かつ持続可能なサプライチェーンを共創できる」と述べた。

また、日本企業による物流、コールドチェーン、グリーン物流、半導体・電池分野での協業・共同事業(JV)拡大への期待を示し、物流連会員企業とのさらなる交流・連携促進に意欲を表明し、講演会は終了した。

講演会後の記念写真

第2部のワーキングチーム会合は、Web参加を含めて合計27名が参加した。国土交通省物流・自動車局 国際物流室の牧野武人室長から「今年度の国土交通省の国際物流政策の取り組みについて」説明が行われた。主な施策として、物流事業者の海外展開促進、国際物流ネットワークの多元化・強靱化、コールドチェーン物流の国際標準化、日中韓物流シームレス化、経済安全保障を踏まえた海外物流投資支援等が紹介された。特に、コールドチェーン物流については、日本発の高品質な物流サービスの国際標準化(ISO化)を推進するとともに、ASEAN諸国との連携による物流政策対話やワークショップの実施状況が共有された。令和8年度は、インドネシア(ジャカルタ)およびフィリピン(マニラ)でコールドチェーン物流ワークショップの開催が予定されており、現地物流事業者とのビジネスマッチングや、日本企業による先進技術・サービス紹介の機会創出が期待されている。

今年度の取り組みを発表する国土交通省の牧野室長

また、国際物流の強靱化に向けて、中国・中央アジア・カスピ海経由で欧州へ至る「中央回廊」を活用した実証輸送事業の紹介が行われたほか、日本を経由する第三国貨物(トランジット貨物)の取り込みについても検討が進められていることが共有された。航空・海上物流の積替え拠点として、日本の港湾・空港機能を活用する可能性についても意見交換が行われた。

最後に事務局から、令和8年10月に実施予定の「インドネシア海外物流事情実態調査団」の概要について説明が行われ、調査団では、ジャカルタ、マカッサル、スラバヤを訪問し、空港・港湾施設、現地物流関連企業、輸出産業施設等の視察を予定している。

特に、物流インフラのみならず、現地企業や輸出産業の物流課題を把握することで、今後の日本企業による海外展開や新たなビジネス機会につながることから、メンバーからも積極的に積極的な参加をお願いする呼びかけがあり、会議は終了した。