(一社)日本物流団体連合会は12月21日、令和4年度第3回「海外物流戦略ワーキングチーム会合」を千代田区の全日通霞が関ビルで開催した。

物流事業の海外における事業活動に関する課題について官民連携して検討する会合で、会員企業や国土交通省から30名が参加した(うち9名がWeb参加)。

令和4年度の同ワーキングチームの調査対象国はバングラデシュ。昨年に引き続き、コロナ禍の影響で海外渡航による実地調査が困難であるため、Webを活用し海外の専門機関や進出企業に対し懇談形式を用いて現地の物流実態について調査を行うこととしている。

今回は清水建設㈱ 国際支店営業部の水品恭志氏を講師として招聘し、「バングラデシュにおける建設プロジェクトと物流事業の可能性」と題した講演を行った。講演会にはWeb一般参加者を含め合計43名が参加した。

講演は、最初に1958年(東パキスタン時代)の同社進出時の状況から説明がなされた。フェンチガンジ肥料工場の設計・施工管理に始まり、1968年には同社における戦後初の海外請負工事となるチョットグラム漁港の施工プロジェクトの解説があった。1971年、パキスタンからの独立後は日本政府経済援助プロジェクトを本格的に開始。ショナルガオンホテル建設工事やフェニー川締切ダム建設工事、在バングラデシュ日本大使館・大使公邸新営工事等、数多くの事業に関わった。物流へ大きな影響を与えた事業としてチッタゴン空港整備、モングラ港へ接続するルプシャ橋施工工事等の円借款プロジェクト関連事業を挙げて説明された。

次に「建設プロジェクトの現状」として、2014年の日バ「包括的パートナーシップ」立ち上げから始まった円借款建設プロジェクトが継続していることについて触れた。中でも、BIG-B(ベンガル湾成長地帯構想)が輸送ネットワークを含む4つの分野において両国が協力する意思を共有したと述べた。このBIG-Bは単発で終わるのではなく、継続すべきプロジェクトであることを強調された。

続いて、建設プロジェクトと物流の関係性を道路や鉄道網、水運等の分野ごとに課題と計画を説明された。資源の少ない同国における建築資機材の輸入に関する問題点や、日本企業に対する免税措置等についても解説がなされた。

最後に「同国における物流業の可能性」として進出日系企業の状況を示し、今後も日本政府ODAプロジェクトに大型案件が見込まれていることから、引き続き同国に大きな期待を持つことができると説明。また、同国はeコマースの市場が拡大しており、高レベルな物流センターの建設や、日本のノウハウを生かしたコールドチェーンの構築等、現地における「必要性」に対して注力していくことが、日系企業の重要な選択肢の1つであると解説され、講演は終了した。

ワーキングチーム会合では、国土交通省総合政策局、物流渉外官村井香菜氏から「最近の国土交通省の国際物流政策の取り組みについて」説明がなされた。国際海上コンテナの需給逼迫が緩和する傾向にある状況を説明され、続いて国際物流の多元化・強靭化に向けた実証輸送に関する調査結果の報告と今後の取り組みについて説明がなされ、メンバーからの質問もあり積極的な意見交換となった。その他、日中韓物流課長級会合の報告、ASEANにおけるコールドチェーン分野の取組状況について説明がなされた。

最後に事務局より、海外物流事情調査報告書の制作状況について説明し、会合は終了した。

講演した清水建設の水品恭志氏
最近の取り組みを発表した国土交通省の村井香菜氏
会合が開催された全日通霞が関ビルの会場