ヤマトホールディングス㈱傘下で共同輸配送のオープンプラットフォーム(OPF)の提供により物流の標準化・効率化を目指すSustainable Shared Transport㈱(SST)と富士通㈱は1月27日、2025年2月1日より荷主企業・物流事業者向けの共同輸配送システムの稼働を開始し、SSTはOPFを活用した共同輸配送サービス「SST便」の提供を開始すると発表した。
SSTは持続可能なサプライチェーンの構築に向け共同輸配送のOPFを提供する会社として2024年5月21日に設立し、標準パレット輸送(リアル)と標準化された商流・物流情報の連携(デジタル)によるOPFの提供準備を進めてきた。「SST便」は幹線輸送をベースに共同輸配送システム上であらゆる荷主企業と物流事業者をマッチングするOPFを活用した共同輸配送サービスとしている。
富士通は、マテリアリティの必要不可欠な貢献分野の1つである「デジタル社会の発展」への取り組み項目として「責任あるサプライチェーンの推進」を掲げ、物流課題の解決を極めて重要なテーマとして位置づけている。荷主企業として「SST便」を活用するほか、SSTと共同でサプライチェーンに関わるデータ連携基盤を構築した。また、富士通は2025年2月1日、SSTに5,000万円を出資する。
物流業界は輸送力不足や気候変動への対応等の社会課題に直面しており、物流事業者だけでなく荷主企業も含めたあらゆる事業者はさらなる物流の効率化や職場環境整備に向けて大きな変革を迫られている。2025年4月以降は、「物資の流通の効率化に関する法律」に基づき、荷主企業・物流事業者は、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課せられる等、法改正への対応が急務となっている。
一方、業種・業界ごとにシステムや規格、商慣習等が異なるため、一部の荷主企業や物流事業者のみでの課題解決には限界があるため、ヤマトグループは企業間の垣根を越えた物流効率化に向けて2024年5月21日に新会社SSTを設立した。さらに、富士通と共に、企業の枠組みを越えてデータを連携するための基盤システムの構築を進めてきた。
●共同輸配送を支えるシステムおよびOPFについて
◎荷主企業と物流事業者の情報マッチングによる最適な輸配送計画の作成
同システムは、富士通のオファリング「Fujitsu Unified Logistics」によるデータ基盤を活用しており、荷主企業の出荷計画や梱包の状態(荷姿)、荷物量等の情報と、物流事業者の運行計画をもとに、最適な輸配送計画を作成する。荷主企業は共同輸配送のパートナーを自ら探すことなく共同輸配送に取り組むことができるだけでなく、同一区間でも複数の時間帯・複数の輸送手段の中から標準パレットスペース単位で最適な輸送方法を選択できるため、効率的な輸送を実現できる。物流事業者は、復路の空車走行の減少(帰り荷の確保)等による積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減や処遇改善を図ることが可能となる。
◎「物流情報標準ガイドライン」に準拠したデータ連携による意思決定の迅速化と企業間の協力促進
今回のOPFは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期 スマート物流サービス」プロジェクトにより策定された「物流情報標準ガイドライン」に準拠しているため、業種・企業間で定義の異なるデータの連携が容易になる。これにより、荷主企業や物流事業者は運送手段やドライバー配置計画など輸配送に関する意思決定を迅速化できるほか、物流効率化に向けた企業間の協力を促進する。
◎ブロックチェーンによる安全なデータ連携の実現
今回のOPFは富士通の保有するブロックチェーン等の技術やサイバーセキュリティの知見を活用することで、外部からの閲覧を防止するほか、データ変更のログを取ることにより第三者からの改ざんに対して検知・対応・復旧を可能とする。業種や企業を跨ぐデータ連携において、セキュリティが担保された安全なデータ連携を実現する。

●幹線輸送について
SSTは宮城県から福岡県間において1日16便の運行(※)で、標準パレットスペース単位で利用できる「定時運行」「中継輸送」「混載」による幹線輸送を提供するほか、地域の物流事業者と連携し、利用荷主企業の要望に応じた「域内配送」を合わせて提供する。

●今後について
SSTと富士通は、ヤマトグループの約170万社の法人顧客・3,500社以上の物流事業者とのパートナーシップ、輸配送ネットワークやオペレーション構築のノウハウと、富士通の持つ製造・流通分野の業務知見やシステム構築のノウハウを組み合わせることで、業界の垣根を越えた持続可能なサプライチェーンの実現を目指す。さらに、商流情報と物流情報を連携するデジタル基盤を構築するほか、関連機関・団体のサービス・プラットフォームとのデータ連携を推進することで、サプライチェーン全体の最適化・強靭化に貢献していくとしている。

SSTは対象地域やダイヤの拡充に加えて、トラック輸送だけでなく鉄道や船舶等も含めたマルチモーダルを推進し、2026年3月末を目途に80線便まで路線を拡大することで共同輸配送を加速させる。
富士通は社会課題を起点とした事業モデル「Fujitsu Uvance」のもと、今後もSSTの事業を通じて共に共同輸配送による運送・作業・保管に関わる手段・アセットの最大化を目指すフィジカルインターネットの実現に貢献する。また、物流に関わるステークホルダーと協調し、複数分野のOPFと組み合わせ、業種・業界を横断した幅広い課題解決に貢献していくとしている。
※1日16便の運行:2025年2月時点の情報、提供区間は順次拡大の予定
●参考リンク
・ヤマトホールディングスプレスリリース「持続可能なサプライチェーンの構築に向け共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社を設立」(2024年5月21日)
https://www.yamato-hd.co.jp/news/2024/newsrelease_20240521_2.html
・Fujitsu Unified Logistics
https://activate.fujitsu/ja/offering/unified-logistics
・物流情報標準ガイドライン
https://www.lisc.or.jp/