アスクル㈱は8月30日、花王㈱とコクヨ㈱と共に、「発注量の平準化に関する実証実験」を実施したことを明らかにした。

同実証実験は、2019年に掲げた「ホワイト物流」推進運動の自主宣言の取り組みの1つで、同社からサプライヤーへの商品発注量を平準化し物量の波動を吸収することにより、輸送車両台数とCO2排出量の削減を目指すもの。2022年4月~2023年1月の期間、アスクル・花王・コクヨと共同でEC事業者起点の独自AIを用いた需要予測・需要変動を取り込み、発注量を平準化する実証実験を段階的に行った。その結果、輸送車両台数とCO2排出量の削減等の成果を得た。

昨今のEC物量拡大に伴い、2024年問題で注目を集める人手不足のみならず、トラック輸送急増によるCO2排出量増加が顕著になり、企業にとって生産効率の向上やCO2排出量削減への取り組みが喫緊の課題となっている。

従来、アスクルで採用していた発注方法は、一般的な小売業と同様、消費者の需要変動に応じて「必要なモノを・必要な時に・その都度発注する」ものだった。その方法では、発注量が需要に応じて変動するため日々の発注量が一定でなく、サプライヤーはばらつきのある発注量に合わせて庫内作業を行わなければならなかったほか、車両もその都度手配するため、トラックの増台対応をする日もあれば、低積載となり結果的にトラックの空きスペースが多い日も発生する等、サプライヤー側の出荷・輸送工程が非効率であることが大きな課題だった。また、アスクルも日々変動する入荷量に対して受け入れ作業を行う必要があり、サプライチェーン全体の生産性低下につながっていたほか、そのような低積載の輸送を行うことで無駄なCO2を排出していた。

そこで今回、物量平準化による輸送車両・CO2排出量削減を目的として、アスクルからサプライヤーへの発注量を平準化する取り組みを開始した。

実証実験のイメージ

●実証実験の概要
アスクルは、「ホワイト物流」推進運動(※1)に賛同し、2019年に持続可能な物流の実現に向けた「自主行動宣言」を提出している。今回の「発注量の平準化に関する実証実験」は、自主行動宣言の項目の1つであり、同社からサプライヤーへの発注量を平準化することで、輸送車両台数とCO2排出量の削減を目指すもの。

発注量の平準化を実現するにあたり、アスクルがEC事業者起点でAIを活用した「発注量平準化のシステム」を開発した。同システムに、サプライヤーの使用する輸送車格(4トン車、10トン車等)と各車格で輸送できる物量(積載可能才数)を取り込み、1週間分の需要予測・需要変動のデータと突き合わせてアスクルからサプライヤーへ発注。発注量を「輸送車両の車格単位での発注量」としたことで、発注の時点で高積載となる仕組みを確立し、発注量の平準化を検証した。

実証実験期間:2022年4月~2023年1月(花王、コクヨ、アスクル)
各社の役割:花王(出荷サプライヤー)、コクヨ(出荷サプライヤー)、アスクル(発注者)

発注量平準化フロー

※1:「ホワイト物流」推進運動とは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が参加を呼び掛けている運動で、深刻化が続くトラック運転者不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的とし、「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」、「女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より『ホワイト』な労働環境の実現」に取り組む運動のこと。

●実証実験の成果
同実験を通じて発注量の平準化を図ったことにより、輸送に用いる車両数を削減し、同一の物量に対して排出CO2を削減させる成果を得たほか、輸送する物量の平準化でトラック積載率が向上し、サプライヤー・当社物流センターの庫内作業も効率化した。これを受け、アスクルは2023年2月より同実証実験を他サプライヤーにも展開し、取り組みを拡大しているとしている。

<年間試算結果>
期間:2022年5月21日~2023年4月20日
対象アスクル物流センター:名古屋センター、DCMセンター

①CO2排出量を5.1トン削減
②トラック台数を削減:4トントラック158台、10トントラック47台削減
③トラック積載率が68.0%から69.7%に向上(1.7%改善)
 (対象品が重量物ではないため、容積で積載率を算出)
④サプライヤー・アスクル物流センターでの庫内作業の効率化
 〔花王・コクヨ(サプライヤー)〕出庫、仕分け作業の効率化
 〔アスクル(荷主)〕物流センター内での入庫、在庫化作業の効率化