Wismettacフーズ㈱とヤマト運輸㈱は3月30日、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、国内外で流通する荷物の位置情報や温度推移等の輸送関連情報をリアルタイムに可視化する「トレーサビリティプラットフォーム(PF)」を活用した、農産品を輸出する実証実験を実施した。

農林水産省は2020年12月に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(※1)を決定し、輸出額目標として2025年には2兆円、2030年には5兆円達成することを掲げている。日本の農水産品はアジアを中心に高く評価される一方、果物等の生鮮食品の輸送では鮮度や品質を保つために産地から配送先まで一定の温度で保管・輸送することが求められている。また、米国へ食品を輸出する場合は、トレーサビリティに関する記録を保存する「食品トレーサビリティ規則」が義務化(※2)される等、厳しい制限がある。

Wismettacフーズは、日本のハイクオリティな農産物を世界に広めるミッションのもと、鮮度・品質を一定に保つための輸送環境の整備や、海外の規制遵守等、様々な障壁への対応を進めてきた。

ヤマト運輸は、法人顧客のLead Logistics Partnerとして、物流オペレーションの改善や効率化にとどまらず、顧客の経営判断に資するサプライチェーン変革を支援しているほか、テクノロジーを活用したデータ取得・可視化の仕組みや、クラウド技術を中心としたデータ基盤「ヤマトデジタルプラットフォーム」の高度化によるデータ戦略を推進している。

両社は2021年7月から、農産品の位置情報や温度推移、輸送中の衝撃等をリアルタイムに測定し、品質を管理しながら輸送する、食品トレーサビリティ規則に対応した実証実験を実施してきたほか、「フードチェーン情報公表JAS」の制定に向けた規格原案を提出するための輸出実証を行う等、日本の農産品の高付加価値化に向けた取り組みを進めている。

※1:政府の輸出促進政策(農林水産省Webサイト)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_kyouka_senryaku/h28_senryaku.html

※2:米国政府による食品トレーサビリティ規則について(農林水産省Webサイト)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/fsma_traceability.html

●実証実験について
日本から米国・シンガポール・香港・タイ・台湾に、高品質なメロン、サツマイモ、イチゴ、リンゴ等をマルチモーダル輸送(陸・海・空)した。リアルタイムに輸送中の温度や衝撃、位置情報等の関連情報を可視化・把握することで、温度等による農産品の変色の未然防止や、食べ頃を考慮した輸送経路や時期の調整等、新たな付加価値を提供することが実証された。

熊本県からシンガポール・香港にイチゴを輸出実証した際の運用フロー

九州から米国(ニューヨーク)にイチゴの輸出実証した際のトレーサビリティ情報

●プラットフォームの特長
(1)IoTデバイスや電子タグを利用し、国内外の複数ユーザーの荷物の位置情報や温度推移をリアルタイムに確認が可能
(2)顧客自身で輸送計画を事前に登録することができ、配送完了までの一連のオペレーションを1つのシステム上でリアルタイムに管理が可能
(3)輸送時に温度やセキュリティ等の異常を検知した場合は、アラートを発出するため、速やかな対処が可能

●今後の展開
今回の実証実験の結果を踏まえ、日本の農産品のさらなる高付加価値化と輸出力強化に貢献していくほか、SIPのスマートフードチェーンコンソーシアムが推進する、フードチェーンにおける様々なデータを連携するプラットフォーム「Ukabis」との連携も検討していくとしている。