㈱Nexa Ware(ネクサウェア)と㈱椿本チエインは10月30日、「物流倉庫向け遠隔フォークリフト操作システム」の評価検証システムを開発したと発表した。

その機能・性能と事業性を検証するため、11月4日から、ロジスティード㈱および三菱HCキャピタル㈱と共同で実証実験を開始する。

今回開発した遠隔フォークリフト操作システムは、既存のフォークリフトにセンサやカメラ、アクチュエータ等の遠隔操作ユニットを後付けし、遠隔から操作するもの。

同システムの開発に当たり、ロジスティードが保有する遠隔フォークリフト作業検証による知見と技術検証ノウハウを活用し、同社グループの物流センターでフィールド実証実験を行う。さらに、三菱HCキャピタルの強みである顧客とのネットワーク力を生かし、今後の事業性評価も実施する。

●評価検証システム

遠隔フォークリフト評価検証機
遠隔フォークリフト操作卓

Nexa Wareとロジスティード、三菱HCキャピタルの3社は、持続可能な物流の実現を目指して、2025年3月に「物流倉庫向け遠隔フォークリフト操作システムの事業化」に向けて共同検討することについて合意し、基本合意書を締結した(※1)。

3社で物流改革を推進し、慢性的なフォークリフトオペレーター不足の解消、冷凍倉庫等の過酷な作業環境改善と安全性向上による物流業界の魅力向上といった課題解決を図ることが狙い。

その後、実証実験における技術パートナーとして椿本チエインが参画。Nexa Wareとの共同開発により、評価検証システムが完成した。

今後、Nexa Ware、ロジスティード、三菱HCキャピタル、椿本チエインの4社で実証実験を行い、遠隔フォークリフトの機能・性能、事業性等を評価・検証していく。

●実証概要
(1)実施方法
場所:ロジスティード東日本㈱ 館林営業所(群馬県館林市)
期間:2025年11月4日~12月26日(予定)
評価概要:
①機能・性能評価:物流センターにおける様々なフォークリフトオペレーションを、評価検証システムを活用して実施することで、遠隔フォークリフトの機能・性能について、実際の倉庫業務をベースに評価する。
②事業性評価:機能・性能評価の結果を元に、顧客展開方針、ビジネス規模等の事業性評価を実施する。

(2)システム概要
同システムは既存フォークリフトに、センサや複数のカメラを取り付け、遠隔操作を可能にするもの。運転に必要な各操作レバーを遠隔操作するためのアクチュエータを開発、遠隔操作者による繊細な操作をフォークリフト機体側で再現することで有人と同等の操作性を実現する。

物流現場では、生産現場等に比べて生産性や汎用性の課題から、無人フォークリフトの導入が進みにくい状況があるが、同システムの活用によって遠隔地に設置した操作卓からカメラ映像、センサ情報等を認識しながら、フォークリフトを遠隔操作することで、実質的な無人作業化を可能にする。

(3)システムの特長
①柔軟運用が可能なシステム
既存のフォークリフトに、同システムを後付けで取り付ける構造のため、物流センター等で運用しているフォークリフトをそのまま活用できる。
また、同システムは、互換性のある別のフォークリフト機体への載せ替えが可能なほか、機体と同システムの資産管理をそれぞれ個別に行える等、柔軟な運用が可能となる。

②遠隔操作を可能とする、カメラ/ARアシストソリューション
実証実験用に、フォークリフト本体に8個のカメラ、15個のセンサを取り付けている。カメラの映像、センサ情報を遠隔操作卓で確認し、遠隔操作の安全性を確保する。

また、操作に当たってはフォークリフト本体の走行方向、貨物との位置関係等をARアシストアプリケーション(※2)を活用してカメラ映像に重畳表示(※3)することで、さらなる操作性の向上、安全性確保を実現する。

操作卓におけるAR/カメラ映像-1
操作卓におけるAR/カメラ映像-2

③遠隔操作用アクチュエータユニット
フォークリフトの各操作部に取り付ける電動アクチュエータが、遠隔操作者が行う操作レバーやブレーキペダル等の微調整が必要な操作を低遅延な通信(※4)とリーダー/フォロワー制御(※5)によりリアルタイムな遠隔操作を再現する。また、フェイルセーフ(※6)となるシンプルな機構やモータ制御により、システム全体で安全性も確保している。

ハンドル・レバー操作用 アクチュエータ
ペダル操作用 アクチュエータ

(4)各社の役割・本実証実施体制
Nexa Ware:遠隔フォークリフトシステムの事業および同実証の実施主体。同実証のフィールド通信環境整備
ロジスティード:遠隔フォークリフト作業検証による知見と技術検証ノウハウ提供。同実証のフィールド環境提供および機能・性能評価支援
三菱HCキャピタル:遠隔フォークリフトシステムの販売(リース、サブスク、サービス提供等)を見据えた事業性評価支援
椿本チエイン:遠隔フォークリフトシステムの開発、同実証の機能・性能評価および本実証のフィールド通信環境整備支援

●今後の予定
今回の実証を通じて遠隔フォークリフト操作システムの機能・性能、事業性評価を行い、並行して2号機開発も行うことで、2025年度中のトライアル販売、2026年度中の商用販売開始を目指す。

●遠隔フォークリフト操作システム(動画)
https://youtu.be/IlkdsMgWGoo

※1:2025年3月27日プレスリリース
「物流倉庫向け遠隔フォークリフト操作システム事業化」に向けた基本合意書を締結
https://nexaware.com/post-234/

※2:ARアシストアプリケーションのソフトウェアは㈱日立製作所 研究開発グループが開発したもの。

※3:フォークリフトに設置したカメラの映像に対して、方向や貨物との位置関係をAR(Augmented Reality)を重ね合わせて表示することで、遠隔操作をサポートする。

※4:低遅延な通信:データが送信元から受信先に届くまでの時間の遅れを抑える通信方法

※5:リーダー/フォロワー制御:「リーダー」が動作を行うと、それに従って「フォロワー」が協調して動作する制御方式

※6:フェイルセーフ:設備の故障が発生した際に安全側に動作すること