(一社)日本物流団体連合会(物流連)は11月26日、「第1回モーダルシフト優良事業者大賞表彰選定委員会(委員長:竹内健蔵 東京女子大学教授)」を開催し、「モーダルシフト優良事業者大賞
表彰」の受賞者を決定した。

同表彰は平成15年からスタートし、モーダルシフトを積極的に推進した事業者を表彰している。昨年度までは「モーダルシフト最優良事業者賞」の名称で公表・表彰を実施していたが、今年度より最近のモーダルシフトの取り組み方に沿う形で全体的に見直しを行い、「モーダルシフト優良事業者大賞表彰」に名称を改め、部門賞を5つに再編。さらに従来は、物流事業者のみを表彰対象としていたが、新たに対象を荷主企業にも拡大した。それらの見直しの結果、従来以上に多くの応募を受け、応募総数は16件となった。

大賞は、㈱コクヨロジテムと日本通運㈱による「千葉県松戸市~佐賀県三養基郡基山町のコクヨの自動車輸送を海上輸送に全量転換」が受賞した。

今回の応募の全体の傾向としては、「物流の2024年問題」への対応をきっかけとして取り組んだ内容が多く、物流業界の重要課題に対する問題意識の高さが見られた。表彰式は12月9日、東京都千代田区の海運クラブにて開催される。

■第1回モーダルシフト優良事業者大賞表彰 公表・表彰の概要
(同一の賞で受賞者複数の場合、主たる事業所の50音順)

●モーダルシフト優良事業者大賞
受賞者:㈱コクヨロジテム、日本通運㈱
案件名:千葉県松戸市~佐賀県三養基郡基山町のコクヨの自動車輸送を海上輸送に全量転換

トラック輸送から海上輸送へのモーダルシフトにより、効率化・省人化と、輸送品質の向上、環境負荷の低減を同時に達成した案件。トラック輸送時には滋賀地区で行っていた中継輸送は、モーダルシフト実施に伴って不要となり、同時にバラ積からパレット積に切り替えたことにより、荷役時間を含めたドライバー拘束時間と、荷物のダメージリスクの両方を減少させることが出来た。また、海上輸送への転換は、荷量に応じた海上12ftコンテナとシャーシの柔軟な使い分けを可能とし、繁忙期の輸送能力向上にもつながった。関東~九州の長距離区間のモーダルシフトにより、CO2排出削減量も非常に高い数値となっている。この事例を基に、今後は他方面でのモーダルシフトの拡大を検討していく。

●モーダルシフト優良事業者賞
◎革新的取組み部門①
受賞者:㈱シジシージャパン、㈱ラルズ、㈱フレスタ、原信ナルスオペレーションサービス㈱、全国通運㈱
案件名:共同輸入およびモーダルシフトによるサステナブルな農産品輸送の実現

トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトにより、効率化・省人化と、安定的な供給体制の確立を実現した案件。トラック輸送時に2回(海上コンテナ→トラック→トラック)必要だった積替・中継作業を、モーダルシフトにより、海上コンテナから12ft鉄道コンテナへの1回だけの積替で各社の配送拠点までの直接輸送を可能とし、輸送の効率化を実現した。また、着地の配送拠点に在庫ストック機能を設けることによって、農産物の不作時にも備える安定的な供給体制を整えることが出来た。以上は、ドライバー不足への対応および環境負荷低減にも資することになった。今後はリーファーコンテナを活用することで、比較的貯蔵性に劣る農産品も同様のスキームでの輸送を検討していく。

◎革新的取組み部門②
受賞者:ナイキジャパングループ(合)、佐川グローバルロジスティクス㈱、佐川急便㈱、㈱アッカ・インターナショナル
案件名:千葉県~九州7県間の幹線輸送を貨物鉄道輸送に転換

トラック、鉄道および海上の各輸送モードで輸送されていた貨物を、革新的な手法により鉄道輸送へモーダルシフトした案件。宅配貨物としての輸送であるため、従来は荷主倉庫から集荷後、中継拠点で仕分し、各輸送モードで輸送されていたが、荷主倉庫に31ft鉄道コンテナが直接着車する体制に切り替えて、中継拠点での仕分を不要(ダイレクト輸送)とした。また、荷量が少ない場合に備えて、別にスペースを設けて他の倉庫や他の荷主の貨物も集約できる体制(クロスドック)を整え、高い積載率を維持している。また、これらを支えるためのシステム改修と送り状のイメージ変更を行った。このことにより、従来の輸送方法よりも環境に配慮した輸送を実現することができた。

◎連携・協働部門①
受賞者:味の素㈱ 物流企画部、味の素食品㈱ 川崎工場、F-LINE㈱ 東日本マルチモーダルサービスセンター
案件名:31ftコンテナ、海上トレーラの共同有効活用による川崎~西宮間輸送のモーダルシフト複線化の取り組み

トラック輸送から、鉄道および海上輸送へのモーダルシフト案件。味の素の物流センター(BC)間の輸送において、川崎BCから西宮BC間はすでにモーダルシフト率100%(鉄道・海上輸送)を達成していたが、工場からBCへの輸送においては、味の素食品川崎工場から西宮BC間は、モーダルシフト率が35%(2021年下期)にとどまっていたため、3社は自然災害や物流2024年問題によるトラックドライバー不足等に対する危惧から、いち早く同区間の完全モーダルシフト化を目指した。その達成のため、リードタイムの延長(N+1(翌日)からN+2(翌々日)へ)、システムインターフェースの改修、工場出荷製品の順番変更および積込時間の調整、31ft鉄道コンテナや海上トレーラの増便手配を実施した。運用方法としては、川崎BCと川崎工場を同じエリアとみなし、F-LINEがそのエリア内で輸送計画を調整した。制約の多い海上トレーラは主に川崎BC発で活用し、31ft鉄道コンテナを川崎工場発で優先使用することによって物流波動に対応した。この取り組みにより、両社ともに同区間で鉄道・船舶による完全モーダルシフト化を実現し、CO2排出量も大幅に削減することが出来た。

連携・協働部門②
受賞者:三井化学㈱、丸全昭和運輸㈱、㈱ニヤクコーポレーション、安全運輸㈱
案件名:神奈川県川崎市から福岡県大牟田市のトラック輸送を貨物鉄道輸送に全量転換

トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフト案件。トラック輸送時は、荷主が直接輸送手配を行っていたが、鉄道輸送では管理が広範囲になるため、3PL化を実施し、4社にて連携・協働した結果、トラックでの長距離輸送のドライバー運転時間を大幅に減らし、持続可能な輸送スキームを構築することに成功した。また、リードタイムが延びるため、トラック輸送時に使用していたISOコンテナを増備して対応した。加えて、危険物・劇物であるため、乗務員の訓練や安全教育を入念に行った。

◎継続拡大部門
受賞者:山九㈱
案件名:山九モーダルシフトPJによる鉄道輸送・海上輸送利用の拡大推進

山九は2018年よりモーダルシフトPJ(プロジェクト)を発足させ、新規および既存顧客に対してモーダルシフトを提案、営業を実施し、環境負荷軽減に向けた取り組みを継続してきている。物流2024年問題により、さらなるモーダルシフト化への荷主企業の意識向上にもつながってきており、新規の提案要請は増加している。

◎環境負荷低減部門
該当なし

◎効率化・省人化部門①
受賞者:センコー㈱
案件名:「徳島港⇒東京港」を基点としたモーダルシフト配送

トラック輸送から、海上輸送へのモーダルシフト案件。物流2024年問題によるドライバー不足から、従来のトラックのみでは輸送が困難になってきたことから、無人航走のシャーシを利用した海上輸送ルートを新たに提案することで、物流の停滞を防ぎ、効率化・省人化を実現した。海上輸送を利用したことでドライバーの運転時間が最小限となり、特に関東エリアは下船後1時間以内に納品が可能となったことで、実施前後での運転時間削減率は77%と、大きな効率化・省人化を達成した。

効率化・省人化部門②
受賞者:富士フイルムロジスティックス㈱、鈴与㈱、鈴与カーゴネット㈱
案件名:福岡県福岡市博多区→神奈川県南足柄市のフェリー輸送利用を踏まえた大阪府大阪市港区→福岡県福岡市博多区の大型車陸上輸送をトレーラフェリー輸送へ切替

トラック輸送から、海上輸送へのモーダルシフト案件。CO2削減や物流2024年問題への対応を迫られる中、大型車によるトラック輸送(一部鉄道輸送)からトレーラによるフェリー輸送への転換を実施した。2022年3月から開始した福岡市博多区から南足柄市間のフェリー輸送が軌道に乗ったことを踏まえ、大阪市港区から福岡市博多区間の輸送についても、今回、フェリー輸送へ転換したもの。転換に際しては、車両大型化による出荷ロットの調整に加え、出庫時間の前倒しや入庫時間の後ろ倒し等も必要となり、出荷・納品先の理解を得ることに困難が伴ったが、CO2やドライバー運転時間の削減効果はもとより、車両大型化による必要手配車両数や、入出庫作業時間の減少といった転換によるメリットが非常に多く、最終的に理解を得ることに成功した。ドライバー不足等への対応が可能となり、安定した輸送手段の確保を実現した。特に運転時間については年間3,444時間の削減となり、削減効果は60%と大きな効果を生み出すことに成功した。今後は首都圏への輸送についてもモーダルシフトを検討していく。

●モーダルシフト取組み奨励賞
受賞者:㈱OCC、㈱サンキュウ・トランスポート・東京、㈱商船三井さんふらわあ、鐵伸運輸㈱
案件名:栃木県河内郡上三川町⇔福岡県北九州市小倉北区向けの大型ケーブルドラム輸送(特殊車両)を陸上輸送から海上輸送への転換(ラウンド輸送)

受賞者:佐川急便㈱
案件名:自社トラックと貨物鉄道輸送をコラボした飛脚JR貨物コンテナ便

受賞者:シーピー化成㈱、佐川急便㈱
案件名:岡山県~福島県のトラック輸送を貨物鉄道輸送に一部転換

受賞者:タカラ化工㈱、鈴与㈱、鈴与カーゴネット㈱
案件名:滋賀県湖南市→福岡県鞍手郡鞍手町の大型車陸上輸送をトレーラフェリー輸送へ一部切替

受賞者:チタン工業㈱、鈴与㈱、鈴与カーゴネット㈱
案件名:山口県宇部市→関西・関東へ大型車陸上輸送をトレーラーフェリー輸送へ切替

受賞者:日本通運㈱
案件名:神奈川県~福岡県の大型装置の拠点間輸送を内航船輸送に転換

受賞者:日本ペイント・オートモーティブコーティングス㈱、日本通運㈱
案件名:愛知県~福岡県の自動車用塗料の鉄道モーダルシフト(ISOタンク利用)

受賞者:YKK AP㈱ 生産本部 九州製造所、日本通運㈱
案件名:アルミサッシ製品の熊本県八代市~埼玉県加須市向け海上輸送

●モーダルシフト取組み特別賞
該当なし