(公社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は4月26日、2023年度に実施した「2023年度物流コスト調査報告書」の概要版を公開した。

JILSは、通商産業省(現 経済産業省)の「物流コスト算定活用マニュアル」に準拠して物流コストの実態把握を行うと共に、文献調査や国際比較等、多面的な調査により日本の物流コストに関する総合的な基礎データを蓄積することを目的として物流コスト調査を毎年実施している。

●調査結果の概要
2023年度調査(有効回答208社)の売上高物流コスト比率は5.00%(全業種平均)で、前年度からとなった。前年度からの減少幅は0.31ポイント。

近年、物流事業者からの値上げ要請等を理由に売上高物流コスト比率は、長期的に上昇傾向にあると考えられる。実際に、前々回の2021年度調査においては過去20年間の調査と比較しても最も高い、5.70%を記録した。一方、2022年度調査および2023年度調査では2年連続で下降し、揺り戻しとも見える結果となった。

今回の売上高物流コスト比率の下降は、「ミクロ物流コストなどの動向(概要版報告書5ページ)」での指数による分析から、物流単価は上昇傾向にあるものの、それ以上に物流量に対する売上高(販売単価)の伸びが大きいことがわかっている。

実際、2022年4月の消費者物価指数の発表以降、日本経済はインフレに転じたとも言われている。昨今のサプライチェーンの混乱や円安等の状況から仕入価格や製造原価、販売管理費の上昇分が、価格に転嫁され始めていることが荷主企業の売上高に影響しているとみられる。

その一方で、荷主企業の売上高ほど物流コストが伸びていないという調査結果からは、物価上昇の速度と比較して、物流事業者から荷主企業への価格転嫁が追い付いていない可能性がみられる。

●概要版:2023年度物流コスト調査報告書
https://www1.logistics.or.jp/Portals/0/resources/Cost/cost_report_20240426.pdf

●これまでの物流コスト調査報告書・物流コスト関連情報
https://www1.logistics.or.jp/data/cost.html

●報告書(詳細版)の購入
同報告書の詳細版は有名書店・政府刊行物センター等で5月中旬頃に販売される予定としている。