(一社)日本物流団体連合会(物流連)は4月4日、東京都千代田区の学士会館で、第24回「物流連懇談会」を開催した。

同懇談会は、物流業界の幅広い会員の参加を得て、会員への情報提供、会員相互の情報交換・交流のために行われているもの。今回は、(一社)日本船主協会 会長・川崎汽船㈱ 代表取締役社長の明珍幸一氏から「海運業界の競争力強化~低・脱炭素化社会の実現と海事人材の確保について~」と題する講演が行われ、会員企業の代表者や幹部など59名が参加した。

真貝会長の挨拶

懇談風景

初めに、日本船主協会の紹介がなされた後、外航海運の役割と現状、日本商船隊の国際競争力の強化に向けて、川崎汽船グループの低・脱炭素化、社会の低・脱炭素化、優秀な海事人材の確保育成というテーマに沿って講演が進めた。

日本の経済と国民生活を支える海運は、日本企業の海外進出やサプライチェーンを下支えしながら海事クラスターの中心的存在として地域経済に貢献しており、世界の海上輸送量が増え続ける中、今後も使命を果たしていくためには、日本商船隊の国際競争力強化が必要との認識を示した。

講演する明珍社長

講演会風景

外航海運が取り組むべき課題として、海運税制のイコールフィッティング、GX(Green Transformation)の推進、DX(Digital Transformation)の推進、海事人材の確保・育成を挙げ、GXについては、地球環境保全への対応が求められている現在、その実現には業界一丸での取り組みに加えて、国によるさらなる後押しや業界の枠を超えた連携が必要と訴えた。また、DXの推進により、安全運航の強化、自動・自律運航の他、船上の業務負荷減少等にも取り組むと述べ、さらに川崎汽船グループの新技術による自社の低・脱炭素化の取り組みの一例として、自動カイトシステム”Seawing”を紹介した。

社会の低・脱炭素化については、2050年のネットゼロ実現に向けた現実解として、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素の回収・貯留)事業の意義と需要について触れ、川崎汽船の液化CO2輸送事業の取り組み等を紹介した。優秀な海事人材の確保育成に向けては、より多くの方に海運を知ってもらうための広報活動を展開しているとした。

最後に、パナマ運河の状況や紅海情勢に触れられ、海運がその使命を果たすには、世界の海における航行の自由と安全の確保が大前提であり、世界のシーレーン/チョークポイントの安定が必要不可欠として講演を終えた。講演後の質問についても、明珍社長は詳細かつ丁寧な回答を行い、盛況のうちに物流連懇談会を終えた。