三井倉庫㈱、㈱日立製作所、㈱三井E&Sの3社は9月27日、令和5年度 港湾技術開発制度における技術開発業務(※1)を国土交通省より受託(※2)し、港湾におけるAIによるコンテナ配置計画や荷役(※3)作業手順計画を基にターミナル運営を効率化する今回の技術開発において、三井倉庫のコンテナターミナル運営のノウハウを活用しながらコンテナ貨物の特性等のデータを基に日立が保有するAIでコンテナの搬出日予測、コンテナ配置計画と荷役作業手順計画を立案し、三井E&Sが開発する荷役シミュレータを用いてそれらの計画の効率性を検証・評価すると発表した。3社は今回の技術開発を2025年までに行う予定で、その後、国内の港湾を中心に実用化と導入支援を進めていくとしている。

最適化技術の概念図

※1:港湾における生産性向上と労働環境改善に向けた技術開発を推進!~「港湾技術開発制度」の新設と公募の開始~
https://www.mlit.go.jp/report/press/port02_hh_000168.html

※2:「港湾技術開発制度」で6件の技術開発課題を新規採択
https://www.mlit.go.jp/report/press/port02_hh_000193.html

※3:荷役:貨物を積んだり降ろしたりすること

日本の国際貿易量のうち海上貨物輸送は99.5%(トン(t)ベース、2021年時点)を占めており、海上輸送と陸上輸送の結節点である港湾は、貿易および経済活動において重要な社会インフラの1つ。日本の港湾では本船からコンテナを荷揚げして配置する際、限りある用地面積を有効活用するため、コンテナの積段数が高くなる傾向にある。一般的にコンテナは荷繰り(※4)回数が少なくなるよう、搬出されるタイミングが早いものをなるべく上段に、搬出までに時間がかかると予測されるものは下段に配置される。

現在、港湾におけるコンテナの配置計画や荷役作業手順計画は熟練の計画立案者の経験と知見によって行われているが、増大する貨物量と刻々と変化するコンテナ貨物情報による計画立案の複雑化への対応として、デジタル技術を活用した作業計画立案のさらなる高度化が求められている。

※4:荷繰り:あるコンテナの搬出入のため、そのコンテナの上段にあるコンテナ等を別の場所に移動すること

●今回の技術開発概要
(1)TOS(※5)の各種データから、AIを活用してコンテナの搬出日を予測し、それに基づいた最適な配置計画と作業手順計画を立案する。

(2)立案された計画を基に、並行して開発する荷役シミュレータで仮想空間での荷役作業を行い、荷繰り回数や外来トレーラーの待機時間の削減量等、効率性の定量評価を行う。さらに、評価に基づいてAIのパラメータを変更し、計画の精度を高めていくとしている。

荷役シミュレータ画面イメージ

※5:TOS(Terminal Operation System):港湾における貨物や荷役作業の管理のための情報システムの総称

●各社の役割分担
日立製作所はLumada(※6)ソリューションを生かして、今回の技術開発ではコンテナの搬出日予測、コンテナ配置計画、荷役作業手順計画を立案するための複数のAIと数理最適化技術の提供、および立案した計画と荷役シミュレータを連係するソフトウェアの開発を行うほか、今回の技術開発の代表を務める。

三井E&Sは国内TOSマーケットでトップシェアを持つCTMSR(※7)や自動化コンテナターミナルを構成する製品、技術を保有しており、今回の技術開発ではコンテナ荷役に関するTOS機能改修および荷役シミュレーションに関連する業務を行う。

三井倉庫は国内主要港でコンテナターミナルの運営ノウハウを長年培ってきており、プランナーの熟練した経験と知見、実証現場および本技術開発に資するデータを蓄積・提供する。

※6:Lumada:顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称
https://www.hitachi.co.jp/products/it/lumada/

※7:CTMS(Container Terminal Management System):三井E&Sが提供するTOSの商品名。「CTMS」は㈱三井E&Sの日本における登録商標。