(一社)日本物流団体連合会(物流連)は9月18日、令和8年度第1回国際業務委員会(委員長:日本郵船㈱ 常務執行役員 阿曽智孝氏)を千代田区の全日通霞が関ビルで開催した。同委員会は、物流事業の海外進出に関する課題について官民連携して検討する会合で、会員企業や国土交通省から28名が参加した(うち14名がWEB参加)。

委員会は2部構成で開催され、第1部はKPMGコンサルティング㈱の滋野井公季氏から、「中東情勢の現状と見通し―変貌する中東情勢の読み解き方」と題して講演が行われた。講演会にはWEB聴講者を含め46名が参加した。

講演されたKPMGコンサルティングの滋野井氏

講演では、中東情勢を理解する上では、宗派や親米・反米といった単純な区分ではなく、各国・各勢力の利害関係や、軍事・経済・外交面での能力を踏まえて捉えることが重要であるとの説明があり、その上で、現在の地域情勢を読み解く枠組みとして、イスラエル・UAEを中心とする「アブラハム合意の枢軸」、イランを中心とする「抵抗の枢軸」、サウジアラビア・トルコ・パキスタンを中心とする「メッカ合意の枢軸」という3つの構造が示された。また、2023年10月7日以降の情勢や2026年のイラン戦争を通じて、地域の勢力関係が変化していることについて説明があった。特にホルムズ海峡を巡る情勢は、軍事面にとどまらず、原油をはじめとするエネルギー供給や海上輸送、さらには世界経済にも影響を及ぼす重要な要素となっていることが指摘された。今後の情勢を考える視点として「軍事・産業の時計」「政治・財政の時計」「世界経済の時計」という3つの要素が紹介され、軍事面での兵器・弾薬等の生産・備蓄、戦費や財政、国際的な圧力、さらに原油供給や海上輸送、インフレ等の世界経済への影響を総合的に捉えることが重要であり、さらに、今後の中東情勢について、地域協調、管理された競争、大規模な覇権争いという複数のシナリオが示され、当面は緊張状態が長期化・常態化する可能性があるとし、物流の観点からは、ホルムズ海峡だけでなく、紅海のバブ・エル・マンデブ海峡等、国際物流上の重要なチョークポイントについても継続的に情勢を把握する必要があるとの指摘があった。また、地政学的リスクが顕在化した場合に備え、代替港湾・輸送ルートの確保、輸送日数、燃油価格、運賃・保険料等への影響も想定し、サプライチェーン全体の強靱化を図ることの重要性など詳細な説明があり、講演会は終了した。

第2部の委員会では、冒頭、阿曽委員長より就任後初めてとなる挨拶で、国際物流の重要性が一層高まる中、第1部の講演でも示されたように、地政学リスクが高まっていることについて言及があり、その上で国際業務委員会では、今回のような講演会をはじめ、海外物流に関する各種調査や情報提供を行っていることから、こうした活動を通じて国際物流に関する情報共有や意見交換を進め、委員相互の知見の向上につなげていく考えが示された。

委員会で挨拶をする阿曽委員長

次に、国土交通省 物流・自動車局 国際物流室の小柳美枝子室長から「最近の国土交通省における国際物流政策の取組みについて」説明があった。国土交通省での主な取り組みとして、①ASEAN等におけるISO規格を活用したコールドチェーン物流の普及、②日中韓におけるリターナブル物流容器の普及、③地政学リスク等を踏まえた国際物流の多元化・強靱化に向けた官民連携について紹介があり、コールドチェーン物流については、ASEAN各国におけるワークショップや実証事業等を通じた普及促進、リターナブル物流容器については、実証事業やセミナーを通じた物流効率化等の検討が進められていることが説明された。また、国際物流の多元化・強靱化については、地政学リスクや国際情勢の変化を踏まえ、代替輸送ルートの確保、複合輸送、貿易手続きのデジタル化等をテーマとした官民連携の取り組みが進められていることが説明された。

最近の取り組みを発表する国土交通省の小柳氏

最後に、事務局から令和8年度上期活動報告と下期活動計画についての審議が行われ、原案通り承認された。