ゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーションは4月6日、「医薬品サプライチェーンに関するグローバル調査」の結果を発表した。

同調査は製薬業界におけるサプライチェーンの安定性、同業界の責任と信頼度の測定、サプライチェーンの可視性と透明性向上に向けたニーズ特定を目的に実施された。調査によると、患者は自身が手にした医薬品や、医薬品の製造・流通・処方・調剤を行う事業者を含む医薬品サプライチェーンに対して不信感を抱いている点が判明。サプライチェーンが改善されず、問題のある(品質不良、不適切な温度管理等)医薬品によってより多くの病気を懸念しているとの回答は43%となった。

●「医薬品サプライチェーンに関するグローバル調査」概要
調査企画:ゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーション
調査期間:2021年4月~5月
調査実施:Azure Knowledge Corporation(米調査会社)
調査対象:医療上の健康問題を抱え、薬局で処方された薬や治療を必要とする成人患者、および医薬品・バイオ医薬品のサプライチェーンにおいて事業を展開している医療機関、製造業、医薬品小売業、運輸・物流業の経営陣3,500人以上
調査方法:オンライン調査
調査地域:アジア太平洋(日本含む)、欧州、中南米、北米

調査に回答した患者の4人に3人が、自分の症状や病気に薬が効かないことを「やや心配」「とても心配」としており、薬の有効性と安全性が最重要事項と判明したほか、10人中7人が薬の受け渡しに関して以下の不安を抱いている点を報告している。
・ラベルの表示ミスによる不適切な投与、およびそれによって引き起こされる可能性のある危害
・盗難、汚染や腐敗、期限切れ、偽造された医薬品
・輸送中の不適切な取り扱い、保管によってダメージを受けたり、効能が低下した可能性のある医薬品

患者はサプライチェーンで問題が生じた場合、薬の品質や効能が損なわれる恐れがあると認識しており、処方された薬が安全、かつ本物であるという保証をより強く求めている。薬が偽造や改ざんされていないこと、保管温度に敏感な薬の適切な取り扱いを確認できることが「やや重要」「非常に重要」との回答は10人中9人を占めた。

また、医薬品製造メーカーに対し、患者のうち81%は薬がどのように製造/処理されているのか、82%は輸送/保管についての情報開示を求めていることが明らかになったほか、薬の原産国や薬そのものの地域規格等、薬の成分の供給元を確認することも重要との回答は80%を占めた。薬の製造元が環境、動物福祉、人間社会、公衆衛生を保護する技術に則り、持続可能であるかどうかを知りたいとの回答は79%だった。

一方、患者を保護し、患者が受け取った医薬品の安全性と有効性を確保するために、政府/規制機関と製薬会社がより強固な協力体制を築く必要があるとの回答は患者の10人中8人以上を占めた。また、患者および製薬業界経営陣の40%以上が、偽造・盗難・汚染された医薬品の撲滅に関して最も責任を負っているのは規制当局、製薬会社、製造メーカーと回答している。信頼できる安全規定を順守する責任を負っているのは、医薬品の製造、調剤、投与に携わる担当者だが、患者の57%は病院がその責任の矢面に立たされていると感じている、としている。

トレーサビリティと透明性確保の義務化に対応する準備ができているとの認識を示した製薬業界経営陣は84%で、すでに位置情報サービス技術を導入しているか、今後1年以内に導入する予定との回答は3/4に達した。この動きは、生産ワークフローおよび薬の追跡の改善だけでなく、シュリンク(※1)や改ざんを削減し、患者が望む可視化と情報提供を実現する。

※1:シュリンク(Shrink/Retail-Shrinkage):万引き、業者の不正、従業員の盗難、管理ミス等の事情により、在庫が失われること

製薬業界経営陣が直面している最大の課題は、患者のニーズを満たすために十分な量の医薬品を製造し、供給できるようにすることとしている。業界経営陣は規制の遅れに加え生産制限、流通・保管の問題、出荷能力の制約、輸送の遅れに対処しており、結果として今後1年以内に医薬品製造およびサプライチェーンの監視ツールへの投資を増やすことを計画しているとの回答が92%を占めた。

かつて薬の購入や服用に関して問題に直面したことがあるとの回答は患者の3/4以上にのぼった。世代別ではベビーブーム世代[55~65 歳以上]の61%に対し、ミレニアル世代[24~39歳]が82%とより多くの問題を報告。ミレニアル世代はミスに厳しく、自分のニーズを満たす薬局を見つけるために薬局を変える可能性はベビーブーム世代の2倍に達する。また、全患者の70%が過去に良くない経験があったことを理由に、処方する医師、薬局、薬のいずれかを変更したことがあると回答している。患者が経験した問題のうち、上位5項目は次の通り。
(1)必要な薬が手に入らない、または在庫がない(32%)
(2)必要な分量が一時的に在庫切れで、一部しか受け取れなかった(29%)
(3)他の場所で同じ商品をより安く見つけた(27%)
(4)必要な時に受け取れなかった(22%)
(5)重篤な副作用を経験した(21%)

患者の不安の大半は、薬が手頃な価格であること(76%)と薬の不足(73%)に集中している一方、安全性と有効性について医薬品管理者に責任がないわけではなく、メールオーダー(※2)を含むすべての薬局が調剤された薬を監視する必要があると回答した患者は85%に達した。

※2:メールオーダー:患者と直接対面することなく電子的に処方箋応需が行われ、郵送・後日電話にて対応することができる仕組み