アスクル㈱は5月23日、東日本基幹センター「ASKUL関東DC(ディストリビューションセンター)」の今年6月稼働予定の開所式を開催した。また、同日、埼玉県上尾市およびアレス・マネジメント・コーポレーション(ARES)の一部である日本GLP㈱の3者間で「災害時の物資の供給及び一時保管等に関する協定」を締結した。

開所式テープカットの様子。左から、日本GLP㈱ 代表取締役社長の帖佐義之氏、アスクル㈱ 代表取締役社長 CEOの吉岡晃氏、埼玉県上尾市 市長の畠山稔氏、トーヨーカネツ㈱ 代表取締役社長の大和田能史氏

●関東DCの特徴
(1)ロングテール商品を集約し、配送費比率の低減を実現
関東DCは、同社の中期的な物流戦略において重要なミッションを担う東日本の基幹センターで、11拠点目の物流センター。アスクルの物流拠点としては ASKUL関西DCに次ぐ2番目の賃借面積となる大規模物流センターで、事業所向けEC「ASKUL」と一般消費者向けEC「LOHACO」双方の物流を担う。ロングテール商品を本センターに集約することで様々な商品を1箱で届けることが可能で、箱単価を向上させることで配送費比率の低減を図る。関東DCの稼働により、高頻度商品とロングテール商品の翌日配送を両立し、現在AVC関西から出荷しているロングテール商品の東日本出荷分を本センターに切り替えることで、東日本の顧客への輸配送距離を短縮し、ロングテール商品も“明日来る”サービスの実現を目指す。

(2)高度自動化、高効率化を実現
アスクルは人手不足が進む中でも高い生産効率を実現するため、従来センターで培った知見や最新技術を用いた物流設備を導入し高度自動化を進めている。関東DCは従来センターのコンベヤ設備に加え、近年国内でも導入が進んでいるAGV(※1)を積極的に導入することで、さらなる高度自動化、高効率化を実現する。

※1:Automatic Guided Vehicleの略。自動搬送ロボット

◎関東DCで導入され新物流設備
①アスクル初の搬送コンベヤの代わりにAGV「Table-sorting system」を160台導入
同社では初めてトーヨーカネツ㈱(Zhejiang Libiao Robotics社製)の自動仕分けAGV「Table-sorting system」を高頻度品のデジタルピッキングエリアで搬送コンベヤの代わりに160台導入した。搬送コンベヤという固定ではない設備を導入することで、フレキシビリティを高めている。

「Table-sorting system」は高い柔軟性(物量に合わせて台数・面積を変化させ処理能力増減可等)と機動力(故障時は当該AGVを取り除けば運用可等)があり、今後使用しながら導入台数拡大や機能向上を進化させていく。

「Table-sorting system」を160台導入

②GTPソリューション「PopPick」Ver.1.3を444台導入
㈱ギークプラスの GTP(※2)ソリューション「PopPick」最新AGVのVer.1.3を444台導入。ステーション数は28台設置している。「PopPick」Ver.1.3の導入により、入荷の効率改善、さらなる保管と出荷効率向上を目指す。

※2:Goods To Personの略。ピッキングを担当する作業員のいる場所まで商品を運び、定点作業を実現する物流ソリューション

「PopPick」Ver.1.3を444台導入

③アスクル初の入荷自動搬送AGV「Carry Bee Dragon3」導入
入荷商品を保管場所まで搬送する工程を自動化するため、今回初めて愛知機械テクノシステム㈱の6輪台車搬送AGV「Carry Bee Dragon3」を12台導入予定。6輪台車の下面に潜り込み台車前端をリフトアップし搬送が可能で、本設備を導入することで入荷場から保管場所まで何往復もの移動が不要となり、作業負担の低減につながる。

「Carry Bee Dragon3」導入

④日本初導入のフォーク付AMRで複数階層の工程間搬送を自動化
プラスオートメーション㈱の工程間搬送ロボット「LUC-L1500V」(※3)1台を導入し、今年6月からPoCを実施予定。同AMRはエレベータに乗り込み他階までの搬送が可能で、入荷や保管等の工程間搬送においてパレットを無人で搬送することで、従来ハンドリフトを使用した作業の効率化を実現する。同機構の導入は国内では初の試みとしている。

※3:LUC-L1500Vは高精度の3Dビジョンセンサにより無人搬送を行う

日本初導入のフォーク付AMR「LUC-L1500V」

(3)駅や高速ICに近くアクセスしやすい「好立地」、早期復旧が可能な免震構造、健康に働ける「環境」
関東DCは上尾駅から徒歩圏であることに加え圏央道、東北自動車道、首都高の3つの高速道路へ容易にアクセスが可能であり、関東エリアから東北エリアまでを網羅できる優れた立地にある。また、同センターは早期復旧が可能な免震構造のほか、空調整備として暑さ・寒さ対策にスポットエアコンを多数導入しており、労働環境に配慮した施設設計をしている。さらに、働くスタッフへ昼食を無償で提供し、健やかに働ける環境づくりに努める。

(4)使用済みクリアホルダ由来の再生材を活用した折りたたみコンテナを初めて導入
アスクルでは2022年4月より使用済みクリアホルダを再資源化する「アスクル資源循環プラットフォーム」(※4)の取り組みを始動し、クリアホルダ由来の再生材を活用した、様々なアスクルオリジナル商品やナショナルブランド商品での採用が進んでいる。関東DCではセンター内で使用する折りたたみコンテナの一部に、このクリアホルダ由来の再生材を約11%配合したものを導入している。まずは11,500個から始め、導入率を増やしていく予定。

※4:詳細は右URLを要参照。https://www.askul.co.jp/kaisya/shigen/

使用済みクリアホルダ由来の再生材を活用した折りたたみコンテナを初めて導入

●災害時協定締結の背景
アスクルは2017年の物流センター火災の後、改めて万全な防災体制を整えることに加え、地域における物流センターの在り方を再検討した。“地元の皆様に安全・安心な物流センターとして信頼いただき、地域に対して貢献していきたい”という想いを新たに、各物流拠点における自治体との災害時協定を順次締結してきた。

同社が埼玉県上尾市内で運営する関東DCには飲料・食品や日用品等の生活必需品を潤沢に在庫していることや、災害時に市外から集まる支援物資の一時的な物資保管に活用できることから同協定の締結に至った。災害発生時または発生する恐れがある場合は上尾市の要請に応じ、生活必需品等の物資の提供と物資の一時保管をすることで地域住民のライフラインの役割を果たしていくとしている。

「災害時の物資の供給及び一時保管等に関する協定」締結式の記念写真。左から、日本GLP帖佐社長、上尾市畠山市長、アスクル吉岡社長

●防災協定概要
名称:災害時の物資の供給及び一時保管等に関する協定
締結者:上尾市、日本GLP、アスクル
内容:大規模災害時、および発生するおそれがある場合における物資の提供と物資の一時保管
対象商品:飲料・食品、生活用品、衛生用品等

●施設概要
名称:ASKUL関東DC8ディストリビューションセンター)
所在地:埼玉県上尾市愛宕3丁目1番22号
稼動開始:2025年6月(予定)
敷地面積:4万5,922.36㎡
延床面積:10万4,951.51㎡
建物階数:5階建・免震構造

ASKUL関東DC