㈱IHIと野村不動産㈱は3月21日、現在建設を進めている大規模物流施設「Landport横浜杉田」(神奈川県横浜市)で物流業界における労働力不足の解消とさらなる物流効率化の実現を目指し、立体自動倉庫の「シェアリングサービス」および自動化機器の「レンタルサービス」導入を決定した。

2024年問題に直面する物流業界では、ドライバーなど労働力不足が進む一方で、EC拡大により業務荷物量は増加傾向にある中、物流業務支援のための自動化機器の導入を検討する企業は増加しているが、自動化機器の購入費用負担が大きい点や導入までに時間がかかる点等から導入実現には現状多くの課題が残っている。そうした課題解決に向けて、同施設では立体自動倉庫の「シェアリングサービス」および自動化機器の「レンタルサービス」による、柔軟な物流業務提案を行い、さらなる物流効率化の実現を目指すとしている。

「Landport横浜杉田」完成イメージ

●立体自動倉庫のシェアリングサービス
同施設の3・4階の一部に設けた約12mの吹き抜け空間に、最大4,020パレット(荷姿:幅1.2m×奥行1.2m×高さ1.6m)の保管が可能な「立体自動倉庫」を設置。立体自動倉庫は㈱IHI物流産業システム(ILM)が提供するもので、保管容量の効率化および入出庫から保管までの工程を自動化することが可能。さらに同施設では、立体自動倉庫を複数の入居テナントが共同利用できる「シェアリングサービス」を提供する。荷量に応じて任意の期間でパレット単位の予約ができ、柔軟な入出庫・保管が可能となる。各テナントが共通のシステム上で、空き情報の確認や事前予約、実績の照会等が可能な仕組みとしている。なお、立体自動倉庫専用の非常用発電機の設置を想定しており、停電時においても約8時間の電力供給を行い物流業務が滞ることを防ぐとしている。

立体自動倉庫シェアリングサービスの利用イメージ

●シェアリングサービスのメリット
①導入費用・時間の削減
・自動化設備導入の初期費用や固定費がかからず、新たな投資財源の確保が可能になる。
・従量課金制のため、使いたいときに必要な分だけを利用することが可能になる。
・自社で購入する場合と比べて導入に向けたリードタイムが短縮可能になる。

②固定賃借面積の合理化
・季節波動により発生する荷量の変動部分についてシェアリングを活用することで、固定賃借面積の削減に繋がる。

季節波動による年間の賃借面積の推移(事例)IHI調べ

●「Techrum(テクラム)」および参画するILMによる自動化機器のレンタルサービス
野村不動産では、自動化機器の効率的な活用により物流オペレーションの最適化を行うためのプログラム「Techrum(テクラム)」を2021年4月に開始した。今回、同施設では、「Techrum」に参画しているパートナー企業の持つ自動化機器等を、テナントに対してレンタルサービスで提供。ピッキングや荷物の積み下ろし等を支援するマテハン(MH)ロボット及びWMS(倉庫管理システム)を必要に応じてレンタル可能とすることにより、庫内作業の省人化・効率化を実現し、労働力不足問題の解決を目指すとしている。

なお、「Techrum」へILMが新たに参画し、ILMが提供するMHロボット及びWMSも下図の通り利用可能となる。立体自動倉庫のシェアリングサービスと同様、設備準備のための初期費用や固定費がかからずに最新の自動化システムの導入を進めることが可能としている。

ILMおよび野村不動産が提供するマテハンおよび情報管理システムのレンタルサービスの概要

●物件概要
物件名:Landport横浜杉田
所在地:神奈川県横浜市金沢区昭和町3174
交通アクセス:首都高速湾岸線「杉田」出入口0.68㎞、JR根岸線新杉田駅徒歩11分、横浜シーサイドライン南部市場駅徒歩4分
敷地面積:7万1,034.94㎡(2万1,488.06坪)
延床面積:16万3,483.78㎡(4万9,453.84坪)
構造・規模:柱RC梁S造、地上4階建・免震、ダブルランプ型
着工:2023年6月15日
竣工:2025年3月末(予定)