経済産業省・国土交通省が主導する「フィジカルインターネット(PI)実現会議」(※1)内の「化学品ワーキンググループ(WG)」(※2)は3月24日、複数荷主による共同鉄道輸送の実現可能性を検証した結果、同一コンテナを用いた往復の連続運行が可能であることを確認したと発表した。併せて、モーダルシフトによりCO2排出量57%削減等の顕著な効果を確認することができたとしている。
化学品WGでは、「物流の2024年問題」を象徴する物流の輸送・保管能力不足等、個社では解決が困難な物流課題に対して、同WG参加企業と共に化学業界全体で取り組んでいる。今回、同WG内の三菱ケミカル、東ソー、三井化学、JR貨物、日本通運が、モーダルシフトによる化学品の輸送能力向上のため、東海・中国地区における鉄道輸送による共同物流実現に向けた実証実験を、2025年8月から2026年1月にかけて、愛知県名古屋市~広島県広島市・大竹市の貨物駅を中継地点として実施した。

●実証実験の概要
実施期間:2025年8月~2026年1月
取り組み概要:
◇単発トライアル:作業面・運用面の課題確認のため、各社の各輸送ルートを単独運行した。
◇ラウンドトライアル:同一コンテナを用いて各社の輸送ルートを連続で往復運行した。
◇机上検証:実務への織り込みを想定した業務フローや代替輸送への切替を含む判断基準の作成、過去実績から輸送カレンダーを作成し、最適な輸送スケジュールを確認した。
●実証実験の成果と課題
(1)化学品業界で前例のない、複数荷主・複数物流事業者間での共同鉄道輸送の実現可能性の検証
荷主3社で同一コンテナを利用して往復輸送を連続運行できることが確認できた。
(2)鉄道輸送によるモーダルシフト効果の定量的評価

(3)31フィート(ft)コンテナを使用した共同物流の標準スキーム構築に向けた課題抽出
実務への落とし込みを見据えて、実地輸送と机上検証を組み合わせ実施することで、輸送遅延等のイレギュラー対応も想定した標準的なスキームを構築できた。一方、これらスキームの実装に向けてはいくつかの課題があることも明らかになった。
①31ftコンテナで貨物を輸送する場合、使用できる貨物駅の立地制約によりドレージ距離(大型トレーラによる貨物駅から納入先までの陸上輸送)が長くなってしまい、鉄道輸送のメリット(定量的効果)を十分に受けることができなかった。したがって、31ftコンテナを取り扱える貨物駅を基点としたスキーム作りが課題となる。
②汎用の12ftコンテナと異なり、31ftコンテナは私有の位置づけであるため、往復での使用が前提となっている。コンテナの稼働率を高く保つためには、往復の安定した貨物の確保が必須条件になる。この枠組み作りが課題となる。適当な貨物を探すことに加えて、貨物量の平準化や物流条件の緩和など荷主側における複合的な取り組みが課題となる。
●今後の予定
上記に掲げた2つの課題に対する取り組みとして、以下の検討を進める予定。
①31ftコンテナの取り扱いが可能な貨物駅が限定されているため、20ftコンテナの選択肢を増やしてスキームの検討を続ける。
②業界内外に拘らず、各種マッチングサービス等を通じて復路貨物の確保を進めていく。
※1:フィジカルインターネット実現会議
日本におけるフィジカルインターネットの実現に向けたロードマップを策定することを目的に、2021年10月に経済産業省
と国土交通省によって設置された組織。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/physical_internet/index.html
※2:化学品ワーキンググループ
座長:流通経済大学矢野裕児教授/事務局:三菱ケミカル、三井化学、東ソー、東レ
荷主事業者、物流事業者を中心とする参加87団体(86企業・1大学、2026年2月末時点)、(一社)日本化学工業協会、石油化学工業協会、経済産業省・国土交通省の関連各部署等が参画。
2023年12月20日発表:化学品に関する物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/jk_pdf/28.pdf

