根室交通㈱、くしろバス㈱、ヤマト運輸㈱は6月2日より、根室交通とくしろバスが根室―釧路間(釧路線)で共同運行する都市間バス「ねむろ号」を活用して、ヤマト運輸の「宅急便」を輸送する「客貨混載」の本格運行を開始した。

客貨混載の現場取り組みの様子

過疎地域における交通・物流インフラの維持が課題となる中、業種を越えて各社の経営資源を活用することで、持続可能な地域社会への貢献を目指す。

●客貨混載の概要
(1)輸送の流れ:
・ヤマト運輸釧路西営業所(釧路市)に到着した厚岸郡厚岸町行きの荷物を、ヤマト運輸のセールスドライバーがくしろバス本社(釧路市)まで輸送
・ねむろ号のトランクルームに荷物を積み込み、根室交通のドライバーが厚岸郡厚岸町まで輸送
・ヤマト運輸厚岸営業所(厚岸郡厚岸町)と、ねむろ号の停留所「茶内」(厚岸郡浜中町)でヤマト運輸のセールスドライバーに荷物を引き渡し

(2)メリット
自治体:地域住民の生活にとって重要な交通インフラの維持
根室交通・くしろバス:都市間バスの維持存続に向けた安定的で新たな収入源の確保
ヤマト運輸:安定的な輸送力の確保、一部荷物の配送リードタイム短縮、温室効果ガス排出量の削減

(3)特長
・バスの運行ルートに近いヤマト運輸の営業所にバスが立ち寄るため、セールスドライバーとの時間調整が不要で、バスの運行ダイヤへの影響も抑制
・バスの大容量トランクルームを貸切利用するため、複数種類(常温・冷蔵・冷凍・お買い物便)のコンテナを効率的に積載可能

(4)開始日:2025年6月2日(月) ※2025年4月1日(火)から実証運行中

(5)対象路線:「ねむろ号」(根室―釧路線)間 平日便
 くしろバス本社12:40発 ⇒ 根室交通有磯営業所16:00着

●取り組みの背景
北海道の中で最も広大な道東地域では、人口減少により鉄道やバスの減便や廃線が進んでいる。根室―釧路間を結ぶ釧路線も、利用客の減少により路線の存続が困難となっていたが、自動車の運転ができない高齢者層や若年層等の交通弱者にとって、通院等の重要な市民インフラであることから、北海道庁や根室市等からの支援と運行本数の減便によって運行を継続している。

ヤマト運輸は、北海道内で138カ所の拠点を持ち、道内全てのエリアに物流サービスを提供しているが、過疎化や輸送力の低下が進む中、持続可能な物流ネットワークの維持が課題となっている。2025年4月1日から、ねむろ号を活用した客貨混載の実証運行を行い、実用性や安全性を確認した。

●根室市からのコメント
・根室市総合政策室 交通政策主幹 前田純志氏
釧路線は、根室市民の通院等の観点からも重要な交通インフラです。存続に向けた客貨混載の本格運行は、路線の付加価値を生み出すため官民が連携して取り組んできた成果であり、今後も持続可能な公共交通体系の維持に向けた様々な取り組みを進めていきたいと考えています。

●各社代表コメント
・根室交通㈱ 業務部長 松永美佐氏
釧路線は、利用者の減少により2024年10月から運行本数を減便し、運行しております。通院や通学で主に利用されており、運転のできない方々にとっては重要な路線です。この客貨混載で、地域の足と物流がつながり他業種間で交通・物流を支えられることを期待しています。

・くしろバス㈱ 乗合事業部 企画課 課長 原 央氏
利用者の減少や乗務員確保の問題に伴い、バス運行の継続が大きな課題となっています。長期的な取り組みとして継続していくことで、効率化が図られ、運輸業界全体によい流れが生まれることを期待しています。

・ヤマト運輸㈱ 道東主管支店長 齊藤公平氏
根室市さまから、根室市民にとってインフラとなっているバスの運行継続に課題があるとのお話を受け、当社として持続可能な運行に向けて、自治体、根室交通さま、くしろバスさまと連携し、客貨混載の運用を開始しました。今後も市民の皆さまの豊かな社会の実現に貢献してまいります。