SGホールディングス㈱は12月15日、佐川急便㈱、住友商事㈱、AIロボティクスソフトウェアの開発等を行う米国Dexterity, Inc.と、今後の輸送力不足に対応する取り組みの一環として、「AI搭載の荷積みロボット(※1)」の実証実験を行う4社共同プロジェクト(PJ)を発足した。本年12月から1年間の実証実験を行い、早期の実用化を目指すとしている。

トラック内でDexterityが開発したロボットによって荷積みされている様子(米国)

※1:国内の物流業界における人手作業の代替として、個々の荷物をトラックの庫内の最適な位置に積み込めるAI搭載の荷積みロボットの開発について。2023年12月14日、佐川急便調べ。

●実証実験の概要
期間:2023年12月から1年間
場所:①Dexterityの米国施設(AI搭載の荷積みロボットの開発)
   ②SGホールディングス(SGH)グループ「Xフロンティア(※2)」(実オペレーションの検証)
内容:①Dexterity製の荷積みロボット(既存)をベースに、佐川急便が求める輸送品質や処理速度などの要件に合致するAIを搭載した荷積みロボットの開発・テストの実施
   ②開発したAI搭載の荷積みロボットをXフロンティアR内の中継センターに設置し、実際のオペレーションを検証
費用:約6億円

※2:SGHグループの次世代型大規模物流センター。2020年1月に竣工した、佐川急便の大規模な中継センターと、グループ各社が使用する倉庫区画、事務所スペース、一部テナントスペースからなる国内最大級の物流施設。

●背景と課題
物流業界では、労働人口減少による労働力不足や、2030年の輸送力不足(※3)を背景に、トラックドライバーの労働負担の軽減など労働環境の改善が求められている。通常、荷積み作業では、トラックドライバーや積み込み作業者が荷物のサイズ・形状・重さのほか、送り状の備考欄の記載内容や梱包資材の状態等を瞬時に確認して適切に取り扱う。重たい荷物は下に、軽くて壊れ物が入っていそうな荷物は備考欄を確認して手前に荷積みする等の細心の注意を払う必要がある。佐川急便では、将来的な労働力および輸送力不足に対応するため、以前より荷積みロボットの導入を検討してきたが、輸送品質を維持する人手作業の代替が困難であり大きな課題だった。

※3:内閣官房「物流革新緊急パッケージ」より
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/dai3/siryou.pdf
何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足の可能性があると試算されている。

●今回の取り組み
同プロジェクトは、上述のような背景・課題を抱えているSGホールディングス、佐川急便が、米国の物流業界でロボットの導入実績のあるDexterityの技術を生かし、Dexterityの日本代理店を担っており、かつ長年のパートナーである住友商事と協業する座組になっている。Dexterityが佐川急便の荷積み現場に即した形のロボット開発を行い、住友商事の総合力を生かしたシームレスな実証実験を4社共同で行う。

今回の新しい荷積みロボットには、Dexterityが有する米国の物流業界で培ったロボット技術に高度なAI技術を搭載し、佐川急便における物流オペレーションを学習させることで、佐川急便が求める輸送品質の実現を目指すとしている。人手作業の代替として、トラックの庫内に最適な荷積み作業ができるロボットの開発は、国内における物流業界で初めての試み。今回の取り組みにより、トラックドライバーや積み込み作業者の業務負担軽減や荷役作業の省人化を目指すとしている。

●実証実験後の予定
実証実験によって、AI搭載の荷積みロボットが佐川急便の求める輸送品質と人手作業の代替として十分な機能を果たすことが確認でき次第、早期に実用化を進めるとしている。具体的には、今後新設される佐川急便の大規模中継センター等への導入を検討する予定。