日清食品㈱は10月31日、全国農業協同組合連合会(JA全農)と物流および原材料の調達・供給に関する包括的な連携を開始し、物流の2024年問題の解決に向けた取り組みと、米穀など国産農畜産物の安定的な調達・供給に向けた仕組み作りを行うと発表した。
今回、日清食品とJA全農は社会的課題でもある物流クライシスに対応するため、「ラウンド輸送(※1)」を行う2つのスキームを確立した。岩手～茨城間で行う荷主事業者間の「ラウンド輸送」では、茨城で生産した日清食品の製品を岩手へ輸送したトラックを使用して、JA全農の米穀を関東へ輸送する。福岡～山口間で行う調達物流と製品物流を組み合わせた「ラウンド輸送」では、往路でJA全農から日清食品の生産工場に原材料を輸送したトラックを、復路で日清食品製品の輸送に活用する。
また、日清食品のカップライス製品群は需要が年々高まっていることから、製品供給の強化に向けた原材料の確保が課題となっている。そこで原料米調達の安定性を確保するため、JA全農と米穀など国産農畜産物の調達・供給に関する取り組みを強化することで合意した。
日清食品とJA全農は、日本の「食」と「農」を応援し、新しい価値を創出することで、生産者や消費者など「食」と「農」に関わるすべての人々のWell-being実現を目指すとしている。
※1：トラックに積み込んだ貨物を目的地で降ろした後、別の貨物を積み込んで出発地まで戻ることにより、空車回送区間をなくし、トラックの配送効率を高める輸送形態のこと。
●岩手～茨城間の「ラウンド輸送」
岩手にあるJAおよびJA全農の米穀保管倉庫から関東にある精米工場へ米穀をトラックで輸送した後、同じトラックで茨城にある日清食品の生産工場から岩手にある同社の製品倉庫へインスタントラーメンを輸送する。
その荷主事業者間における「ラウンド輸送」により、従来に比べてトラック1台当たりの実車率(※2)が約12％高まる見込みとしている。
●福岡～山口間の「ラウンド輸送」
福岡にあるJA全農の精米工場から山口にある日清食品の生産工場へカップライスの原料米をトラックで輸送した後、山口にある同社の生産工場で作ったインスタントラーメンやカップライスを同じトラックで福岡にある同社の製品倉庫へ輸送する。
その調達物流と製品物流を組み合わせた「ラウンド輸送」は、荷降ろし地と積み込み地が同じであるため、荷物を降ろしてから次の荷物を積むまでの距離がゼロ化され、ドライバーの拘束時間を約7％削減できる見込みとしている。
また、従来は物流資材 (空きパレット、空き容器) を同社の生産工場からJA全農の精米工場へ返却するため、別のトラックで輸送していたが、今回のスキームでは一部区間で物流資材も製品と一緒に輸送できるようになり、従来に比べてトラックの積載率が約9％向上し、CO2排出量は約17％削減できる見込みとしている。
図
※2：輸送効率の指標の1つで、トラックが走行した距離のうち、実際に貨物を積載して走行した距離の比率のこと。
