三菱倉庫㈱は8月18日、医薬品物流におけるサプライチェーンをリアルタイムで可視化し、より高度な品質管理を実現するためのデータプラットフォーム「ML Chain(エムエル チェーン)」の運用を開始した。

近年の医薬品物流においては、2018年12月の「医薬品の適正流通(GDP:Good Distribution Practice)ガイドライン」発出や、希少疾患の治療で使われるスペシャリティ医薬品の増加等、これまで以上に厳格な品質管理が求められている。

同社も2015年から、GDP対応の医薬品保冷配送サービス「DP-Cool」を構築・展開する等、高品質な物流サービスの提供を通じて医薬品の安定供給に貢献してきたが、今後ますます多様化・複雑化が見込まれる医薬品物流では、これまで以上にサプライチェーン上の関係事業者が一体となって、高い水準の品質保証と安定供給を維持していく必要がある。

そこで今回、同社はブロックチェーン(※)等の技術を活用してサプライチェーン全体の可視化や高度な品質管理を実現するための医薬品物流データプラットフォーム「ML Chain」を開発。同プラットフォームの構築にあたっては、米国IBM社が米国食品医薬品局(FDA)のパイロットスタディ(実証実験)において構築した仕組みを参照している。

まずは、製薬企業の製造工場、物流センターから医薬品卸倉庫への配送までのメーカー物流の領域において、温度管理や位置情報などサプライチェーン上の重要情報をリアルタイムで可視化し、クラウド上で共有・把握するためのデータプラットフォームとして運用を開始した。

同社は今後、メーカー物流においては国際物流への拡大を図るほか、国内においてはメーカー物流の枠を越えたサプライチェーン全体の可視化を目指す。これにより、従来は可視化が難しかった領域の情報も網羅していくことで、在庫水準の適正化、安定供給の維持等に活用できるものと見ている。将来的には、在宅医療の促進等による患者宅直送型の新しい流通スキームの構築支援も視野に入れ、流通に関わる様々な事業者と連携し、サプライチェーン全体で高度な品質管理を共有する、汎用性の高いオープンプラットフォームとしての運用を見据えていく。また、「ML Chain」に蓄積された様々なデータを分析し、業務プロセスの自動化・省人化や業務負担の軽減を図ることで、サプライチェーン全体の最適化やサステナブルな物流の実現に貢献していく、としている。

※ブロックチェーン技術は、すべての履歴を連続的に記録する「不可逆」なデータベース技術で、関係者全員がアクセス可能でありながらデータ改ざんが不可であるため、その製品等が「いつ、どこで、だれの手を渡って来たのか」といったことを、全関係者が追跡可能であり、トレーサビリティを実現する。また、分散台帳の特性上、複数の事業者間で台帳を保持し合うことで、一部の障害が全体に影響を及ぼすことがなく、データの安全性が確保される。