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2021年度ロジスティクス大賞受賞6事例決定

2021/09/01

(公社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は9月1日、ロジスティクス推進に向けて優れた実績をあげた企業を表彰し、第38回目の開催を迎える「ロジスティクス大賞」において、ロジスティクス大賞ノミネート委員会およびロジスティクス大賞選考委員会による厳正な審査の結果、本年度は下記の通り、ロジスティクス大賞および特別賞が決定した。

●ロジスティクス大賞 
会社名:(一財)日本気象協会
テーマ:台風や大雪による輸送影響リスクの早期把握および効率的な輸送計画作成支援~ドライバーの安全と円滑な物流確保のための新たな取り組み~
受賞事由:近年、気象が激甚化する傾向にあり、台風等の暴風によるトラックの横転や大雨による土砂崩れに伴う通行止め、さらには大雪に伴う交通滞留などが頻繁に発生している。そのため、安定的な物流の確保やドライバーの安全確保が喫緊の課題となっている。そこで本取り組みでは、物流事業者に特化した新たなサービスとして、独自の高精度の気象予測を活用してトラックの走行ルート上における気象リスクを算出し、これを物流事業者がWeb サイト上で、ひと目で把握できるようにした。これにより、物流事業者の気象情報収集時間の短縮と効率化、輸送影響リスクの評価に基づく事前の迂回ルートや代替輸送の検討を可能としている。また、物流事業者が荷主企業に客観的根拠の提示を可能とすることにより、関係者間の対応調整や円滑な情報共有を実現している。この取り組みは、「ホワイト物流」推進運動の取り組み項目「D②異常気象時等の運行の中止・中断等」を推進する優れた取り組みであり、気象リスクを把握し、物流事業者と荷主企業が協力して対応を行うことを可能とする新しいサービスとして高く評価された。
 
会社名:プラスオートメーション株式会社/株式会社富士ロジテック・ネクスト
テーマ:物流向け RaaS の活用による庫内仕分けシェアリングサービスの実現
受賞事由:急激な EC 市場の拡大に伴い通販物流現場において人手不足が深刻となっている。そのため自動化設備の導入が有力視されているが、物流現場は労働集約型でオペレーションが属人化しやすく、標準化が遅れている。また、物量が波動することから効率的な設備稼働が難しく、さらには導入時の設備投資額が高額となることから、ニーズと比較し思うように自動化設備の導入が進んでいない。本取り組みは、このような問題を解決するために物流向け最先端ロボットをシェアリングして借用するサービス(RaaS:Robotics as a Service)を提供したもの。特に優れている点は、作業スペースも物量の波動に合わせてシェアリングにより安価に変動費化した点と、導入前コンサルティングから実際の導入・運用・改善までを内包した物流向けサービス(RaaS)としている点。技術進歩の早い設備や物量の波動が大きい場合は、設備を「投資」し、「所有・保守」することから、必要に応じて「利用・活用」することが有効。これにより、大手企業のみならず中小企業の自動化を促進させ、ひいては物流業界の生産性向上、また、作業環境改善に寄与していくものとして評価された。

●ロジスティクス大賞 特別賞
・ロジスティクス大賞 ロボティクス・イノベーション賞 
会社名:(株)Mujin
テーマ:混載ケース積み付けの自動化実現~MujinRobot パレタイザーの開発~
受賞事由:国内の労働力人口が減少していく中で、物流業界においては深刻な人手不足が問題となっている。また、女性や高齢者でも働きやすい労働環境の実現が求められており、庫内作業における重労働からの解放が求められている。しかし、小売店舗への出荷など、寸法等の異なる複数の商品をかご車に積み合わせて出荷する作業の自動化は実現されていなかった。このような状況の中で、本取り組みでは研究を重ね、異なる寸法、重量のケースを、荷崩れしないように、荷物の押し潰を避けるため重量物を下に置くなどのルールを考慮した上で、さらには出荷先の陳列効率やトラックの積載効率を考慮して、かご車等に積み付けることを可能とするロボットを開発。1 台のロボットで、パレットやかご車など複数の什器に積み付けることができるほか、什器のゆがみを検知してロボットの動作を補正することができるなど、汎用性と可用性を実現している。この取り組みは、作業者にとって高負荷な作業を排した「人にやさしい物流」を実現する優れた取り組みとして評価された。

・ロジスティクス大賞 業務革新賞
会社名:(株)エヌ・ティ・ティ・ロジスコ
テーマ:「AI 画像認識技術を用いた自動検品システム」の導入による、検品作業の改善~自動化によるリファービッシュ業務高度化の取り組み~
受賞事由:企業が利益を追求し、短期的に利益をあげることができても、社会への悪影響が生じれば持続的な成長は実現しないことから、ESG の観点が重要であるという認識が広がっている。このためメーカー等において、リファービッシュ事業が拡大しているが、返品処理を担う物流現場では製品の機能試験やクリーニングなど、多くの作業を行う必要があり、労働力の確保、ならびに生産性の向上が課題となっていた。本取り組みでは、省人化を実現し、労働生産性を向上させるために、積極的に自動化装置の開発を行
っている。水を使えない精密機器等の清掃に、ドライアイスを用いて行う装置を開発したほか、バーコード等の識別子が表示されていない機器の検品を行う AI 画像認識技術を用いた自動化装置を開発している。そして、検品・セット化作業では、1人あたり処理台数の生産性を60%向上させるとともに検品ミス0%を達成し、品質向上を実現している。このような改善は、持続可能な社会の実現に向けて物流現場において益々求められてくるものと考えられ、広く参考となる改善取組として評価された。

・ロジスティクス大賞 AI デマンドマネジメント賞) 
会社名:(株)資生堂
テーマ:新製品の発売前需要予測における AI とプロフェッショナルの協同
受賞事由:主力製品である化粧品は、トレンドの影響を受けやすく、かつ新製品の売上構成比が大きく、新製品の需給の安定がビジネスにおいて非常に重要となっている。しかし、この新製品の発売前における需要予測には、その製品の過去データを使用することができないため、予測誤差が大きく、品切れによる販売機会の損失や過剰在庫の発生による管理コストの増加が問題となっていた。本取り組みは、この新製品の販売の機会損失、または過剰在庫発生の抑制を図るために、AI を活用したもの。大量のデータを学習させれば予測精度が向上するのではなく、顧客の心理、購買行動を踏まえた仮説を構築した上でのデータの創造が必要であること、さらにはオペレーションに活用するためには、関係者の納得感の醸成が重要であり、そのための AI による予測根拠をデマンドプランナーが解釈し、関係者へ解説することが重要であることが示されている。AI を企業において活用するためのポイントが示されており、新しい技術の普及に貢献する取り組みとして評価された。

・ロジスティクス大賞 SDGs 社会貢献賞
会社名:佐川グローバルロジスティクス(株)/王子コンテナー(株)/王子ホールディングス(株)/アルテック(株)
テーマ:社会を支える物流企業として、SDGs 貢献への試み~EC 物流における自動梱包機を活用した次世代型オペレーション~
受賞事由:消費行動の変化による EC 市場が拡大している一方で、国内における労働力人口の減少によるトラックドライバー等の人手不足が深刻化している。また、事業を通じた社会課題の解決を図り、持続的な成長を目指すことが物流事業者にも求められており、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であるSDGs への対応も求められている。こうした状況を踏まえ、本取組では次世代型大規模物流 センターを新設するのにあたり、後工程となる輸送におけるCO2排出量の削減、さらにはエンドユーザーにおける廃棄物処理までも意識したマテハン選定を実現したものである。人手不足に対応するため、出荷頻度に応じて、ロボットストレージシステムや自動棚搬送ロボットを導入するほか、自律走行型搬送ロボットやコンベアを用いて自動搬送を実現している。自動梱包システムの導入により商品の大きさに適切なサイズの段ボール箱に梱包することを可能とし、梱包資材使用面積の22%削減による廃棄量の削減、さらには配送容積を33%低減することによる輸送回数の削減に伴うCO2排出量の削減を実現している。SDGsへの貢献を意識した社会課題の解決を図る優れた取り組みとして評価された。

なお、各賞受賞記念講演は10月18日(月)および21日(木)に開催されるロジスティクス全国大会2021にて行われる。

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