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島津、「新型コロナウイルス検出試薬キット」発売開始

2020/04/13

(株)島津製作所は4月10日、かねてより開発を進めていた「新型コロナウイルス検出試薬キット」を4月20日から発売すると発表した。

当面は国内のみの販売となるが、5月以降の海外輸出も視野に入れて準備を進めている。

現状の遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出では、鼻咽頭拭い液等の試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要になり、多数の試料を迅速に検査する際の妨げとなってきた。本キットの使用によってRNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できる。96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも1時間半以内で行える。また、手作業を行わずに済むため、人為的なミスの防止にもつながる。

同試薬キットは同社独自のAmpdirect技術(※1)をベースに国立感染症研究所のマニュアル(※2)に沿って開発されたもので、同技術は「生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というもの。同社はこれまでにAmpdirect技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルス等の病原体検出試薬を開発・販売しており、ここで培った技術を応用して新型コロナウイルス検出試薬の開発を行った。

※1:Ampdirectは島津製作所の登録商標
※2:国立感染症研究所 「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」

●新製品の特長
(1)迅速・簡便な作業性
キットには必要な試薬が全て含まれており、直ぐにPCR検査が実施可能。試薬および試料の調製、前処理(加熱)、反応、検出という全工程を約1時間で完了できる。煩雑なRNA抽出作業が不要で、試料は処理液と混合し加熱するだけのため、人手を低減でき、かつ人為的なミスが防止できる。96検体用PCR装置を使って、96検体を検査した場合でも1時間半以内(処理液の混合に15分、加熱処理に5分、PCRに65分で計85分)で行える。

(2)精度の向上
誤操作等により、陽性にもかかわらず遺伝子増幅が起きなかった場合に誤って陰性と判断しないよう、本キットの反応液には増幅工程が正しく進んだことを確認するための参照成分を添加している。これにより、偽陰性が生じる可能性を低減し、検査結果の精度向上が期待できる。

●注意:本キットは研究用試薬で、医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品としての承認・認証等を受けていない段階の製品となる。ただし、国立感染症研究所が定めた評価方法で性能を検証し、保険適用の対象となる「臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV遺伝子検査法について」(2020年4月9日版)に記載され、評価における陽性一致率・陰性一致率はいずれも100%の結果だった。

本キットの使用には、PCR装置や分注ピペット、恒温槽、小型遠心機をはじめとする機材や、試料・遺伝子の取り扱い技術を要するため、ドラッグストア等の小売店や個人への販売は予定なし。

●製品概要
製品名:「2019新型コロナウイルス検出試薬キット」
価格:22万5,000円(100検体分/キット、税抜価格)
月間生産量:10万検体分

●「新型コロナウイルス検出試薬キット」(上)、分析作業の流れ(下)

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