RFID/バーコード/画像認識など自動認識システムの企画・開発・製造・販売を手がける㈱マーストーケンソリューション(MTS)は7月29日、固定式UHF帯RFIDリーダライタ「MRU-F7100JP」の新オプションとして移動方向検出オプションを8月より提供開始すると発表した。
製造業や物流業の現場で課題となっていたRFIDゲート通過時の方向判別を、現行製品に追加可能なオプションで実現し、工場/倉庫内での人やモノ、什器等の移動管理の自動化による業務効率化・精度向上に貢献する。
製造・物流業界では近年RFIDによる自動認識が普及しているが、ゲート通過時に物品が「出入りどちらの方向に通過したか」を識別することが大きな課題だった。従来この課題に対応するには特殊な専用アンテナや、複数のアンテナ・センサの組み合わせたシステム構築が必要だった。MTSはそうした現場の声に応え、MRUF7100JP単体でタグ通過方向を検知できる新オプションを開発。MRU-F7100JPに同オプションを追加すれば、アンテナの前を通過する物品の進行方向を自動判別し、在庫管理や工程管理の精度向上につなげることが可能になる。

製品URL:https://www.mars-tohken.co.jp/rfid/products/rfid-package/rfid-direction-detector/
●MRU-F7100JP新オプション「移動方向検知機能」の特長
MRUシリーズは自律動作型リーダライタとして制御用PCが不要で、ブラウザからの簡単設定で導入後すぐに動作開始できる手軽さが特長。同オプションはそのMRU-F7100JPに新たな付加価値を与える拡張機能として位置付けられる。主な特長は次の通り。
①通過方向検知:ICタグを読み取ると同時に、そのタグが出たか入ったか、どちらに移動したかを自動判別・記録する機能。例えば、倉庫入口を通過する際にタグの進行方向とタグの個品ID情報とを組み合わせ、リアルタイムな方向付き履歴データを上位システムに提供可能。
②柔軟な設置性:MRU-F7100JPはもともとコンパクトサイズでPoE受電に対応しており、電源工事不要で設置できるため、現場レイアウトに合わせた自由度の高い設置が可能。従来型の大型RFIDゲート装置に比べて、限られたスペースでも後付け導入しやすくなった。
③PoE/無線LAN対応:電源供給はLANケーブル経由のPoEで行えるため、省配線化を実現できる。遠隔拠点やレイアウト変更の多い現場でも電源コンセントを気にせず設置場所を柔軟に変更でき、実証実験用に機器を一時設置する際にも手軽。それらによりトライアル導入から本番展開までスムーズに進められる。
MRU-F7100JP自体の基本性能(1W高出力モデル/250mWモデルのラインナップ、4ポートアンテナ対応、堅牢設計 -20~+55℃対応、PLC リンク機能搭載等)はそのままに、今回の方向検知オプション追加により「方向もわかるRFIDリーダライタ」へと進化する。上位システム側ではタグIDデータに加えて通過方向フラグを受信できるため、入出庫管理や工程内の順流・逆流検知をシンプルな構成で実現可能。
価格:オープン価格
●活用例:現場での具体的効果
新オプションの活用により、製造現場・物流現場それぞれで次のような効果が期待できる:
①建設業(現場への入退場):従来は入口と出口を分けて通過検知したり、通過の際に入場・退場のいずれかの登録操作をする等の面倒な操作が必要だったが、スムーズにハンズフリーで認識することができる。
②製造業(工程戻りトレイの判別):製造ライン上で工程間を移動する部品トレイにICタグを付与し、工程ゲートにMRU-F7100JPを設置することで、本来前工程へ戻ってはいけないトレイが逆方向に通過した際に即座に検知できる。例えば、組立工程から検査工程へ進むはずのトレイが誤って元の組立工程側へ戻ってきた場合、方向検知機能が自動でアラートを発し、ライン逆流による品質トラブルや手戻りを未然に防止する。これまで人手で行っていた工程戻りの監視を自動化でき、ヒューマンエラーの削減と工程管理の徹底に寄与する。
③物流業(出荷・入荷方向の自動判別):倉庫や配送センターの出入口にMRU-F7100JPを設置すれば、搬出入される荷物のRFIDタグを読み取りつつ、それが「入荷」か「出荷」かをシステム側で自動判別できる。これにより、在庫システムへの入庫登録・出庫引当処理を自動化。結果として物流拠点における誤出荷防止や在庫差異の低減、さらにはトレーサビリティ強化といった効果が期待できる。

●簡易な構成で実現する方向検知
RFIDによる通過方向の判別はこれまで業界でも難題とされ、一般的なUHF帯RFIDゲートでは複数のRFIDリーダの組み合わせやセンサ等をユーザーが準備してシステムを構築することもあった。しかし、そうした従来方式はシステムが複雑になる上、タグ読み取りのタイミング次第で誤判定が起こるリスクも抱えていた。今回MTSが提供するMRU-F7100JP+方向検知オプションは、1台のRFIDリーダで完結するシンプルな構成でこの課題を解決する。既存MRUシリーズの強みである制御PC不要のインテリジェント機能を活かし、リーダ内部で通過方向ロジックも内蔵している。また、同オプションはMRUシリーズのフィルタ機能等とも併用可能で、不要な読み取りデータ送信の抑制や特定条件下での動作制御といった細かなチューニングも自由に行える。これによりコストや導入ハードルを抑えて「方向判別できるRFIDゲート」を構築しつつ、各社の業務シナリオに最適化したシステム運用を実現できる柔軟性も備えている。
●MTS製品開発責任者のコメント
「RFIDゲートを通過するモノの方向を知りたいというニーズは、これまでも多くのお客様から寄せられていました。特に工場内の工程戻り検知や倉庫での入出荷チェック自動化は、現場DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で残された課題の1つでした。当社では自律型RFIDリーダライタの技術資産を活用し、追加機器に頼らないスマートな方向検知ソリューションを目指して本オプションを開発しました。既存システムに簡潔に組み込めるため、現在MRUシリーズをご利用中のユーザー様にも短期間で導入いただけるのが利点です。今後もお客様の声に耳を傾け、現場の課題を解決する製品づくりに取り組んでまいります」

