パナソニック ホールディングス㈱は1月17日、2023年11月29日~12月2日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「2023国際ロボット展」(主催:(一社)日本ロボット工業会、日刊工業新聞社)に出展した同社グループの展示内容をレポートした。
キャッチフレーズは、「Augment Possibility with Robotics(制約を超え、くらしを広げる)」。ロボットやロボット技術があるからこそ実現できる、より便利で豊かな世界を目指した取り組みとして以下の技術を紹介した。
(1)繊細な対象物も巧みにつかむ革新的なロボットハンド
様々な対象物を把持(はじ)する「ロボットハンド」の開発に関して、ブースでは、ハンドが繊細な物体や柔軟な物体、軟弱な物体をつぶさずにつまみ上げ、操り、箱の中に入れる動作を実演。いずれも吸盤を用いた従来のロボットアームではつかめなかった物だが、ハンドが力加減を絶妙にコントロールして対象物に接触するため、イチゴのようなつぶれやすい果物でも傷つけずにつまみ上げ、回転させ、優しく置くこともできるとしている。
ハンドを多関節ロボットアームに取り付けることにより、指先のベルトで対象物を器用につかんだ後、移動方向を変えて箱の中に置くという操作が可能。果物以外にも、ゼリーの入った袋、柔らかいボトル、ソースやクリームの入ったチューブ、シャンプーの詰め替え用パックといった製品でも同じような操作が可能としている。
パナソニックグループのロボットハンドには、主に2点の特長がある。1つは、グループが家電事業で開発した制御技術を活用し、高度な力制御を安価に実現した点。マニピュレーター(ロボットのアーム部分)内のセンサで、ハンドから対象物に加わる力をわずか0.2ニュートンに抑えている。もう1つは、ハンド部分の設計。グリッパと2つのベルトを組み合わせた独自の機構で、対象物をつかんだり動かしたりする。ベルトがそれぞれ逆方向に動くと、対象物が回転する。
なお、本記事で言及しているロボットハンドプロジェクトの成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP20016)の結果、得られたものとしている。
(2)自律搬送ロボットシステム「HOSPI Trail(ホスピートレイル)」
人間の潜在的な能力を拡張するロボットのもう1つの例として紹介された。HOSPI Trailは2013年に販売が開始された病院内自律搬送ロボット「HOSPI(ホスピー)」シリーズの最新モデル。発売以来、国内10か所、シンガポールで2か所の病院で薬剤等の搬送を担っている。タッチパネル画面に表示された可愛らしい顔が特徴的なHOSPIシリーズは、高性能センサを搭載し、あらかじめ記憶した病院の地図情報を基に、人や様々な障害物を安全に避けながら病棟内を自律的に移動する。ロボティックモビリティ「PiiMo(ピーモ)」やリハビリ用途の歩行トレーニングロボットと同様、グループが開発した数々のヘルスケアロボットの1つ。
従来のHOSPIシリーズユーザーの要望に応えて、HOSPI Trailは本体の後ろに脱着可能なカート(収納庫)を備え、搬送効率のさらなる向上を実現。これまでは搬送物を受け取るためにスタッフが待機する必要があったが、HOSPI Trailは目的地に到着すると自動でカートを切り離すことができ、「置き配」型の運用が可能になった。ブースでは、HOSPI Trailがブース内の狭いエリアを動いてカートを切り離す様子が披露された。
HOSPI Trailのカートは、薬剤トレーが2列で18段入るタイプ、50Lコンテナが3個入るタイプの2種類があり、それぞれ60kgまで搬送できる。最大移動速度は0.75m/秒で、2時間半のフル充電後、5時間の運転が可能だ。2023年9月から販売を開始しており、病院の人手不足の解決に貢献するとしている。