ソニーセミコンダクタソリューションズ㈱(SSS)と日本電気㈱(NEC)は12月8日、倉庫における荷物の入出荷などオペレーションの効率化を目指し、AIカメラ等のエッジデバイスを活用した物流業界向けエッジAIセンシングソリューションの実証実験を同月から開始したと発表した。

同実証実験は日通NECロジスティクス㈱の協力のもと、同ソリューションによる倉庫の生産性向上効果を実証する目的で、日通NECロジスティクス成田倉庫において2023年3月まで実施する。

両社は、倉庫の空き棚スペースをエッジAIにより可視化し、荷物の入出荷に関するデータを掛け合わせることで、作業時間の短縮に繋がる最適な入庫スペースを作業員にリコメンドするソリューションを開発している。同ソリューションは、AIカメラを活用したソリューション構築を支援するSSSのエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」と、NECの空き棚スペースを可視化するアプリケーションを組み合わせることで、システム開発の効率化とAI再学習を実現し、倉庫環境に合わせて検知精度を持続できるサービス運用を目指す。

商取引の急速なEC化に伴って荷物の取扱量が爆発的に増加する中、物流業界における人手・処理能力の不足が重大な社会課題となっている。両社は、同実証実験で得られる知見をもとに物流業界への本格導入に向けて検討し、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の促進による人手不足の課題解決に取り組んでいくとしている。

●エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」
https://aitrios-promo.wpp.developer.sony.com/#top

実証実験の倉庫の様子
(上)AI処理機能搭載の小型なインテリジェントビジョンセンサ「IMX500」、(下)IMX500搭載AIカメラ

●両社の役割
○SSS
・AI処理機能を有するインテリジェントビジョンセンサ「IMX500」の提供。IMX500を搭載したAIカメラ(※)が、専用の再学習可能なAIモデルにより棚や荷物を検知。
※AIカメラはパートナー企業製

・デバイス管理やAI開発・運用のためのクラウド環境「AITRIOS」を提供。
・AI検知に必要となるベースの再学習可能なAIモデル「Base AI Model」を開発・提供。

○NEC
・画像情報を元に空き棚スペースを可視化し、ピッキング時の作業時間を短縮するための最適な空き棚スペースをリコメンドするアプリケーションの提供。
・「AITRIOS」と「Base AI Model」を活用し、ソリューションを導入する倉庫環境にあわせてクラウド経由でAIモデルを再学習させ、効率的に最適化。 倉庫環境の変化に応じて、AIモデルを継続的に再学習させ、AI検知精度を持続。

●物流業界向けエッジAIセンシングソリューションの主な特長
(1)「IMX500」搭載AIカメラ設置による省スペース化と取扱いデータ量の抑制
・「IMX500」は小型なチップで撮像からAI検知までを実施。物理的な制約が伴う倉庫で、レイアウトへの影響を最小限に抑えながら、柔軟なAIカメラの設置が可能。
・検知結果は荷物に関する意味情報(メタデータ)として後段のシステムに送信。画像のまま送信する場合と比較し、取り扱うデータ量を最小限に抑え、システムの運用コスト削減に貢献。

(2)ソリューション開発の効率化と短納期化に貢献:「AITRIOS」
・「AITRIOS」が、AI検知に必要となる再学習可能なベースのAIモデル「Base AI Model」を提供。NECはこれを活用することで、倉庫環境ごとに最適なAIモデルを効率的に開発し、ソリューションを顧客に短納期で導入。
・「AITRIOS」の環境を使い、遠隔からクラウドを通じたAIモデルの再学習が可能。倉庫レイアウトや照明など現場環境に変更が生じた場合にもAIモデルを再学習させることで、検知率の低下を防ぎ、オペレーションに求められるAI検知精度を維持。

(3)ピッキング作業時間の短縮に貢献するアプリケーション
・「IMX500」で検知した荷物情報をもとに、倉庫全体の空き棚スペースの情報をモニターに可視化。作業員の能力や経験値に左右されることなく、空き棚スペースの把握が可能。
・空き棚スペースの情報と、荷物の入出荷頻度や出荷予定日のデータを掛け合わせることで、ピッキング時の作業時間が短縮できる最適な空き棚スペースをリコメンド。