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欧州フォークリフトメーカーが島津の静音ギヤポンプ採用

2021/12/15

島津製作所は12月14日、従来品に比べ騒音を最大30%低減した静音化設計ギヤポンプ「Serenade SRP300シリーズ」を新たに開発し、発売開始した。

各方面で二酸化炭素(CO2)排出量削減の取り組みが進むなか、フォークリフトに代表される産業車両や建設機械分野でも駆動源をエンジンから電動機に置き換える動きが強まっている。同社は駆動源電動化による油圧機器の騒音低減ニーズに対応するため、4年前から開発に取り組んでおり、2年前に環境規制の厳しい欧州の大手フォークリフトメーカーに試作品を納入。その優れた静音性が評価され、今回量産採用されたとしている。

ギヤポンプはフォークリフト等の産業車両において荷台を動かすための作動油を送り出す油圧ポンプ。1台のフォークリフトに1~2台のギヤポンプが搭載されている。コロナ禍やEコマース市場拡大に伴う物流量の増加を背景に、産業車両の需要も年々増加している。特に環境対策のための排ガス規制の強化や、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みから、電動フォークリフトの割合が高まっており、将来はほとんどすべてのフォークリフトが電動化されると予想されている。電動フォークリフトは従来のエンジン駆動式に比べて運転音が静かなため、ギヤポンプの駆動音や、吐出圧力脈動(※)に起因する車体騒音が目立つことになる。オペレータや周囲の人々の騒音ストレスを低減するため、ギヤポンプにはより優れた静音性が求められている。
※ギヤポンプから吐き出される作動油の流量変動によって起こる振動

このような背景のもと、同社では静音化を実現する独自技術「Serenade」を利用したギヤポンプを開発・製造しており、「Serenade」技術は吐出圧力脈動の原因の1つであるギヤポンプ内部のギヤ同士の隙間(バックラッシュ)をできるだけ小さくする製造管理技術で、これにより流量変動を抑えて静音化を実現している。

同ギヤポンプの特長は、さらなる静音性の向上を目指し、音質評価指標「ラウドネス」に着目して開発した点。「ラウドネス」とは、一般的な騒音評価で使用されている「音圧レベル」よりも人間の聴感そのものにフォーカスした評価指標となる。同社は「ラウドネス」を用いた静音化技術の確立により、従来品に比べ、オペレータ耳元位置におけるラウドネス値を最大30%低減することに成功。環境問題解決に向け、エンジンを駆動源としている産業車両、建設機械、農業機械、特装車両等においても電動化推進の動きが今後より一層加速し、これらの分野でも、駆動源電動化による油圧機器の騒音低減ニーズが生じることが予想される。同社は今後も静音化設計ギヤポンプのシリーズ化開発を進め、フォークリフトだけなく、建設機械分野等においても採用を目指す。

●目標販売台数
約3万台(2025年度)

●「Serenade SRP300シリーズ」

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