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郵船/富士通、自動車専用船積み付け計画作成業務効率化

2021/09/02

日本郵船(株)は9月2日、自動車の積載台数や車種、寄港数等により膨大な積み付けパターンが存在する自動車専用船の積み付け計画作成業務の一部を自動化するため、膨大な組合せの中から高速に最適なものを導き出す富士通(株)の量子インスパイアード技術(注3)「デジタルアニーラ」を導入し、9月1日より実業務でのトライアル運用を開始したと発表した。

両社は「デジタルアニーラ」によって、日本郵船が長年にわたって蓄積してきた自動車専用船での積み付けに関するプランナーのノウハウをアルゴリズム化することにより、これまで専門のプランナーが1隻あたり最大約6時間をかけて作成していた自動車専用船の積み付け計画作成業務を2.5時間に短縮することを実現。これにより、年間4,000時間もの労働時間削減のほか、急な計画変更への迅速な対応や、経験値や技量によるプランナーごとの積み付け計画の品質のバラつき防止な等を実現する。

両社は今後、トライアル運用の中でさらなる処理の高速化や出力結果の精度向上を図るなどのシステムのレベルアップを進め、2022年4月に本格運用の開始を目指す。荷役効率や本船の運航効率の向上を実現し、ソフトウェアイノベーションの側面から自動車輸送事業における温室効果ガスの排出の最小化を目指す。

日本郵船では、1隻の自動車専用船に数千台もの自動車を積載して日本と世界各地を結び、グローバルな自動車輸送事業を展開している。自動車専用船の船内では、自動車を1台ずつ決められた間隔で、予め作成された積み付け計画に沿って積載していくが、例えば、最大積載数約7,000台・フロア数12階の自動車専用船が、十数の港に寄港しながら車高や車幅が異なる60種類以上の車両の積み降ろしを行う場合、車両の積み付け方の候補の数は、総当たりで計算すると10の2,000乗通り以上にもなる。それら膨大なパターンの中から、船の最大積載量に近い積載率で車両を積み込むことや、積み降ろし作業時に安全に作業できる船内スペースを確保すること等の制約条件を満たした積み付け計画を作成することは非常に複雑な作業。従来は、専門のプランナーが経験を重ねながら、積み付けのパターンや配列法を習得して積み付け計画を作成していたが、プランナーごとの経験値や技量により積み付け計画の品質に個人差が生じることや、1隻あたりの計画作成時間が最大約6時間にも及ぶこと、急な状況の変化による積み付け計画の変更に多くの業務負荷が生じるなどの問題があり、それらの解決が長年の課題となっていた。

「デジタルアニーラ」の導入について
この課題の解決のため、日本郵船は富士通の「デジタルアニーラ」に着目し、積み付け計画作成業務に導入しました。「デジタルアニーラ」は、量子現象に着想を得たデジタル回路で、現在の汎用コンピュータでは難しい、膨大な組合せの中から最適なものを高速に導き出すことができる新しい技術です。「デジタルアニーラ」の導入にあたって、日本郵船の社内システムから積み込む車両のサイズや積み降ろす港の情報を取り込み、「デジタルアニーラ」によって解を求めることによって、積み付け計画作成業務の中で最も重要な席割り作業(様々な条件を考慮し車両の最適積載位置を計画する作業)を約30分で自動的に完了させるシステムをクラウド上に構築しました。

導入前の実証実験では、このシステムを活用することにより、これまでベテランのプランナーが1隻あたり最大約6時間を要していた積み付け計画作成業務を、約2.5時間に短縮することを実現。これにより、プランナーが積み付け計画作成に要する時間を年間4,000時間以上削減でき、その効果として、意思決定の迅速化がもたらすビジネスチャンスの拡大が見込まれるとともに、急な計画変更へのより効率的な対応の実現や、プランナーの経験の違いによる積み付け計画の品質のバラつきを抑えるなどの大きな効果が見込まれる。

●自動車専用船の概観(上)、日本郵船のLNG燃料自動車専用船「SAKURA LEADER」(中)、システム概要図(下)

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