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2019年度の物流ロボティクス市場は前年度比155%

2020/09/14

(株)矢野経済研究所は9月14日、2019年度の国内の物流ロボティクス市場規模(事業者売上高ベース)が、前年度比155.3%の131億4,000万円と推計した。

物流は今や重要な社会インフラの1つと認識されているが、労働集約型産業であるが故に人手不足が他業界より深刻であり、近年その課題が浮き彫りになっており、それを解決する一手として現在注目を集めているのが、倉庫現場における物流ロボットの導入だ。日本で物流ロボティクス機器に注目が集まるようになったのは2014年頃のことで、市場に新たに投入されるロボットの種類は年々増加。2019年度は人と協働で働くピッキングロボットAMR(Autonomous Mobile Robot)の販売展開が始まったほか、ピックキング作業を行うGTP(Goods To Person)型AGVやロボット自動倉庫の伸長により好調に推移した。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、物流倉庫でもクラスター発生防止のため、ソーシャルディスタンスの確保等の感染症対策が必須となり、今までは密集を厭わなかった作業現場が変化。非常時に、人が来ること・集まることが出来ずに倉庫内作業を行えなくなった場合でも、物流ロボットは通常通り稼働することができる強みを持つ。物流は「止めない」ことが大前提であり、その社会的責任がある。止めない物流を実現するために、BCPの観点からも物流ロボットが果たす役割は大きい。災害など有事の際に対応できる物流倉庫は、顧客企業の信頼獲得に繋がるため、そうしたBCPという観点からも今後は有事対応が可能な物流倉庫が検討されるようになっていく可能性がある。

物流ロボットの展開・活用はまだ始められたばかりだが、物流ロボティクス機器は引き続き拡大する見通し。物流現場では、新型コロナウイルスの感染拡大により密にならない作業環境や、さらに物流のBCP(事業継続性)を維持するため、ロボット活用についての関心が高まっており、実証実験を含め今後導入は今までより早いスピードで進んでいく見込み。2020年度の物流ロボティクス市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比133.4%の175億30百万円になると予測している。

さらに、今回市場には含めていないものの、現在実証実験が進められているラストワンマイルの配送を担う屋外での配達ロボットやドローンも、道路交通法や航空法の改正や緩和が行われていくことで、5年以内には実際に稼働していく可能性が高い。こうした屋外向け物流ロボットも加わることにより、当該市場も伸長していく見通しで2025年度の同市場規模は583億円、2030年度には1,509億90百万円になる見通し。

●調査要綱
調査期間:2020年4月~8月
調査対象:物流ロボットに関わるメーカー、サービス展開事業者、物流ロボットを活用する事業者
調査方法:矢野経済研究所専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用

●物流ロボティクス市場とは
経済産業省の資料によると、ロボットは「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」とされている。本調査における物流ロボティクスとは、物流に関わる倉庫・物流センター等の屋内で利用されているロボットを対象とし、作業工程別に「入出庫に関わるロボット」「ピッキングロボット」「搬送・仕分けロボット」の大きく3つのカテゴリーに分類した。但し、工場などの生産工程で使用される物流ロボットや屋外で稼働する物流ロボット、知能ロボットコントローラ等は含まれない。

●市場に含まれる商品・サービス
ロボット自動倉庫、デバンニング/バンニングロボット、デパレタイズ/パレタイズロボット、無人フォークリフト、ピースピッキングロボット、GTP型AGV、AMR、仕分けロボット、搬送用AGV

●物流ロボティクス市場規模推移・予測(上)、物流ロボティクス機器(下)

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