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同一空域・複数ドローン事業者の運航管理システム実証

2019/03/01

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本電気(株)、(株)NTTデータ、(株)日立製作所、(株)NTTドコモ、楽天(株)、KDDI(株)、(株)ゼンリン、(一財)日本気象協会は3月1日、福島県と南相馬市の協力のもと、南相馬市復興工業団地内の「福島ロボットテストフィールド」で、同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムの実証試験を実施した。

試験の結果、今回開発した「運航管理統合機能」、「運航管理機能」、「情報提供機能」で構成される運航管理システムが正常に作動し、基本的な運航管理機能に基づいて同一空域における複数のドローンの飛行を支援できることが確認された。

今回の試験は2017年11月22日にNEDOと福島県が締結したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定に基づく取り組みの一環。
 

今回開発した運航管理システムは同プロジェクトにおいて国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が担当する全体設計に基づいて、次の3つの機能で構成され、それぞれが協調的に動作するもの。 
 
(1)複数事業者のドローンの運航を共有するための「運航管理統合機能」
   例:各ドローンの飛行経路や離着陸場の重複の回避
(2)個別事業者が運航管理システムにアクセスし、サービスを実現するための「運航管理機能」
   例:飛行計画の作成や申請、飛行状況の監視
(3)空域の3次元地図・気象情報等の情報を提供する「情報提供機能」
   例:詳細な3次元地図情報やドローンが飛行する高度の風速等の気象情報 
 
●運航管理システムの実証試験内容と主な成果
実施期間:2019年2月25日~2月28日
実施場所:福島県南相馬市 福島ロボットテストフィールドおよびその周辺
実施内容:同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムの実証試験
主な成果:
・運航管理システムが正常に作動し、「災害調査」、「警備」、「物流」、「郵便」のサービスを実施できた。
・その際、個別事業者が申請した飛行計画に基づき、ドローンの飛行経路や 離着陸場の重複を自動で事前に確認し、気象条件や地理条件を踏まえ、個別事業者に変更を促し、円滑な全体調整を実施できた。
・リアルタイムに全ドローンの位置情報を一元管理し、ドローンが接近するなど危険な状況が発生していないかを確認し、安全運航に関する情報を個別事業者に提供できた。

●飛行試験の内容
今回、福島ロボットテストフィールドとその周辺の900m×600mの範囲に離着陸場を8か所設置し、「災害調査」、「警備」、「物流」、「郵便」という4つの利用シーンを想定し、安全を確保しながら10機のドローンを15分程度の時間にわたって適切に飛行させた。運航管理統合機能は複数ドローンの飛行計画の調整および飛行中のリアルタイムでのドローン位置情報管理を、人の手を介さず自動的に実施した。 
 
(1)情報提供機能による離陸許可
福島ロボットテストフィールドの通信塔に設置された気象観測装置がドローンの飛行する空域高度30mおよび50mの風向風速を5分おきに観測し、ドローンが安全に飛行可能な風速10m/s以下の気 象環境であることを確認した上で離陸の許可を通知した。

(2)飛行経路の重複解消
災害調査ドローンより面積約300m×200mの調整池の状況を把握するため高度5m~30m、速度4m/sでの飛行計画が申請された。一方、警備ドローンは高度 20m~60m、面積約200m×100mで研究施設周辺の警備を行うもの。警備ドローンの飛行経路と災害調査ドローンの飛行経路の重複を確認したため、警備ドローンの飛行経路変更を指示し、災害調査ドローンの飛行エリアを迂回する経路の再申請を要請することで飛行経路の重複を解消し、警備ドローンの離陸を許可した。

(3)離着陸場の利用時間の重複解消
物流ドローンが約 2.0kgの救援物資を避難所へ運搬するため、高度40m、速度6m/s、約800mの距離を飛行する計画が提出され承認された。その後、郵便ドローンが親書を避難所へ運搬するため、高度40m、速度6m/s、約500mの距離を飛行して物流ドローン離着陸場の近くに着陸する計画が提出されたが、到着が同じタイミングになったため、郵便ドローンへ着陸時間を遅らせる指示をした上で郵便ドローンの離陸を許可した。 
 
●今後の予定
来年度以降、今回の試験結果を評価・検証し、より安全かつ効率的な運航管理を実現するための機能の拡張・高度化を行う。今回参画したドローン事業者以外の国内外のドローン事業者が、運航管理統合機能を利用したドローン運航試験を福島ロボットテストフィールド内で実施できるよう、運航管理システムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を順次公開する予定。 今後も福島ロボットテストフィールドを活用した飛行試験を引き続き実施し、多数のドローンが安心・安全に空を飛び交う社会の実現を目指す。 また、福島県は、2019年度の福島ロボットテストフィールド完成に向けて、引き続き整備を行っていく予定。 

●運航管理システムにおける飛行状況管理画面(イメージ)(上)、飛行スケジュールおよび飛行経路図(下)

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