(一社)RISE-A(ライズ・エー)と三井不動産㈱は7月16日、半導体関連の有志が中心となり、RISE-Aを設立し、同日より会員募集を開始すると発表した。また、2025年10月には日本橋に拠点を開設し、本格的に活動を開始する予定。

昨今、半導体は国家戦略の中核として位置づけられ、国内各地で生産拠点の整備や設備投資が進んでいる。こうした半導体産業の活性化の流れを背景に、多様なプレイヤーが交わる“共創の場”の形成が重要なテーマとなっている。

今回設立するRISE-Aでは、三井不動産の“産業デベロッパー”としての知見を活かし、半導体産業のイノベーションを推進するエコシステムを構築する。サプライサイドだけでなく、ユーザーサイドも含めた多様な人々が立場を超えて交流する「場」と「機会」の提供によって、業界・分野を超えた半導体分野の「共創・協調」を促すことで、イノベーションの創出や産業課題の解決に貢献し、社会全体の発展を目指すとしている。

RISE-Aが目指す価値

(1)半導体産業の現状と課題
半導体は近年、急速なデジタル化やDXの進展、経済安全保障の重要性の高まり等を背景に、社会・経済の根幹を支える「産業のコメ」として、かつてないほどの注目が集まっている。内閣府もAI・半導体分野に対して2030年までに10兆円以上の公的支援を行う方針を定め、約160兆円の経済波及効果を見据える(※1)等、国家戦略の中核として位置づけられている。すでに北海道、東北地方、熊本県など国内各地でも半導体関連企業の集積や設備投資が進んでおり、産業のさらなる活性化が期待されている。

半導体はデジタル社会の基盤技術(出典:経済産業省2021年3月24日第1回半導体・デジタル産業戦略検討会議 資料3「半導体・デジタル産業戦略の方向性」より抜粋)

一方、日本の半導体産業は1990年代以降、国際的な半導体のシェア率は低下している(※2)。そこでサプライヤーだけでなく、ユーザー企業や、アカデミアや支援機構等が共創できる仕組みを整備し、革新的な技術を用いた事業や用途開発といった社会実装を促していくことが求められている。

そのため、三井不動産は半導体を活用したイノベーションの創出に向けて、多様なプレイヤーが交わる共創の「場」と「機会」の形成/創出を目指すRISE-Aを設立する。

共創の仕組みを作り、半導体業界の知識や経験が、ユーザー企業や関連企業、アカデミアに共有され、イノベーションを推進するエコシステムの構築を目指すことで、日本の次世代の産業競争力強化に貢献していくとしている。

(2)三井不動産による新産業創造の取り組みと、半導体分野への展開
①産業デベロッパーとしてのイノベーションに関する取り組み
三井不動産は、街づくりの経験を活かし、“産業デベロッパー”として社会課題の解決や新しい産業を生み出す取り組みを進めてきた。2016年にライフサイエンス分野における(一社)LINK-J(※3)の立ち上げを行い、2022年には宇宙産業分野において(一社)クロスユー(※4)を設立し、両分野での研究から事業化までを支える環境を整備してきた。様々な分野の人々が集まる「場」と、新たな連携や実証につながる「機会」を提供することで、これらの産業でイノベーション創出を目指す新産業創造を後押ししてきた。

2024年4月に発表したグループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」(※5)の中では、グループのありたい姿として、「産業デベロッパーとして社会の付加価値の創出に貢献」を掲げ、イノベーションに関連する部門の知見・ノウハウを集約し、効果的にイノベーション・新産業創造を推進するイノベーション推進本部を新設した。このイノベーション推進本部を中心に、新産業創造に向けた取り組みをより一層強力に推進していくとしている。

②半導体分野への展開
半導体産業においても、三井不動産がこれまでライフサイエンス/宇宙産業分野に対して行ってきた産業支援のアプローチを展開する。三井不動産とRISE-Aは、半導体産業に「場」と「機会」を提供することで、業界業種を問わず多様なプレイヤーが存在する産業支援コミュニティを構築し、イノベーションの創出に寄与する。

RISE-Aは7月16日より「特別会員」および「メルマガ会員」の募集を開始する。会員が利用できる専用施設として、10月には日本橋のスルガビルに共創拠点「RISE GATE NIHONBASHI」を開設し、本格的に活動開始予定としている。

●RISE-A公式Webサイト(7月16日公開)
https://www.rise-a.jp/

RISE GATE NIHONBASHIイメージパース

また、同エコシステムを通じて、三井不動産も半導体産業を支援する領域での事業機会の獲得を目指す。これまで、ライフサイエンス分野においてはLINK-Jを通じて、イベントやネットワーキング等、共創の「機会」を提供し、三井不動産は集積交流拠点としてライフサイエンスビルの整備によって「場」を提供してきた。さらに、賃貸型のウェットラボとして「三井リンクラボ」を開設することで、ライフサイエンス分野の研究開発やイノベーションの創出を促してきた。

RISE-Aでは、LINK-Jと同様、こうした会員企業に対する土地・工場等の不動産の提供、サプライチェーン構築時のサポートを含めた包括的な産業支援を行い、半導体産業に多様なプレイヤーの参入を促進する。RISE-Aの設立を経て、三井不動産は半導体産業を支援する「産業デベロッパー」を目指すとしている。

※1:内閣府 2024年11月22日 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策 別紙1:AI・半導体産業基盤強化フレーム
※2:経済産業省 2021年3月24日 第1回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 資料4:半導体戦略の方向性
※3:(一社)LINK-J WebサイトURL:https://www.link-j.org/
※4:(一社)クロスユー/cross U WebサイトURL:https://www.crossu.org/
※5:グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」(PDF)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/innovation2030/pdf/innovation2030.pdf

●RISE-A組織概要
法人名:(一社)RISE-A
設立日:2025年4月
役員
理事長:天野浩(名古屋大学教授)
副理事長:山下和則(三井不動産㈱ 常務執行役員 イノベーション推進本部長)
理事:遠藤哲郎(東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター センター長・教授)
理事:鈴木寛(東京大学教授・慶應義塾大学特任教授)
理事:三枝寛(三井不動産㈱ フェロー(イノベーション担当))
運営諮問委員
[委員長・予定]五神真(国立研究開発法人理化学研究所 理事長)
[委員・予定]
 石村和彦(国立研究開発法人産業技術総合研究所 理事長 兼 最高執行責任者)
 漆間啓((一社)電子情報技術産業協会 会長)
 片山正則((一社)日本自動車工業会 会長)
 白谷正治(九州大学 副学長・高等研究院長)
 染谷隆夫(東京大学 執行役・副学長 産学協創推進本部長)
 橋本和仁(国立研究開発法人科学技術振興機構 理事長)
 浜島雅彦(SEMIジャパン 代表)
 寳金清博(北海道大学 総長)
 益一哉(東京科学大学 特別顧問 名誉教授)
 森勇介(大阪大学 大学院工学系研究科 教授・総長補佐)
 植田俊(三井不動産㈱ 代表取締役社長)