アマゾンジャパン(合)は11月5日、同社が2023年に日本へ1.3兆円以上の投資を実施し、2010年~2023年の期間の総投資額は7兆円超となったと発表した。
その中には設備投資(物流拠点のフルフィルメントセンター、配送拠点のデリバリーステーション、AWSのデータセンター等のインフラ整備を含む投資)と、顧客や配送パートナー、中小企業向けプログラムの拡充、従業員の報酬等の事業運営費が含まれるとしている。
同社は顧客により迅速で便利な買い物体験を提供するため、物流・配送ネットワークの構築への投資を加速している。2023年もネットワークの拡充を進め、千葉県と埼玉県に新たなフルフィルメントセンター(FC)を開設したほか、全国11か所にデリバリーステーション(DS)を設立。2024年には、神奈川県に新しいFCを開設するほか、全国15カ所でDSの新設を継続して進めている。現時点では、FCは全国25か所以上、DSは年内に65か所以上の体制となる。全国47都道府県で700万点以上の商品の翌日配送、一部の都道府県で数百万点の商品の当日配送を行っている。
また、Amazon Web Services(AWS)は、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるため、日本の顧客のクラウド利活用を前進させ、持続可能な経済成長の実現を支援している。AWSアジアパシフィック(東京)リージョン(データセンター群)とAWSアジアパシフィック(大阪)リージョンを開設し、それらのクラウドインフラへの継続的な投資により、日本の多くの顧客において低遅延通信の実現、可用性の向上、耐障害性の向上を可能にしている。
日本国内でオンラインショッピングの利用率は高まっており、総務省統計局の「2023年家計消費状況調査」(※1)によると、2023年、日本の50%以上の世帯がオンラインショッピングを活用したと推定している。これは10年前と比較すると倍以上の利用率であり、オンラインショッピングは今日の人々の生活にとって不可欠な存在と位置付けている。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM: Center for Global Communications)が実施した、「Eコマースの普及が企業と消費者にもたらす経済的影響」調査では、Eコマースは企業、とりわけ中小企業の成長を促進し、オンラインショッピングによって消費者は文化的豊かさと生活満足度が向上することが判明した。
企業に焦点を当てた調査では、Eコマースは多くの企業の売上成長率を引き上げる効果があるほか、従業員は継続的にデジタルスキルを習得し、結果として生産性が向上することが明らかになった。まず売上については、過去1年から9年前のいずれかのタイミングでEコマースを開始した企業では、開始前と開始後の売上を比較すると、平均して売上伸び率は年に1.6%上昇することが判明。小売業(EC実施の有無にかかわらず)の2015年~2023年の売上増加率の中央値は-0.08%(※2)である点と比較すると、Eコマースの成長率が顕著としている。企業規模で見ると、Eコマースを始めた従業員100人未満の中小企業の年間の平均売上増加率の上昇幅は2%で、大企業の上昇幅1.4%よりも高いとの結果になり、中小企業の方がEコマースによる恩恵が大きい結果と指摘している。
調査結果は、Eコマースの導入が例えば販売データの管理・分析、デジタルマーケティングなど従業員のデジタルスキルや知識の開発に効果的な手段である点も示している。過去3年以内にEコマースを開始した企業の従業員は、平均して2つの新しいデジタルスキルを習得し、その後もEコマースの実務を通してスキルを取得し続けている。
一方、Eコマースを開始していない企業の従業員は、デジタルスキルの習得はほぼゼロだった。さらに、Eコマースの開始後、企業の売上増加率は年に1.6%底上げされる一方で、平均労働時間が月1.3時間減少していることから、Eコマースが生産性の向上につながる点も明らかになったと指摘している。
中小企業は地域社会の中核で日本経済の柱であり、アマゾンを通じて全国で約13万社以上の販売事業者が商品を販売しているが、その多くは中小企業である。2023年に日本の販売事業者はアマゾンで数億点の商品を販売し、その販売個数は前年比で10%以上増加したと指摘している。
このほか、消費者調査では過去1年間にオンラインショッピングを始めた人を対象に実施し、その結果オンラインショッピングの最大のメリットは利便性である点が判明した。回答者の80%以上がいつでもどこでも簡単に買い物ができること、約70%が商品の迅速な配送を利点だと考えている点を報告したほか、回答者全体では主要な商品カテゴリー(書籍、日用品、家電製品、美容・ヘルスケア等)において、オンラインショッピングの方が小売店よりも平均して3~6%強程度安く入手できると回答した。さらに回答者の70%がオンラインショッピングでは「幅広い商品にアクセスできる、バラエティの豊富さ」、また、約半数が上記カテゴリーにおいて「高品質な商品を入手できる」ことをメリットと考えている。文化的な側面からの質問として、普段の生活や地元の商店では見つけることが難しい本や地方の珍しい食材との出会い等を例に挙げ、オンラインショッピングを通じた文化体験について聞いたところ、8割が「文化的豊かさ」を感じるようになったと回答したほか、8割が「暮らしの満足度が上がった」と答えている等、オンラインショッピングが消費者の生活の質の向上に貢献している点が明らかになったと指摘している。
●GLOCOM調査結果によるEコマースの普及が企業にもたらす影響
Eコマースは、中小企業のビジネス成長サイクルを後押し、企業DXに貢献
●GLOCOM調査結果によるオンラインショッピングの普及が消費者にもたらす影響
80%の消費者は、オンラインショッピングで「文化的な豊かさ」と「暮らしの満足度」の向上を実感。利便性、スピード、価格を評価する一方で、高品質な商品へのアクセスへのメリットも享受
●調査概要
調査主体:国際大学グローバル・コミュニケーション・センター (アマゾンジャパンからの委託研究)
調査名:「ECの普及が企業と消費者にもたらす経済的影響」調査の概要
調査期間:2024年8月
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国20歳以上の男女
サンプル数:10万人
※オンライン販売の平均売上増加率に関する質問については、サンプルの内オンライン販売を開始してから1年~9年の企業に勤める人が対象
※1:総務省統計局の「2023年 家計消費状況調査」
https://www.stat.go.jp/data/joukyou/2023ar/gaikyou/pdf/gkall.pdf
※2:Nikkei NEEDS法人企業統計データをもとに算出