三機工業㈱は4月25日、業務効率化と生産性向上のため、生成AIの社内業務への活用を開始すると発表した。

社内向け生成AIサービスを2024年4月より段階的に導入し、2024年度末までに全グループ社員に展開する予定。

活用する生成AIサービスはMicrosoft社のAzure OpenAI Service(※1)を基盤としており、独自のセキュリティ対策を施しているほか、社内書類の技術データ・資料の中から機密情報や個人情報、著作権を侵害する可能性のあるもの等を除き、信頼性の高い情報を選別・抽出し、生成AI用のDB(データベース)を構築している。

導入に際しては同社のクラウド環境「SCLOUD」上での試験運用を通じてノウハウを蓄積してきた。そのノウハウをもとに全グループ社員向けの生成AIサービスを構築するほか、情報セキュリティに関するガイドラインの改訂等、運用体制の整備も行った。

●生成AI活用の目的と用途
従来社内に蓄積された膨大な電子データ等の有効活用や、技術と知識の継承が求められてきた。例えば、設計業務や設備施工に係る資料(設計資料、施工要領書、安全・品質管理資料、建築関連法規、規格、技術資料、製品カタログ等)を理解し、正しく業務に活用するには、多くの経験と知識が不可欠としている。

生成AIを活用することによって、経験年数の浅い現場担当者や、初めて携わる施工内容でも、実施内容や留意点を簡便に生成し確認することが可能。作業の効率化を図るほか、知識不足や経験不足から発生するトラブルを未然に防止することにも役立ち、施工品質の向上にも役立つ。

●構築環境と仕様
社内のノウハウを活用するために、Microsoft社のAzure OpenAI Serviceを用いたRAG(※2)システムを構築し、社内ネットワークからアクセスできるセキュリティ性の高い生成AIの利用環境を実現した。仕様はテキスト生成系AIとしており、DBに蓄積させた社内文書のもと、プロンプト(指示内容)に応じて必要な文書や添付資料を抽出し、適切な回答を生成する。

●今後の展開
三機工業は、生成AIの安全で効率的な社内活用を推進している。今後はマルチモーダルAI(※3)のような新しい生成AIの機能をいち早く「SCLOUD」上で検証し、技術ノウハウの活用や質問回答ツールとして利用するだけでなく「設備の運転データの分析」や、「設計、施工の計画支援」「カーボンニュートラルに向けた省エネルギー性の予測」等、提案型の利用を想定している。

それらのノウハウ蓄積をもとに、社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速し、より効率的かつ革新的な業務環境の構築を目指していくとしている。

RAGシステムイメージ

※1:Azure OpenAI Service: Microsoft社が提供するAIサービスの1つで、OpenAIの技術を基にした セキュリティ性の高いクラウドサービス。

※2:RAG: Retrieval-Augmented Generationの略で、検索を補助とした生成を行うAIシステムの一種。

※3:マルチモーダルAI: 複数の種類のデータ(テキスト、画像、音声等)を理解し、それらを組み合わせて処理できるAI技術。