食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地㈱は9月16日、高齢者を対象に「移動スーパーとくし丸」を展開している同社連結子会の㈱とくし丸で、販売と同時に行う「見守り活動」の取り組みが評価され、消費者庁が実施する「令和4年度 地方消費者行政に関する先進的モデル事業」に参画することになったと発表した。

昨今、高齢者・障がい者の消費者被害が社会課題となっており、消費生活相談件数の推移をみると、1980年代半ばに年間10万件程度だったが、現在では年間約90~100万件程度に増大し、高止まりの状況が続いている。高齢者のいる家に電話をして商品を契約させる「電話勧誘販売」や、業者が家に来て商品やサービスを契約させる「訪問販売」のトラブルに巻き込まれ、被害にあうケースが後を絶たない状況にあるとしている。

高齢者(65歳以上)に関する相談は全体の約35%を占め、65歳以上の高齢者に関する消費生活相談件数は2018年は約35.6万件と、ここ10年間で最多となっているほか、実際に支払った平均金額は65歳以上では約90万円に上り、65歳未満の約3倍に達している。

このような状況を受け、同事業を受託した㈱船井総合研究所と共に、東京都新宿区と鹿児島県奄美市の「移動スーパーとくし丸」では、販売員が顧客に対し消費者トラブルに関するヒアリング調査を行い、注意喚起等の啓発を実施する運びとなった。消費者の安全・安心な消費生活の実現に向けて連携をとりながら同事業を進めていくほか、同事業に取り組む中で有益な調査結果が得られていることから、さらに調査エリアの拡大を推し進めることと並行して、各省庁や自治体との官民連携をより一層推進していきたい、としている。

移動スーパーとくし丸車両
移動スーパーの利用イメージ

●実施概要
実施スケジュール:2022年5月~2023年2月
実施エリア/台数:東京都新宿区 丸正総本店/2台
         鹿児島県奄美市 グリーンストア/2台

実施内容:
<事前研修の受講>
・同事業の実施にあたり、販売員は消費者問題の専門家から「昨今の消費者問題の動向」「典型的な消費者問題の事例」等を座学で学び、消費者トラブルの発見につなげるための知識・ノウハウを習得するほか、「実際の見守り活動においての進め方・注意点」の具体的な方法についてもレクチャーを受けている。

<ヒアリング調査>
・顧客が買い物の際に「過去・現在の詐欺被害や消費者トラブルがなかったか?」「電話や訪問による怪しい人物からのコンタクトがなかったか?」を対面で販売員がヒアリング

<集約・情報提供>
・悪質商法に関わる最新事例等について、とくし丸本部より自治体へ情報を共有

結果事例(一部抜粋):オレオレ詐欺、キャッシュカード詐欺、リフォーム詐欺、投資詐欺、還付金詐欺、訪問買取等、多くの事例が報告された。

<80代女性 キャッシュカード詐欺>
電話で「還付金があるので、口座カードと携帯を持ってきて」と言われた。「携帯を持っていない」というと電話を切られた。

<70代女性 訪問買取>
「不要な洋服を買う」と訪問してきた人物がいて、家の中の不要なものを売り渡そうとしたところ、興味を示さず貴金属類を売るよう要求された。結局、指輪を1つ売り渡す。他の物は「お金にならないから」と買取してくれなかった。同時期に周辺宅も訪問していた様子。その他、電話での貴金属買取の連絡も経験。

<90代男性 投資詐欺>
高齢の1人暮らしの男性の元に「老人ホーム施設を建てる投資話」の電話があり、信用してしまった。県外に住む子供達の話にも耳を貸さず、現金を準備。娘達が弁護士や警察へ相談したことで事なきを得た。本人は犯人が逮捕されるまで詐欺だとは全く疑っていなかった。

●地方消費者行政に関する先進的モデル事業とは
「令和4年度 地方消費者行政に関する先進的モデル事業」とは、消費者庁が民間事業者との連携のなかで進める事業であり、今回はその中の1つ、「高齢者、障がい者等を見守るネットワークの構築及び地域活性化の実証」に当たる。同事業では、地方消費者行政の政策効果最大化を目指し、広域連携や官民連携等の行政手法を活用しつつ、地域関係者が一体となって取り組む体制の整備を目指す。

●地方消費者行政に関する先進的モデル事業 概要
事業委託元:消費者庁
事業委託先:㈱船井総合研究所
事業再委託先:㈱とくし丸
事業期間:2022年5月~2023年2月
URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/advancedmodel/index.html
事業概要:地方消費者行政における政策効果の最大化を目指し、広域連携や官民連携等の新たな行政手法を活用しつつ、地域の関係者が一体となって取り組む体制の整備が必要である。国が公募した民間事業者・団体等をプラットフォームとして、新たな手法により、地方消費者行政のさらなる充実・強化に向けた取り組みを実現する先進的モデル事業を実施。高齢者、障害者等を見守るネットワークの構築および地域活性化の実証をテーマとして、同事業を実施。