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ヤマト、次期中計「One ヤマト 2023」を策定

2021/01/29

ヤマトホールディングス(株)は1月29日、2022年3月期~2024年3月期のヤマトグループ中期経営計画「One ヤマト 2023」を策定したと発表した。

「One ヤマト 2023」とは、2021年4月1日よりスタートする新しいヤマト運輸(株)を中核とするワンヤマト体制のもと、生活様式の変化と、それに伴う流通構造の変化に対応するサプライチェーンの変革に向け、個人、法人、地域の顧客、社会のニーズに総合的な価値提供を目指す同グループの中期経営計画を指す。2024年3月期の数値目標は、営業収益2兆円、営業利益1,200億円(営業利益率6%)、ROE10%以上とする。

同グループは2020年1月に発表した中長期の経営グランドデザイン「YAMATO NEXT100」で、経営課題と構造改革プランを明示している通り、データ分析による需要予測の精緻化と、予測に基づく人員・車両の最適配置、「全産業のEC化」に応えるオープンな新配送ネットワークの構築、新たなビジネスニーズに対応する経営資源の柔軟な相互活用に加え、デジタルデータで顧客ニーズにリアルタイムに応える新サービス「EAZY」の早期導入を通じ、予期せず訪れたコロナ禍による生活様式、ビジネスの急速な変化と、加速度的な荷物の急増に対応した。

「One ヤマト 2023」では、これらの成果を確固たるものにし、新時代に求められるサプライチェーンの変革に向けたトータルな価値提供で、個人、地域顧客の利便性の向上はもちろん、法人顧客の経営を支援するパートナーとなるため、以下の9つの重点施策に取り組む。

●「One ヤマト 2023」9つの重点施策
〇データ分析に基づく経営資源の最適配置
データ基盤整備とアルゴリズム開発の高度化で、各地域の需要と業務量予測の精度を向上し、個人、法人ともに変化、多様化する顧客のニーズに応えるグループ経営資源の最適配置を進める。幹線を含む輸送工程の最適化と標準化に加え、各拠点の人員 ・車両の適正配置、作業のオペレーション改革や自動化 ・デジタル化で、第一線が顧客に向き合う時間と接点、および集配対応力を拡大し、ネットワーク全体の生産性を向上させる。

グループインフラの強靭化
(1)拠点の再配置と機能拡充による価値提供の強化と、生産性の向上
営業倉庫約110拠点、ベース(仕分けターミナル)77拠点、宅急便センター約3,700拠点など、グループ各社が全国に保有する拠点をネットワーク上に再配置し、さらに各拠点の機能を統合、増強する。集配の作業集約による拠点間輸送の削減と各拠点の自動化に加え、フルフィルメント機能を有する新たな拠点の配置などで、ネットワーク上の仕分け能力を最大約1.5倍(2021年3月期比)に向上させる。

(2)輸送機能の最適化、多機能化と、オープンな配送ネットワークの拡充
グループ各社が保有する幹線・ミドルマイル・ラストマイルの輸送機能をネットワーク上に再配置し、輸配送工程のさらなる全体最適化を図る。また、小~中ロットの多頻度集配に対応する域内ネットワークと独自の TMS(Transport Management System)の開発で、地域ごとの多様なニーズに応える輸送機能を拡充する。ECを中心に多様な顧客ニーズに対応する「EAZY CREW」など、パートナーとの連携をさらに拡大するため、集配支援ツールの高機能化、ドライバー向けポータルサイトの構築、リース車両の提供に加え、安全研修や福利厚生の充実など、パートナーへのサポート体制を拡充する。

(3)業務プロセス改革(BPR)の推進
第一線が顧客にしっかり向き合う時間と接点を創出するため、プロフェッショナルサービス機能本部を中心に、管理・間接業務を標準化、電子化、集約化する。さらに共同調達 ・購買にグループ全体で取り組むことで、第一線の管理 ・間接業務を約4割(2021年3月期比)削減する。

サプライチェーンをトータルに支援する、ビジネスパートナーへの進化
(1)上流から下流まで、サプライチェーン全体にわたる価値提供の強化
全国の営業倉庫 ・拠点 ・幹線 ・ミドルマイル・ラストマイル、および新たな域内輸送機能のシームレスな結合と、デジタル情報による可視化を通じて、サプライヤー・メーカーから店舗・生活者にいたるサプライチェーンをトータルに支援するビジネスパートナーを目指す。消費地に近い拠点に商材を一括輸送し、域内の需要に応じた小~中ロットの店舗納品にスピーディーに対応することで、欠品による店舗の販売機会ロス削減や総在庫の偏在を抑制するなど、法人顧客の売上の最大化と、サプライチェーンのスリム化、キャッシュフローの改善に貢献する。クロスボーダー領域では、輸出入するEC等の小口貨物、一般貨物の発注情報、出荷 ・到着予定情報、通関関連情報など、グローバルサプライチェーン上のすべての情報をデジダル化、可視化し、国内 ・海外のネットワークをスムーズに結節するとともに、フルフィルメント機能の活用による在庫の最小化やリードタイムの最適化など、高度なソリューションを提供する。

(2)顧客に向き合う法人部門の一体運営
第一線からの顧客ニーズをスピーディーに収集、集約し、質の高い提案に結びつけるため、「法人ソリューション・コントロールセンター」を新設する。情報集約からデータ分析、課題抽出に加え、各機能本部が開発するソリューション、サービス、マーケティングを一元的にマネジメントすることで、第一線の営業担当者の提案活動を支援し、法人顧客に常に最適な提案を実現する体制を構築する。

「ECエコシステム」の最適解の創出
加速する 「全産業のEC化」に向け、事業者、運び手、生活者が共にメリットを享受できる持続的な「ECエコシステム」の確立に向けた取り組みをさらに強化する。事業者には、在庫 ・事務コストを最小化するサプライチェーンの上流における価値提供に加え、ライブコマース等の新たな販売チャネルの創出や、実店舗のEC化支援など、サポート体制を充実させる。運び手には、EAZY CREWのネットワークをさらに拡充するとともに、デジタルを活用した集配ツールの充実など、「運ぶ」を効率化する支援を強化する。買い手となる生活者には、EAZYのリアルタイムトラッキングやダイナミックプライシングの導入、スマホで受け取れる店舗の拡大など、デジタルを活用した新たな顧客体験を提案していく。さらに4,500万人を超えるクロネコメンバーズ会員をはじめとする顧客と、生産者、店舗、あるいは130万社を超えるヤマトビジネスメンバーズ会員をつなぐ仕組みの検討等を通じ、「新たな“運ぶ”」を創り、顧客との一層のエンゲージメント強化を進める。

資本効率の向上
事業成長とコスト構造の改革を進め、財務戦略との両輪でより資本効率を重視する経営に取り組む。成長性 (営業収益)と収益性 (営業利益率)および、財務の健全性(キャッシュ創出状況、保有現預金、自己資本比率の水準)、投資の進捗状況、資本効率等を踏まえ、安定的な配当 (株主資本配当率を意識)を基本とした適時適切な資本政策により、株主価値向上を実現する。具体的には、ROE10%以上(2024年3月期)、配当性向30%以上、総還元性向50%以上(2021年3月期~2024年3月期までの累計)を目指す。

「運創業」を支える人事戦略の推進
第一線の社員一人ひとりの役割を明確化し、評価できる制度、事業本部、機能本部でグループをリードする専門人材が育成され、高いパフォーマンスを発揮できる制度へと、人事制度を刷新する。また、社員が学び、成長するための教育専門組織 「クロネコアカデミー」を新設し、組織力の向上を図る。さらにデジタル教育プログラムを充実し、経営層を含む全社員のデジタルリテラシーの底上げと、デジタル人材の早期育成を図る。

経営体制の刷新とガバナンスの強化
2021年4月1日、ヤマト運輸とグループ会社7社を統合し、2部門(リテール部門・法人部門)を構成する4つの事業本部(リテール事業、法人事業、グローバルSCM事業、EC事業)と、4つの機能本部 (輸送機能、デジタル機能、プラットフォーム機能、プロフェッショナルサービス機能)、およびコーポレートからなる経営体制に移行する。純粋持株会社は存続するものの、統合後のヤマト運輸を中核会社とし、意思決定のスピードを重視したガバナンスを構築する。

データ戦略、イノベーション戦略の推進
基幹システムの刷新に加え、データ活用のさらなる高度化に向け、引き続きデジタルデータの整備と、デジタル基盤の強化を進める。最新テクノロジーを活用したデータ取得の仕組みや、クラウド技術を中心とした 「Yamato Digital Platform」の拡充を通じ、9つの重点施策をデジタル面から支える。また、2020年4月に創設した「KURONEKO Innovation Fund」をはじめ、スタートアップの発掘と連携、新規事業創出に向けたスタートアップへの投資など、オープンイノベーションをさらに強力に推進する。

サステナブル経営の強化
「YAMATO NEXT 100」で掲げたビジョンの実現と注力すべき社会課題の解決に向け、環境と社会を組み込んだ経営を実行するため、マテリアリティ (重要課題)ごとに2024年3月期の中期目標を策定した。各施策を事業活動の中で遂行することにより、社会と事業の持続可能な発展を目指す。

※上記の環境・社会に関するマテリアリティごとの主要な中期目標はニュースリリース「ヤマトグループ サステナブル中期計画 2023 【環境 ・社会】を策定」参照
https://www.yamato-hd.co.jp/news/2020/2021012903.html

●「One ヤマト 2023」主要数値目標
(1)収支計画
[項目/2021年3月期予想値/2024年3月期計画値/増減額/伸率(%)
▽営業収益/1兆6,800億円/2兆円/+3,200億円/+19.0%
▽営業利益/820億円/1,200億円/+380億円/+46.3%
▽営業利益率/4.9%/6%/+1.1%/―
▽連結経常利益/820億円/1,200億円/+380億円/+46.3%
▽当期純利益/430億円/720億円/+290億円/+67.4%
▽ROE/7.8%/10%/+2.2%/―

(2)投資計画
9つの重点施策を着実に実行するため、事業継続に必要な車両、施設、機器等のメンテナンス等の経常投資2,000億円に、基幹システムの刷新、データ整備・基盤強化、EAZY機能拡張等のデジタル投資に1,000億円、物流オペレーションの自動化、拠点設置等の建物に500億円、荷役機器等に500億円の計2,000億円の成長投資を加え、3年間で合計4,000億円の投資を実施する。

●組織図

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