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ヤマト、「YAMATO NEXT100」策定

2020/01/24

ヤマトホールディングス(株)は1月23日、経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を策定した。

「YAMATO NEXT100」は現中期経営計画「KAIKAKU2019 for NEXT100」の成果と課題、外的環境の変化を踏まえ、今後のヤマトグループにおける中長期の経営のグランドデザインとして策定したもの。

宅急便のデジタルトランスフォーメーション(DX)、ECエコシステムの確立、法人向け物流事業の強化に向けた3つの事業構造改革と、グループ経営体制の刷新、データ・ドリブン経営への転換、サステナビリティの取り組み、の3つの基盤構造改革からなる「YAMATO NEXT100」を着実に遂行し、持続的な成長を目指す。

中長期的(2024年3月期)に営業収益2兆円、営業利益1,200億円以上、ROE10%以上をターゲットとし、2021年3月期は経営体制の移行期間と位置づけ、主要経営指標等を含む詳細な中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)を2021年1月に改めて発表する予定。

●「YAMATO NEXT 100」の基本戦略
(1)「お客さま、社会のニーズに正面から向き合う経営へ転換する」
機能単位の組織を、リテール・地域法人・グローバル法人・ECの4つの顧客セグメント単位(事業本部)に再編し、経営と事業の距離を縮め、「お客さまの立場で考え、スピーディーに応える」ヤマトを取り戻す。

(2)「データに基づいた経営へ転換する」
DXによる物流オペレーションの効率化、標準化に加え、データ分析に基づく業務量予測、経営資源の適正配置、プライシングを上位レイヤーで迅速に意思決定するデータ・ドリブン経営へ転換し、第一線が顧客にしっかりと向き合える「全員経営」を復活する。

(3)「共創により、物流のエコシステムを創出する経営へ転換する」
自前主義にこだわらず、顧客、物流事業者をはじめとする様々なステークホルダーとオープンな物流インフラを共創し、共に成長する企業へ進化する。

●3つの事業構造改革
(1)「宅急便」のデジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタル化とロボティクスの導入で、「宅急便」を同社の安定的な収益基盤にするとともに、セールスドライバー(SD)が顧客との接点により多くの時間を費やせる環境を構築し、顧客との関係を強化する。

徹底したデータ分析とAIの活用で、需要と業務量予測の精度を向上し、予測に基づく人員配置・配車・配送ルートの改善など、輸配送工程とオペレーション全体の最適化、標準化によって、集配の生産性を向上する。

さらに、従来の仕分けプロセスを革新する独自のソーティング・システムの導入で、ネットワーク全体の仕分け生産性を4割向上させるなど、取り扱い個数の増減だけに影響されない、安定的な収益構造に改める。

(2)ECエコシステムの確立
新設するEC事業本部は、今後も進展が予想される「産業のEC化」に特化した物流サービスの創出に取り組む。

まず今年4月より、EC事業者、物流事業者と協業し、一部の地域でEC向け新配送サービスを開始する。外部の配送リソースとヤマトの拠点やデジタル基盤を融合し、まとめ配達や配達距離の短縮化、オープンロッカーや取扱店受け取り、安心な指定場所配達などを通じてEC事業者、購入者、運び手のそれぞれのニーズに応える、EC向けラストマイルサービスの最適解を導き出し、全国への展開を目指す。

また、あらゆる商取引のEC化に対応する統合受発注、輸配送、在庫管理、決済、返品などを一括管理できるオープンなデジタル・プラットフォームを構築し、2021年4月からの提供を目指す。EC事業者のサプライチェーンのスリム化や、輸配送のオープン化を通じて、社会のニーズに応えるECエコシステムを確立する。

(3)法人向け物流事業の強化
グループに点在する専門人材、流通機能やソーティング・システム等の物流機能、物流拠点を結ぶ幹線ネットワークなど、法人向けの経営資源を結集し、顧客の立場に立ったアカウントマネジメントを推進する。

そのためのデータ基盤として「Yamato Digital Platform」(YDP)を構築し、精度の高いリアルタイムの情報を軸とした法人向け物流ソリューションの提案力を強化し、製造業や流通業など、販売物流や静脈物流に課題を持つ法人企業の生産・調達から納品・検品、請求・支払に至るサプライチェーン全体を最適化するソリューションの開発に注力する。ヤマトグループはすでにヘルスケア業界や農産品流通でこうしたソリューションを提供しているが、さらに強みである多頻度小口配送とデータ基盤を統合し、各業界、業種に幅広く提供することで新たな成長を目指す。

●3つの基盤構造改革
(1)グループ経営体制の刷新
現在の機能単位の部分最適を、顧客セグメント単位の全体最適な組織に変革し、経営のスピードをより速めるため、2021年4月に現在純粋持株会社である同社が、グループ会社8社を吸収合併および吸収分割することにより、リテール・地域法人・グローバル法人・EC の4事業本部と、4つの機能本部からなる事業会社に移行する。

輸送・プラットフォーム・ITの各機能本部は、ネットワーク・拠点・車両を含めた輸配送工程の全体最適化、YDP・クロネコメンバーズ等のプラットフォームの進化、ITの強化とIT人材の開発など、事業本部の競争優位の源泉となる各機能の開発と運営を担う。また、プロフェッショナルサービス機能本部は、再編で重複する業務の統廃合を受け、管理間接業務や調達業務を集約するほか、徹底した業務の標準化、効率化を進める。

事業会社へ移行後も、経営の監督と執行の分離を明確にすることで、経営の透明性、健全性のためのガバナンスを引き続き強化し、企業価値、株主価値の更なる向上に努める。執行については、事業会社体制で経営と現場の距離を縮め、意思決定の迅速化を図るとともに、権限・責任の範囲を明確化する。以上を通じ、現場を管理・事務業務から解放し、顧客とのリアルな接点の強化に専念できるヤマト本来の全員経営を復活させる。

(2)データ・ドリブン経営への転換
今後4年間で約1,000億円をデジタル分野に投資するほか、社内外のデジタル・IT人材を結集し、2021年4月には300人規模の新デジタル組織を立ち上げる。新組織立ち上げに向け、2021年3月期は下記の5つのアクションを実行する。

・データ・ドリブン経営による予測に基づいた意思決定と施策の実施
・アカウントマネジメントの強化に向けた法人顧客データの統合
・流動のリアルタイム把握によるサービスレベルの向上
・稼働の見える化、原価の見える化によるリソース配置の最適化、高度化
・最先端のテクノロジーを取り入れたYDPの構築、および基幹システム刷新への着手

加えて、シリコンバレーの拠点を基点に、スタートアップ企業や大手テクノロジー企業とのネットワークを拡大するほか、当初50億円規模のCVCファンドを設立する準備をすでに進めており、オープンイノベーションを加速させる。

(3)サステナビリティの取り組み~環境と社会を組み込んだ経営~
ヤマトグループは、持続可能な未来を切り拓く将来の姿として「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」、「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」の2つのビジョンを掲げ、人や資源、情報を高度につなぎ、輸送をより効率化させることで、環境や生活、経済によりよい物流の実現を目指す。

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