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自動運航船の国際ルール策定に向けた議論が進展

2021/05/18

国土交通省は5月18日、5月5日~5月14日にオンライン会議形式で開催された国際海事機関(IMO)海上安全委員会第103回会合(MSC 103)で、自動運航船の国際ルールの策定に向けた議論が進展したと発表した。

進展のポイントは、海事関連条約等のうち、新たに改正や解釈の整理が必要となるものが特定されたほか、今後優先して検討を進めるべき事項も整理された。これにより今後自動運航船の国際ルール作りが一層加速することが期待される。
   
また、日本等からの提案を受け、航行安全に寄与する機器である「VHFデータ交換システム(VDES)」を海上人命安全条約(SOLAS条約)上の航海機器として位置付けるための審議を開始することが合意された。

●自動運航船の国際ルール策定に向けた論点整理
IMOでは、自動運航船の国際ルールの策定に向け、2018年より自動運航船が既存規制体系に及ぼす影響を分析するための論点整理のための検討を、日本、米国、フランス、オランダ、インド、ノルウェー、フィンランド、トルコ、中国等の有志国が分担して進めており、この検討において、日本は海上人命安全条約(SOLAS条約)の多くの章(構造、貨物及び燃料油の運送等)等の分析結果のとりまとめ等、全体41規程のうち約半数(19規程)を担当するなど、国際的に主導的な役割を担ってきた。

今回の会合では、その検討が完了し、海事関連条約等の一部については自動化レベルに応じ条約改正や解釈の整理が必要との結論になった。その中で、早期導入が期待される「船員の意思決定をサポートする自動化システムを搭載する自動運航船」についてはSOLAS条約第IV(無線通信)、V(航海の安全)及びXI-2(海上保安)章に自動化システムの定義を置く必要があるとされた以外は、ほとんど条約改正や解釈が不要との結論になった。また、今後の基準作成に向けた作業計画策定、自動運航システムの適用等に関するガイドライン策定等が今後の優先検討事項として合意された。
 
<今後の優先検討事項>
○自動運航船の関係基準作成に係る作業計画策定
○自動運航船の定義と自動化レベルの見直し
○自動運航に関する用語の定義の策定
○自動運航船固有の優先課題への対応
 (例.自動運航船における「船長」、「遠隔支援センター」等の基準上の位置付け等)
○自動運航システムの適用等に関するガイドライン策定

●VHFデータ交換システム(VDES)導入に係る審議開始
VDESは日本が世界市場で高いシェアを持つ「船舶自動識別装置(Automatic Identification System(AIS))(※1)」の上位互換となる航海機器として民間で開発が進められているもの。その特徴は、AISの機能に加え、より高いデータ通信能力(速度、容量)(※2)を有することであり、将来的には海上安全に係る画像情報等の送受信も可能となり、船舶の安全向上が期待できる。

今回の会合では、VDESをSOLAS条約上の航海機器と位置付け、AISの代替機器として、VDES搭載の選択を可能とするための条約改正に向けた検討に着手すべきとの日本等による提案が多くの国の賛同を得て承認された。今後、2024年以降の早期発効を目指し、条約改正及び性能基準策定について、2022年に開催予定の航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NCSR)より検討を開始することが合意された。

※1:船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報を自動的にVHF帯電波で送受信し、船舶局相互間及び船舶局と陸上局の航行援助施設等との間で情報交換を行うシステム
※2:通信速度は9,600bpsから307.2kbps(最大)に高速化、通信容量は4チャンネルから18チャンネルに拡大

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