YKK AP㈱は11月5日、㈱Hacobuが提供するトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を全国の製造・物流30拠点全てに導入したと発表した。同社は「MOVO Berth」を通じて取得できるデータを活用し、荷待ち時間の削減をはじめとするデータ駆動型の物流改善を加速させ、さらなる物流の効率化に取り組む。

「MOVO Berth」
タブレット画面で操作
トラックバースの作業

物流領域では、人手不足や長時間労働等、様々な課題に直面している。さらに、トラックドライバーの時間外労働の上限規制により、輸送能力不足を引き起こす、物流「2024年問題」が顕在化している。同問題に対応するため、政府は2024年5月に改正物流関連2法を公布し、一定規模以上の事業者に物流効率化を義務付けた。

YKK APが扱う窓やドア、エクステリア等の商品は、形態やサイズ、重量が多岐にわたるため、物流オペレーションの効率化は難易度が高く課題も多くある。同社では、2016年度から配送効率を高める新型輸送パレットの開発に着手。2019年度からは国土交通省が推進する「ホワイト物流」運動に賛同し、荷物をパレット単位で効率的に運ぶユニットロード化の推進、トラックの荷台に効率良くパレットを積むための独自システムの開発、「首都圏DC」の新設等、様々な物流改革に取り組んできた。しかし、法的要請に応え、さらなる効率化を図るため、データ駆動型の物流改善が不可欠となっていたとしている。

●MOVO Berth活用のポイント
①迅速かつ効果的な全拠点導入の実施
2023年11月から導入検討を始め、2024年1月に2拠点への試験導入でスムーズな運用を確認、その後、2024年2月から全国への導入を開始し、2024年9月に全30拠点への導入を完了。Hacobuのカスタマーサクセスチーム伴走のもと、同社の本社主導で推進したことにより、全国にある全製造・物流拠点への導入をわずか 7か月で完了することができた。今回の全社規模の導入により、各拠点での業務フローが統一され、導入初期から効率化を実現。さらに、協力パートナーへの予約運用が徹底されており、2024年9月時点で月間の予約数は2万を超え、予約率は96%を記録していると報告した。

②荷待ち時間と荷役時間の削減
長時間の荷待ち・荷役時間はトラックドライバーにとって大きな負担となっていたが、「MOVO Berth」の導入により、それらの時間を削減することが可能になった。先行導入した東北製造所では、1台あたりの平均荷待ち時間(出荷のみ)が、導入時点と比較して43%短縮されている。また、荷待ち・荷役時間の管理業務は手作業で行われていたが、データ化により月間43.4時間の業務削減を実現した。1人当たりの業務時間(月間160時間)で推定すると、業務時間の27.1%を削減したことになる。

●今後の展望
「MOVO Berth」で蓄積されたデータを活用し、時間帯別の入出荷量分析による人員配置の最適化や、車両滞在時間データを用いた構内レイアウトの改善等、データ駆動型の物流効率化に取り組む。

また、Hacobuが2024年8月に立ち上げた「物流ビッグデータラボ」に参画し、蓄積された物流ビッグデータを企業間で共有・分析することで、異業種間での共同輸配送の検討も進める。

●YKK AP 執行役員 CLO(兼)ロジスティクス部長の岩﨑稔氏のコメント
YKK APは、新型輸送パレットの開発や、首都圏エリアの供給体制強化等、物流体制の強化に2016年頃より取り組んでまいりました。しかしながら、出荷順序をうまくコントロールできずにトラックドライバーの待ち時間を発生させることが散見されていました。今回の「MOVO Berth」導入により、弊社の物流がさらに効率的に流動し、かつデータに基づく運営に進化することで他業種との共同化という新たな領域に発展していくことを期待しています。データをもとに、サプライチェーン全体の最適化を考えてまいります。

●Hacobu 代表取締役社長CEOの佐々木太郎氏のコメント
YKK AP様が「MOVO Berth」の導入後、迅速に素晴らしい成果を上げられていることを、非常に喜ばしく思っております。特に本社と各拠点が連携し、物流改革を進められている姿勢にも胸を打たれています。Hacobu は今後も、YKK AP様の物流改革の更なる実現をサポートし、持続可能な物流インフラの実現に貢献できるよう努めてまいります。